橋下市長の「改革者イメージ=虚像」をいかに崩すか、目に見える大規模な街頭宣伝・街頭行動が必要だ、3月調査(共同通信)と2月調査(朝日)を比較して(3)、橋下維新の策略と手法を考える(その11)

住民投票が実施される5月17日まであと僅かしか時間は残されていない。橋下市長は「ふわっ」とした民意をつかむことに長けたポピュリストだ。橋下氏の弁舌巧みな街頭演説を聞いていると、多くの聴衆が大阪都構想を「なんとなく」いいもののように思ってしまうのがよくわかる。橋下氏は、内容の是非ではなく聴衆の心理的な共感を掬い取ることで、「ふわっ」とした民意を捉えているのである。

このことは朝日調査でも共同調査でもはっきりと数字が出ている。つまり大多数の市民は、「法定協議会の議論が十分でない」(朝日66%、共同69%)、「橋下市長の説明が十分でない」(朝日66%、共同70%)と思っているのである。それでいながら橋下市長を支持し、大阪都構想に賛成する市民が結構沢山いるのだから、今度の住民投票は都構想の「是非」だけではなく、橋下氏の「好き嫌い」で決まる可能性があることを見ておく必要がある。

橋下陣営の基本戦略は、訳の分からない大阪都構想を「分からないまま」にして住民投票に持ち込むこと、都構想の是非を問う住民投票を橋下市長への信任投票にすり替えることの2つである。そして世論調査結果を見る限り、この橋下陣営の基本戦略は少なくとも現時点では功を奏していると見なければならない。2月調査から3月調査にかけて橋下市長の支持率が43%から52%へ上がり、同じく維新支持率も12%から26%へ倍増していることがそのことを証明している。いわば橋下市長への「好き嫌い」で都構想の住民投票が決まる状況(空気)が出来てきているのである。

この状況を打破するには、橋下陣営の基本戦略を真正面から叩く他はない。第1が大阪都構想を「分かる話」にして市民に丁寧に説明すること、第2が橋下市長の「改革者イメージ」を打ち砕くことだ。といっても、大阪市内の全有権者215万人を一斉に対象にすることは容易ではないので、働きかける対象を絞る方が効果的だ。

私は大きく言って、都構想に対する大阪市民の態度は3つのグループに分かれていると考えている。第1グループは、「橋下支持・維新支持・都構想賛成」の「3点セット支持層=橋下フアン」だ。橋下フアンに対しては議論をしても無駄だとは言わないが、話は通じにくいし、説得には時間が掛かる。そんなことよりもこのグループには「目に見える」働きかけの方が効果的で、それには大規模な街頭宣伝・街頭行動(デモ)が有効だと思う。大阪のメインストリートの御堂筋はもとより24行政区の中心部で「目に見える」街頭行動を組織し、それもできるだけド派手な宣伝活動で「街の空気」を変えるのである。

第2グループは、一応橋下支持ではあるものの維新支持までには至らず、都構想にも懐疑的な「中間グループ」だ。このグループは政治的には無党派層に属する人が多いが、都構想の胡散臭さを感じ取れるだけのインテリジェンスを持っているので「話せば分かる」人たちだと言ってよい。また「投票に行く気はない」人が多いので、的確な資料で丁寧な説明をすればそれなりに効果が上がると思う。各戸へのビラ・パンフ配布も読んでくれる可能性が高いので、案外有効なのではないか。

第3グループは、橋下フアンとは対極的な位置にある「橋下不支持・維新不支持・都構想反対」の反橋下グループだ。このグループはこれまでの傾向とは異なり、特定政党や政治信条にもとづく集団というよりは、党派を超えた「大阪の良識」を代表する人たちで構成されている。橋下市長を支持しない理由として「改革の姿勢や手法」38%、「人柄や言動」42%を挙げ(朝日)、「進め方が独善的」67%、「人柄や言動に問題」18%を挙げる(共同)人たちである。

このことは支持政党別でみても、朝日・共同調査とも維新支持層以外は大阪都構想への反対が賛成を上回っており、党派を超えた世論であることが分かる。
【朝日調査】
自民支持層、賛成35%、反対48%、その他・答えない17%
公明支持層、賛成21%、反対65%、その他・答えない14%
無党派層、賛成27%、反対46%、その他・答えない27%
共同通信調査】
自民支持層、賛成39%、反対47%、その他・答えない14%
公明支持層、賛成18%、反対69%、その他・答えない13%
民主支持層、賛成16%、反対74%、その他・答えない10%
共産支持層、賛成16%、反対69%、その他・答えない15%
無党派層、賛成28%、反対47%、その他・答えない24%

この結果から言えることは、(1)都構想協定書が大阪市議会で可決された前後でも支持政党別の都構想の賛否の割合はほとんど変わっていない、(2)「分からない・答えない」の割合が小さく、賛否の意向がはっきりしている、(3)住民投票の容認に転じた公明党の支持者においても都構想反対の意向が強い、(4)従来、橋下支持の傾向が強かった無党派層においても都構想反対が多数を占めている、(5)自民支持層では賛否が拮抗状態に近いが、一応反対が賛成を上回っている、といったことである。この「反橋下グループ」は都構想に対する態度が明確なので、どれだけ投票に行ってもらえるかが鍵になる。(つづく)