蓮舫・野田執行部の野党共闘に関する「バラバラ発言」は攪乱戦術なのか、それとも執行部分裂のあらわれなのか、蓮舫支持率の低下が民進党を揺さぶっている、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その24)

 このところ、野党共闘に関する民進党執行部の発言がぶれにぶれている。野田幹事長が11月2日に小沢自由党代表と会談して「共産抜き」の野党共闘を推進する気配を見せたかと思うと、今度は蓮舫代表が11月7日の都内講演で、次期衆院選小選挙区について「1対1、与党対野党というシンプルな形が有権者にとって選択しやすい」と述べ、野党候補の一本化に意欲を示すという有様だ。おまけに共産党との選挙協力に反対する支持団体の連合については、「選挙区で他の政党とのことまで口を出すものだと考えていない」と述べ、連合の意向に左右されず次期衆院選の野党協力策を判断する意向を示したという(朝日、日経11月8日)。

 周知の如く、蓮舫氏は野田氏を師と仰ぎ、党内の反対を押し切って幹事長に据えた「刎頸の交わり」の仲だ。それが民進党の政治路線の基本である野党共闘について両氏が全く反対方向の発言をするのだから、その意図がよくわからない。民進党内での野党共闘に対する態度がなかなか定まらないので、当分は時間稼ぎのために執行部が別々の主張を繰り返しながら様子を見ているのか、それとも蓮舫代表と野田幹事長の意見が分かれているのか、判断がつかないのである。

 私が思うに、その原因は蓮舫代表の政治的動揺にあるのではないかと考える。政治経験のない蓮舫氏が「選挙の顔」として民進党代表に担がれたのまではよかったが、定見がないために確たる方針を打ち出せず、と言って「共産抜き」の野田路線に踏み切るだけの勇気もないことから、その時々の情勢に流されて右往左往するばかりで、発言も行動もぶれまくっているからである。

 その端緒のあらわれが、新潟県知事選の終盤での蓮舫氏の新潟入りだった。連合が支持する原発再稼働容認の与党候補の敗色が濃くなり、このままでは「民進抜き」野党候補が勝利するとの情勢が伝わると(野田幹事長の制止を振り切って)現地入りし、野党候補の応援演説に走ったのがその例だろう。現地では「いまさらなにを」と呆れられたというが、それでも行かずにはいられなかったところに彼女の動揺ぶりが伝わってくる。

 また代表選で争った前原氏を(閑職の)常任顧問に据えようとしたが断られ、このままでは「党内非主流派」の中心的存在として勢力を増すことを恐れたのか、社会保障制度のあり方を議論する「尊厳ある生活保障総合調査会」を立ち上げ、会長に前原氏を起用したのもそのあらわれだ。蓮舫氏は、脆弱(ぜいじゃく)な党内基盤を強化するために前原氏の取り込みを狙ったのだろうが、結果は「次」を狙う前原氏に活躍の場を提供しただけに終わるにちがいない。

 加えて、蓮舫氏が次期衆院選参院からくら替えするため、比例代表単独で立候補し、東京ブロックの名簿登載順位1位とすることを検討していることも(政治的動揺をあらわす)その一例だといえる。蓮舫氏は参院選東京選挙区で圧倒的な勝利を収めたのだから、衆院選でも小選挙区で堂々と戦うのが筋というものだ。しかし(当選確実の)比例代表第1位候補で出馬するというのでは、選挙戦から「逃げた」と見られても仕方がない。党内からは「党首なら、正々堂々、小選挙区で戦うべきだ」「楽な選挙をしたら駄目だ」などと反発する声も出ているというが、もうこれだけでも党内の信用は「ガタ落ち」というものだ。

 しかし、蓮舫氏にとって一番大きなショックだったのは、毎日新聞が11月5、6日の2日間に実施した世論調査で、東京都の小池知事を「支持する」が70%、「支持しない」が7%と「支持する」が圧倒的だったのに対して、9月に就任した民進党蓮舫代表に関しては、「支持する」26%、「支持しない」36%、「関心がない」32%と、蓮舫氏に対する評価が大きく落ち込んだことだ。「関心がない」という回答選択肢がなければ、蓮舫氏の支持率がもう少し上がったかもしれないが、それでもこの低さは就任直後の人気が完全に萎んでしまったことを物語っている。これは、民進党が期待する無党派層が「関心がない」42%で最も多く、「支持する」20%、「支持しない」31%であったことでも裏付けられる。

この世論調査結果は、蓮舫氏のみならず民進党にとっても由々しき事態だと言わなければならない。なにしろ蓮舫氏が民進党代表に選ばれたのは、「選挙の顔」であることが唯一無二の理由であって、それ以外の政治的資質や識見が評価されたからではないからだ。このままでは次期衆院選が戦えない、どうすれば人気を取り戻すことができるか、野党共闘に背を向けたままでは民進党の惨敗に終わるかもしれない―、こんな懸念が蓮舫氏の脳裏に走ったとしてもおかしくない。

私は、11月7日の蓮舫氏の都内講演は、このような民進党を取り巻く情勢の中から生まれていたと考えている。また、産経新聞が11月7日に1面トップで報じた「衆院選 4野党共闘なら47選挙区で野党逆転」という記事も、事前の情報で入手していたこともその背景の中にあるだろう。しかし、問題は野田幹事長だ。蓮舫代表の動揺を抑えて「共産抜き」の野党共闘に踏み切るか、それとも若干の修正と妥協に踏み切るか、その行方は注目に値する。(つづく)