2015年4月統一地方選(大阪)で自民・公明の選挙協力はどうなる、2013年参院選、2014年衆院選結果から自公協力の可能性(効果)を分析する、橋下維新の策略と手法を考える(その13)

 2015年統一地方選がいよいよ始まった。大阪では全国注目の府議選、大阪市議選が4月3日告示、12日投開票でスタートする。すでに街頭は選挙一色となり、宣伝カーが市内を隈なく走り回っている。今回の大阪府議選・市議選が注目されるのは、いうまでもなく、それが5月17日の大阪都構想住民投票に直結しているからだ。なかでも注目されるのは、大阪市議選と大阪市内を選挙区とする府議選の動向だろう。

 前回2011年統一地方選では、維新が大阪市議選(定数86)で第1党の33議席へ躍進し、大阪市内を選挙区とする府議選(定数33)でも20議席を占めるという大勝利を収めた。今回は大阪市内の府議定数が24選挙区33人から21選挙区27人に削減され、しかも1人区が21選挙区中15選挙区を占めるので、1人区での選挙協力が勝敗の大きな決め手となる。もし昨年3月に協定された1人区での自公選挙協力が今も生きているのであれば、府議選はもとより大阪市議選にも大きな影響を与えることになるだろう。そこで2013年参院選および2014年衆院選大阪市内政党別比例得票数、得票率を参考にして、今年の統一地方選の行方を考えてみたい。

 まず2013年7月参院選投票率52.8%、有効投票数110.0万票)の結果は、維新32.0万票(得票率29.1%) 、自民25.5万票(23.2%) 、公明21.2万票(19.2%) 、共産14.2万票(12.9%) 、民主6.9万票(6.3%)、その他10.3万票(9.4%)となり、維新がトップで32万票を確保し、得票率も30%近いシェアを占めた。この勢力分布が2014年12月衆院選で変わったかと言えばそうではなく、依然として維新の勢いは衰えていない。

 2014年衆院選投票率47.8%、有効投票数99.9万票)の結果を見よう。得票数は維新33.1万票(33.2%) 、自民23.1万票(23.1%) 、公明18.3万票(18.4%) 、共産14.0万票(14.1%) 、民主6.5万票(6.6%)、その他4.8万票(4.8%)となり、投票率が下がって自民、公明が得票数を減らす一方、維新が逆に得票数を増やしているのが目に付く。維新は33万票を超える得票数を確保し、得票率も全体の3分の1(33%)に達している。全国的には自民圧勝となり、「1強多弱」の政治構造になったといわれるが、ここ大阪では維新が自民を抑えて根強い勢力を保っているのである。

 この点について過日、大阪市関係者と意見を交換したところ、「橋下氏には30万票の固定票があるので住民投票も油断できない」とのことだった。維新が「ふわっとした民意」に支えられているというよりは、自民、公明を上回る30万以上の「固定票」があるとの評価が定着しているらしい。事実、直近の参院選衆院選の結果がそうなのだから、このことを前提にして考えないと今後の判断を誤ることになる。

 次に、2014年衆院選の政党別比例得票数を大阪市内でみると、以下のような特徴が浮かび上がってくる。
(1)維新の得票数は市内全24選挙区でトップを占める。得票率は最高39.1%(西区)、最低29.2%(西淀川区)、市平均33.2%であるが、24区の内20区では30%を上回っている。これは維新が市内でむらなく得票していることを示すもので、しかも得票率はほとんどの行政区で30%台を超えているのだから、「高水準の固定票」があるとみなければならないだろう。

(2)維新得票数と自民・公明の得票数合計(以下、自公票という)を比較すると、維新票が自公票を上回るのが2区(西区、北区)、維新票が自公票の9割台を占めほぼ拮抗しているのが3区(福島区中央区都島区)、以下8割台が6区(天王寺区城東区浪速区阿倍野区、東成区、淀川区)、7割台が10区(住之江区東住吉区、港区、東淀川区生野区住吉区此花区、旭区、鶴見区西淀川区)6割台が3区(大正区西成区平野区)と続く。市平均を見れば、維新票は自公票の8割に達しており、自公票を合わせてもほぼ互角という状況だ。

(3)維新の大阪市議立候補者数は全24区38人、自民は23区24人、公明19区20人である。公明が候補者を立てない5選挙区(福島区中央区、西区、天王寺区浪速区)はいずれも自民現職がいる定数2人区、自民が候補者を立てない旭区は公明現職がいる定数3人区である。したがって、この6区では自公協力が候補者レベルで成立しているといえるが、それ以外の18区では熾烈な戦いになる。

(4)一方、維新の大阪府議立候補者数は全21区27人、自民は17区17人、公明5区5人である。公明が候補者を立てる5選挙区(東淀川区、西区+大正区淀川区平野区住吉区)はいずれも定数2人区であり、住吉区では自民が立候補していないので、競合するのは4選挙区だけとなる。この結果、大阪市内の府議選選挙区では全21区のうち17区で自公協力が成立することになり、各党支持者(主として公明支持者)が協力政党に(一定程度)投票するとなると、それなりの効果を挙げるかもしれない。

 以上が、維新と自公協力の関係から見た大阪市内の基礎数字であるが、現状は1年前に拙ブログで書いた「自公選挙協力で維新は壊滅する」との予測を大幅に訂正しなければならない状況だ。理由は、直近の国政選挙で維新が侮れない高水準の固定票を獲得していること、街頭演説などの聴衆の反応からして維新に勢いが感じられること、マスメディアの世論調査では橋下市長や維新の支持率が上昇していることなどいろいろある。次回からこの点の検討を深めていきたい。(つづく)