自民・民進「与野党国対政治」の復活か、カジノ法案を巡る「廃案」から「修正」への民進党豹変は、二階・野田与野党両幹事長の「出来レース」をうかがわせる、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その31)

 前回、拙ブログで自民二階幹事長と民進野田幹事長が12月6日昼、都内で密会(会食)した件について、「55年体制時代の国対政治のようだ」と指摘した政治ジャーナリスト、鈴木哲夫氏のコメントを紹介した(夕刊フジ、12月8日)。それから僅か1週間も経たないうちに、今度はカジノ法案をめぐる民進党の態度が「廃案」から「修正」へ豹変した。参院で自民、民進両党が法案修正で歩み寄ったためだ。

本日12月15日の毎日新聞社説はこの点を次のように厳しく批判している。
――カジノ解禁に向けた「統合型リゾート(IR)整備推進法」(カジノ法)が成立した。参院審議での取り扱いが焦点だったが、民進党は採決を容認した。民営賭博を事実上合法化するという、国民生活に直接影響する法律だ。にもかかわらず、まともな議論も経ずになし崩しに道を開いたことは納得できない。おとといからきのうにかけて、事態は急変した。参院で自民、民進両党が法案修正で歩み寄ったためだ。修正といってもギャンブル依存症対策の明示や施行後5年以内の見直しなどにとどまる内容で、根幹は変わらない。経済効果やマネーロンダリング対策も含め、衆参合計22時間程度の審議では議論を尽くしたというにはほど遠い。
 ――特に理解しがたいのが、参院における民進党の対応である。蓮舫代表は安倍晋三首相との党首討論でカジノ問題に議論を集中させた。IRを成長戦略と位置づける姿勢を「国家の品格を欠く」と批判し、成立阻止を強調していた。参院内閣委員会の委員長は民進党所属のため、議事の主導権を握っていた。ところが参院審議の土壇場で参院民進党は法案の手直しを評価し、内閣委員会の採決に応じてしまった。民進党が採決に応じない場合、自民党は委員会の採決を省略していきなり本会議で成立を強行するかの判断を迫られるため、与党にも慎重論があった。法案に反対したとはいえ不十分な修正で採決に応じたことは、結果的に民進党が成立に手を貸したと取られても仕方ない。

 もともとカジノ法案を巡る民進党の態度は、不透明極まりないものだった。何しろ民進党幹部多数が「カジノ議連」に参加しており、共産・社民を除く超党派議員立法された法案なのである。民進党内には賛否両論が渦巻いていて政党として統一見解が出せず、「反対」の態度を決めたのは何と自民党衆院本会議強行採決の後だった。しかしそれも束の間、今度は参院で一転「修正」となり、結局は自民ペースでカジノ法案は粛々と成立したというわけだ。

 だがこれほど重要なカジノ法案に対する対応を、果たして参院民進党の一存で決められるのだろうか。まして「廃案」から「修正」への180度の転換であり、これは「黒」を「白」というに等しい。これでは参院議員の蓮舫代表が党首討論で安倍首相と激しくやり合ったのはいったい何だったのか――と言われても仕方がない。産経新聞は、「『IR廃案』意気込むも 参院民進は自民と協調」「振り上げた拳 凍る蓮舫代表」と大見出しを掲げて次のように皮肉っている(12月14日)。
 ――民進党蓮舫代表が「廃案」の大号令をかけたカジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備推進法案は、最終的に14日に成立する見通しになった。民進党衆院段階では賛否すら決められずに退席。その後廃案に舵を切ったが、逆に参院では自民党と協調して審議重視の姿勢を取った。国会対応が最後まで迷走したのは明らかで、蓮舫氏の指導力不足が露呈したといえる。
 ――蓮舫氏は13日午後の常任幹事会で「あらゆる手段で国民の声に向き合う対応を取る」とも語り、徹底抗戦の姿勢を強調した。だが、その号令から約3時間後、自民、民進両党の参院幹事長と国対委員長は法案を修正して可決し、衆院に戻す「回付」で同意した。

 私は、12月6日の二階・野田会談がその後のカジノ法案を巡る参院民進の対応に無視できない影響を与えたと考えている。端的に言えば、二階・野田の「出来レース」によって参院民進の態度が決定されたのであり、自民・民進国対政治の裏に与野党幹事長の影が動いているのではないかと強く疑っているのである。

 それでいて民進党野田佳彦幹事長は12月14日昼、共産、自由、社民との幹事長・書記局長会談で、「カジノ解禁法案」をめぐり13日に自民党の修正案を評価して参院内閣委員会での採決を一転して容認したことについて「各党と意思疎通しないままで、おわびしたい」と謝罪したという(朝日新聞12月15日)。いけしゃあしゃあとまでは言わないが、これが今国会での野党共闘の実態だとしたら、この先総選挙の選挙協力などどうなるかわからない。自民党と裏で通じていて野党間の「できる限りの協力」などと言うのは茶番劇以外の何物でもないからだ。(つづく)