いま、NHK日曜討論を見終えたばかりだ。驚いたことに「衆院選10日公示、党首討論」と銘打った75分の長時間番組なのに、「森友・加計疑惑=モリカケ疑惑」に関する討論が一言も出てこなかったのだ。安倍首相の酒食仲間である島田某解説委員が討論を強引に仕切っていたにしても、各党党首が(共産党も含めて)全員出席している討論会なのだから、国民最大の関心事である「モリカケ疑惑」がテーマに取り上げられないなど信じられない。それとも「モリカケ疑惑」は取り上げないとする事前の密約でもあったのだろうか。
今朝10月8日の毎日新聞大阪本社版は、「霞が関 解散で安堵」との大見出しを掲げて「モリカケ疑惑」に対する国民の関心を改めて喚起している。リード部分は以下のように始まる。
「森友学園、加計学園の問題で、衆院解散・総選挙によって渦中の省庁に安堵感が漂っている。6月の通常国会閉会後に新たな問題も浮上したが、先月の臨時国会は審議のないまま冒頭解散になり、野党の追及を逃れた格好だ。東京都の小池百合子知事による新党結成を機に世論の関心が政界再編に傾いているようにも見えるが、識者は『国民は忘れていない』とくぎを刺す」
安倍首相は、「モリカケ疑惑」に関するこれまでの言い逃れやごまかしが都議選での大敗や支持率の大幅低下という結果を招いたことに対して、「真摯に反省し丁寧に説明する」とつい最近まで繰り返していたはずだ。それが舌の根も乾かないうちに前言を翻し、臨時国会も冒頭解散という策略で野党の追及を封じ込んだばかりか、解散してからも一切「モリカケ疑惑」には触れようとしない。そんなことで、私は今朝の党首討論の中で漸く「モリカケ疑惑」に関する本格的な論戦が始まると期待していたのである。
ところがどうだろう。蓋を開けてみると「モリカケ疑惑」抜きの形式的な発言が延々と続くばかりで討論はゼロ。島田某解説委員の仕切りにしたがって各党首が順番におとなしく発言し、その間のやり取りや論戦は悉く封じられる始末だ。まるで各党首が選挙公報を読み上げているような退屈極まる番組だった。NHKは以降「日曜討論」というタイトルは返上して「日曜談話」とでも変更したらどうか。そうすれば、国民はもう誰も討論など期待しなくなるに違いない。
NHKは、自ら行った直近の世論調査の結果をもう忘れてしまったのだろうか。NHKは今月22日に行われる衆議院選挙を前に、9月29日から3日間、全国の18歳以上の男女を対象に固定電話と携帯電話の番号に電話をかける「RDD」という方法で世論調査を行っている。
その中で明らかになったことは、安倍内閣の支持率が前回調査に比べて7ポイント下がって37%、不支持率8ポイント上がって44%になり、「不支持」が「支持」を上回ったことである。また安倍首相が今回、衆議院の解散・総選挙を決めたことに対しては、「大いに評価する」6%、「ある程度評価する」21%、「あまり評価しない」34%、「まったく評価しない」33%だったことだ。
つまり世論は、安倍首相が「モリカケ疑惑」隠しのために冒頭解散に踏み切ったことを強く批判しているのであって、この世論調査を受けての日曜討論は何にも増して「モリカケ疑惑」をメインテーマにしなければならなかった。ところが番組は「討論」ならぬ「談話」の羅列に終わり、私も含めて全国の視聴者を失望の淵に投げ込んだ。国民から視聴料を取り立てている「みなさまのNHK」が安倍政権の走狗となり、その先頭に島田某解説委員が走っている有様はあまりにも見苦しい。NHKはもはや死んだのだ。
番組では噂の小池某党首も初出演したが、その精彩のないことおびただしかった。テレビ番組で伸し上がってきた小池氏が(逆風が余程こたえているのか)全く目立つことなく、まるで官僚答弁のような無内容な内容しか主張できなかった。「紅一点」の魅力も発揮できず、政策も安倍政権とさほど違わないとすれば、そもそも小池新党の存在価値などまったく無意味ではないか。
とはいえ、今回の総選挙は別の意味で面白い。安倍政権の本性が小池新党の出現によってあぶりだされ、自公与党と希望の党が共倒れするという可能性も出てきた。安倍首相もNHKも国民を馬鹿にしない方がいい。国民の「倍返し」「倍々返し」がこれから」始まるのだから。(つづく)
●10月9日から12日まで出張で不在です。この間はコメントを掲載できません。ご了承ください。