魑魅魍魎の世界に入った野党共闘、自民二階幹事長と民進野田幹事長のカジノ法案強行採決直前の会食(密談)は何を物語るか、本気の野党共闘は新潟県知事選方式で進めるべきだ、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その30)

 最近の民進党はいったい何を考えているのかよくわからない。不透明というか、不明瞭というか、国会審議においても党内がバラバラに動いていて政党としての存在感が見えない。マスメディアが挙って反対したカジノ法案の国会審議でさえも、党内では賛成するのか反対するのか最後まで方針が決まらず、「反対」の態度を決めたのは何と自民党衆院本会議強行採決の後だった。本会議で採決に加わらず退席戦術をとったのは、抗議の意思を示すためではなく賛否が決められなかったからだ。

 重要法案に対して採決の直前(直後)まで賛否の態度を決められず、ただ「審議が拙速だ」「審議時間が足りない」というだけでは足元を見すかされる。というよりは、法案に対する態度も決めないで国会審議に臨むこと自体が、政党としての基本的要件に欠ける。何しろ前原氏など民進党幹部多数が参加して議員立法で立ち上げたカジノ法案であり、共産、社民を除く全ての党派議員が「カジノ議連」に参加しているのだから、自民としては「採決して何がおかしい」ということになるのだろう。

 そんな折も折、自民二階幹事長と民進野田幹事長が12月6日昼、都内で会食したことが発覚した。しかも自民林幹事長代理と民進安住代表代行が同席していたという。朝日新聞夕刊フジは次のように伝えている(12月8日)。
 ―自民党二階俊博幹事長と民進党野田佳彦幹事長が6日昼、東京都内で会食し、国会運営や今後の国政課題について意見を交わしていたことがわかった。会合直後の衆院本会議では、カジノ解禁法案が採決されており、民進党内には会合の開催を疑問視する声もある。(略)民進蓮舫代表は7日、記者団に「与野党幹事長議論することは否定しないが、誤解を生んではいけないので、野田氏に『慎重の行動を』と伝えた」と述べた(朝日)。
 ―自民党二階俊博幹事長と民進党野田佳彦幹事長が6日昼、都内で会食した。終盤国会の与野党攻防が激しくなるなか、与野党の幹事長が“濃厚接触”するのは異例中の異例といえる。一体、2人は何を話し合ったのか。幹事長は党のナンバー2で党の重要事項を仕切る事実上の最高指揮官である。これまで幹事長同士が会うのは与野党激突で国会が膠着(こうちゃく)状態に陥り、状況打開を模索する場合などに限られてきた。会食には二階氏の側近、林幹雄幹事長代理と野田氏に近い安住淳代表代行らも同席した。国会では現在、TPP(環太平洋戦略的経済協定)承認案や、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備推進法案などが議論されている。安倍晋三内閣の支持率が高いなか、蓮舫代表率いる民進党は攻めあぐねている印象を受ける(夕刊フジ
―政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「55年体制時代の国対政治のようだ」といい、「野田氏は受けるべきではなかった。民進党内や野党内で『二階氏と何を話したのか』『何か密約したのではないか』と疑心暗鬼が生まれる。次期衆院選に向けて共産党を含む野党4党が共闘を模索しているタイミングでの会談はマイナスしかない。野田氏は幹事長同士が会うという政治的な意味を改めて噛み締めた方がいい」と続けた(同上)。

 蓮舫代表は12月7日の党首討論カジノ法案の強行採決を取り上げ、安倍首相を(表向きは)厳しく追及した。しかし安倍首相の答弁には余裕すら感じられ、いつものように論点をはぐらかすことに加えて、民進党の足元を見透かすような発言が目立った。前日の与野党幹事長の密室会談の「成果」を踏まえてのことだろう。裏では自民と取引をしながら、表ではテレビの前で派手なパフォーマンスを繰り広げる――、こんな民進の芸当がいつまでも(国民に)ばれないはずがない。

自民との「国対政治」を復活させた民進野田幹事長は、これからの野党共闘にどう臨むのだろうか。与野党幹事長「会談」ではおそらくこの種の話題も出たのではないか。表向きは野党間で選挙協力の話を進めながら、裏では自民二階幹事長との会談を通して衆院解散の時期を探り、その上で「野田式」野党共闘の作戦を展開する算段なのだ。

 共産党は12月5日、小池書記局長が国会内で記者会見し、総選挙に向けた小選挙区(296)の候補者254人(1次分)を発表した。翌12月6日の赤旗は、1面トップで「共産党 小選挙区に254氏」との大見出しを掲げ、総選挙1次分候補者を発表した。民進党も候補者選考を進めており、11月末段階では212小選挙区で公認候補を決めている。このままでいけば多くの選挙区で野党共闘ならぬ「野党競合」が実現する情勢だが、野田氏は一向に動く気配がない。

 一方の共産党は、小池書記局長が記者会見での一問一答で次のように答えている(赤旗、12月7日)。
 ―小選挙区で立候補しないと決めているのは沖縄2、3、4区だけ。それ以外は検討中。ただし、参院選のときのように、一方的に候補者を降ろすことは考えていない。
 ―野党間の選挙協力には政党本部間の合意が必要であり、(1)共通政策を豊かする、(2)相互推薦・相互支援をする、(3)政権問題での前向きの合意を図るの3点が重要。ただし、三つ目の政権問題については、現在野党間に合意がないので選挙協力の協議に入る条件にはしない。
 ―直近の選挙の比例代表の得票比―7月の参院選では、民進党共産党の得票比はほぼ2対1となり、それを基準としてそれぞれの候補者を推薦、支援することを提案している。

 京都、福岡、東京の衆院補選で一方的に候補者を降ろし、リベラル層から総スカンを食った共産が「無原則な方針」を改めるというのだから、それはそれで結構なことだ。またそれとは対照的に、新潟知事選のような「民進抜き」の野党共闘方式もある。共産、社民、自由の3野党は、一刻も早く民進党抜きの野党共闘をスタートさせるべきだ。これはどこまで信用していいかわからないが、毎日新聞12月8日にはこんな記事もある。
 ―共産党志位和夫委員長、自由党小沢一郎共同代表、社民党吉田忠智党首は7日夜、東京都内の日本料理店で会談し、次期衆院選に向け、民進党を含む野党4党の結束強化が必要との認識で一致した。4党の候補者調整は遅れており、慎重な民進をけん制する狙いとみられる。

 二階・野田会談も志位・小沢・吉田会談のどちらも「会食付」というのが気になるが、こんな民進を挟む綱引きがいつまで続くのか、国民は相当くたびれてきている。野党共闘が「魑魅魍魎」の世界に入らないうちにそろそろ決着をつけてほしい。(つづく)