公明党は大阪都構想に「賛成」なのか「反対」なのか、住民投票で再び維新と裏取引を「する」のか「しない」のか、大阪府民・大阪市民は公開質問状を出して公明党の態度を確かめなければならない、大阪府議選・市議選から都構想住民投票へ(1)、橋下維新の策略と手法を考える(その19)

 「大阪都構想」を争点に4月12日投開票された大阪府議選(定数88)、大阪市議選(定数86)では、大阪維新の会府議会42議席(得票率41%)、市議会36議席(得票率37%)を得てそれぞれ第1党を確保した。得票率から見ると、維新は2011年4月統一地方選において府議選の41%、市議選の33%を得票し、2012年12月衆院選では府内比例票の36%、2013年7月参院選では大阪選挙区の29%、2014年12月衆院選では府内比例票の32%を得票している。若干の変動はあるものの維新は基本的に3分の1前後の得票率を維持しているのであり、その集票力には驚くべきものがある。

 維新をめぐる政治情勢に関しては拙ブログにも多くのコメントが寄せられており、コメント氏の間でも意見が様々に分かれていて一様ではないが、今回の統一地方選とりわけ大阪府議選・市議選の情勢分析においては私の予測がかなり甘くなり、維新の影響力を正確に把握できなかったことは反省しなければならない。しかし若干の言い訳をするとすれば、拙ブログは「選挙予想」をすることが目的ではなく、「選挙争点」を分析することに力点があるのであって、もともと私には「選挙予想屋」になる資格も能力もないのである。

だから、拙ブログでは今後とも橋下維新の主張や政治意図あるいはその方策や手法の欺瞞性を暴き、住民自治を基礎にした地方自治の本旨をいかに実現するかという視点から論陣を張っていきたいと思う。また今回の府議選・市議選の分析に関して言えば、選挙結果についてあれこれ解釈するというよりは、この結果を踏まえて次の都構想住民投票に向かっていかに踏み出すかという点に重点を置いて考えていきたいと思う。

 府議選・市議選の結果から都構想住民投票の行方を展望するとき、注目すべきは、政党別得票率が維新37%、自民20%、公明19%、共産15%、民主4%であり、都構想賛成派が37%(維新)、反対派が57%(自民、公明、共産、民主)と大差がついているにもかかわらず、都構想の賛否に関する出口調査では、朝日新聞が賛成48%、反対47%、読売新聞が賛成・反対とも47%と全く互角になっていることだろう。このことは維新支持層のほとんどが都構想賛成派であるのに対して、その他各党得票層の中には平均して10%程度の都構想賛成派が含まれており、その差し引きが「賛成」37%+10%=47%、「反対」57%−10%=47%となってあらわれていることを意味する。

 しかし、政党別得票数には無党派層からの得票も含まれているので、より正確にみようとすれば、支持政党別の都構想賛否割合を知らなければならない。この点で参考になるのが、政党支持率大阪都構想の賛否に関する朝日新聞出口調査(4月12日)である。読売新聞も支持政党別の都構想賛否割合(グラフ)を掲載しているが、政党支持率のデータが欠落しているので分析できない。したがってここでは、朝日新聞出口調査を基にして考えたい。

 まず投票に行った有権者投票率49%)の政党支持率の内訳は、維新35%、自民24%、公明12%、共産10%、民主4%、無党派12%である。これを「ハードな賛成派」(維新支持×うち都構想賛成)、「ソフトな賛成派」(維新以外支持×うち都構想賛成)、「ソフトな反対派」(維新支持×うち都構想反対)、「ハードな反対派」(維新以外支持×うち都構想反対)の4グループに分けると、およそ以下のような割合になる。

(1)ハードな賛成派:維新支持35%×都構想賛成0・92=32・2%
(2)ソフトな賛成派:自民支持24%×都構想賛成0・28=6・7%+公明支持12%×0・21=2・5%+共産支持10%×0・12=1・2%+民主支持4%×0・11=0・4%+無党派12%×0・33=4・0%、計14・8%
(3)ソフトな反対派:維新支持35%×都構想反対0・05=1・8%
(4)ハードな反対派:自民支持24%×都構想反対0・67=16・1%+公明支持12%×0・71=8・5%+共産支持10%×0・82=8・2%+民主支持4%×0・89=3・6%+無党派12%×0・58=7・0%、計43・4%)

 つまり、「ハードな賛成派」32・2%、「ソフトな賛成派」14・8%、「ソフトな反対派」1・8%、「ハードな反対派」43・4%となって、「ソフトな賛成派」の動向が都構想の帰趨を握っていることがわかる。もし「ソフトな賛成派」の半数でも反対派に組み入れることができれば、反対派は過半数を占めて住民投票に勝利できることになる。だが問題は、維新支持以外の政党支持層の中の都構想賛成派を説得することができるかどうかだろう。なかでも公明党支持層が最後まで都構想に反対の態度を貫けるかということが関心(疑心暗鬼)の的になる。

 公明党大阪府本部の佐藤茂樹代表(衆院議員)は13日未明、記者団に「(都構想は)問題が多く、賛成できる内容ではないと言い続けた。その立場は全く変わらない」と強調したが、支持母体の関西創価学会はすでに自主投票を決めている。このため、自民などは「統一選後に公明は住民投票で賛成に転じるのでは」と神経をとがらせているのである(毎日新聞、2015年4月13日)。

 私は率直に言って、公明党の態度には確信が持てない。「二度あることは三度ある」というように、首相官邸創価学会本部の裏取引でいつ公明党大阪府本部の方針が覆されるかもわからないからだ。そうでなくても統一地方選前半戦の勝利に気を良くしたのか、安倍首相は自公一体で安保法制議案の法制化に意欲を示しており、この4月7日から本格的な与党協議が再開されることになっている。5月17日の住民投票までの期間は、国会では自民・公明・維新の三位一体体制で安保法制化の議論が進められる時期にあたっており、「大阪のことは大阪で決める」ことが果たして可能かどうか断定することはできない。

 そのためにも、公明党大阪都構想の命運を託すのは避けなければならないと思う。公明党大阪都構想に「賛成」なのか「反対」なのか、住民投票で再び維新と裏取引を「する」のか「しない」のか、大阪府民・大阪市民は公開質問状を出して公明党の態度を確かめなければならないと思う。そして、公明党が質問に答えず曖昧な態度を取るときは、府民・市民挙って批判行動に立ち上がらなければならないと思う。(つづく)