「野党共闘ありき」ではない、安倍政権の暴走を阻止する政治勢力の形成が目標なのだ、蓮舫・野田執行部の3原則、「相互推薦なし、政策協定なし、横並びの街頭演説なし」では、野党共闘は早晩消滅するだろう、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その22)

10月23日の衆院補選以来、衆院解散が遠のいたとの噂が意識的に流される中で野党共闘は目下まったくの音無し状態だ。このままだと、安倍首相が抜き打ち解散に打って出れば野党の大敗は免れない。とりわけ民進党は壊滅状態に陥るだろう。なのに、野田民進党幹事長は動かない。その背景にいったい何があるのか。

野田氏(前首相)は、民主党政権時代に無謀な解散に打って出て自民党に政権を献上した張本人だ。「二度あることは三度ある」というが、今度は野党共闘を壊すことで自民党にさらなる利益供与を続けるつもりなのだろうか。このままでは、野田氏が安倍政権の「トロイの木馬」だと評される日もそう遠くはないだろう。

前回の拙ブログでは見落としていた重大な事実がある。それは民進党の馬渕選対委員長が連合幹部と水面下で協議を重ね、野党共闘においては「相互推薦なし、政策協定なし、横並びの街頭演説なし」との原則を決定していたことだ。この原則は、10月4日の蓮舫代表と連合の神津会長のトップ会談で正式に確認されている。蓮舫・野田執行部と連合は、この3原則方式を次期衆院選の「モデルケース」にするはずだったという(読売、京都10月25日)。

恐るべき3原則ではないか。これが蓮舫・野田執行部の「野党共闘」の原則だというのであれば、他の3野党に対する「騙しの3原則」という他ない。野党共闘の旗は掲げる、他の野党候補を降ろして民進党候補に一本化する、しかし実際の選挙は「相互推薦なし、政策協定なし、横並びの街頭演説なし」でいくというのだから、これほど手前勝手な「やらずぶったくり選挙」はないだろう。

おそらくこんな情報は、衆院補選前から他の3野党にも伝わっていたに違いない。それでいながら共産党は候補者を降ろし、機関紙で「野党統一候補」への支援を呼びかけたのだから、どこまで「お人好し」なのか計り知れない。だがよく考えてみると、こんな「騙しの3原則」に貫かれた選挙を「野党共闘」だと喧伝し、機関紙読者を選挙に駆り立てた政治責任は重大だ。街頭で「ニセモノ」を「ホンモノ」だとして販売すれば、これは明らかな違法行為にあたる。「ニセモノ」の野党共闘を「ホンモノ」と偽ることも同様だろう。

さすがの共産党も業を煮やしたのか、志位委員長が先週の記者会見で「共産党とは一線を画せという連合の要求に従うのか、野党共闘に本格的に取り組むのか、問われているのは民進党だ」と牽制したが、これに対しても野田氏はいっこうに取り合う様子がない。そんなことを言うのは「失礼だ」として却って居直る有様だ。どちらが失礼なのか、どうやら本人はわかっていないらしいが、こんな傲慢な態度ではとても野党共闘を続けていくことは不可能だろう。

 こんな膠着状態の中で、野田氏が自由党代表の小沢氏と極秘に会談したことがわかった。野田幹事長は10月31日の記者会見で小沢氏と29日夜に会ったことを明らかにし、「天下の情勢について議論した」と語り、週内にも再会談する予定だと明かした。また野党共闘に関しては「(連合か野党共闘かの)二者択一ではない」と強調したという(朝日11月1日)。

 NHK(ディジタルニュース)も10月31日夜、野田幹事長の記者会見の模様を伝えた。野田氏は「安倍政権を打倒するため、すでに政党間で合意している『衆議院選挙でのできるかぎりの協力』を具体化する議論を加速させることが大事だ。一方で、連合とも緊密な関係を保っていかなければならず、二者択一で語れるものではない」と述べ、そのうえで共産党などとの連携について、「どういう協力をするかはこれからの問題で、面と向き合った時にきちんと議論すべきだ」と語り、今後の協議を通じて具体的な協力の進め方を模索していく考えを示したという。

まるで「鵺(ぬえ)」そのものの野田氏の動きではないか。いずれ正体をあらわすだろうが、連合との関係は維持したままで「野党共闘」を表向き追求し、当分は3野党の批判はかわすという「時間稼ぎ作戦」は続ける腹づもりらしい。こうして3野党に対しては「野党共闘」の匂いを嗅がせながら、一方では民進党候補の擁立と選挙体制を進め、最後は「どんでん返し」で共闘を破棄するつもりなのだろう。

野党共闘そのものが目的なのではないし、「野党共闘ありき」でもない。安倍政権の暴走を抑止する国民的な政治勢力を形成することが、改憲阻止に立ち上がった市民共同の目標であったはずだ。そのための手段として野党共闘が浮かび上がったのであって、岡田前代表が積極的姿勢を示したことでたまたま実現したいにすぎない。そのことの政治的意義を評価することは勿論だが、蓮舫・野田執行部になって情勢が変わったことをもっと重視すべきではないか。

私は、蓮舫・野田執行部を選んだ民進党は、岡田代表時代の民進党とはもはや異質の政党になったと考えている。岡田代表から蓮舫代表への交代は単なる党首の交代ではなく、蓮舫氏が野田氏を幹事長に据えた瞬間から民進党は明確に「責任野党」への道を選択したのである。蓮舫氏の「対決ではなく提案」との政治基本方針の表明は、この「責任野党」宣言にほかならない。

安倍首相の奨励する「責任野党=民進党」とそうではない野党の間で果たして野党共闘は成立するのだろうか。私は成立しないと思う。「騙しの3原則」をそのまま吞むのであればまだしも、そんな馬鹿なことをすれば「野党総倒れ」になることは確実である以上、3野党は「責任野党抜きの」の野党共闘を考える時が来たのではないか。いつまでも野田氏の「時間稼ぎ作戦」に載せられていてのでは衆院選準備が遅れるだけだ。(つづく)