安倍首相は麻生財務相の頚(くび)を切れない、野垂れ死にするだけだ、首相のウソを閣僚が尻拭いする言われはない、立憲民主を軸とした新野党共闘は成立するか(20)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その107)

 3月12日は1日中、午前から夕方までメディア各社の電子版ニュースから目が離せなかった。まるで「連続ドラマ」のように、これでもかこれでもかとばかりに次から次へと新しいニュースが飛び込んでくる。各社が総力を挙げて取材し、全力で国民に向けて情報発信している意気込みが伝わってくるようだ。時間経過を追って抜粋し再録しよう。

「書き換え数十カ所 昭恵氏の名削除…問題発覚後」(毎日新聞2018年3月12日10時34分、最終更新3月12日14時49分)

 学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書を巡る疑惑で、財務省は12日午前、文書に書き換えがあったと認める調査結果を自民、公明両党に報告した。書き換えは同省理財局が主導し、関連文書14件で数十カ所に上るとしている。書き換えの時期は昨年2月下旬から4月。書き換え前の文書には、森友学園籠池泰典前理事長の発言として安倍晋三首相の妻昭恵氏に関する記述があり、書き換え後は削除されていた。与党幹部が明らかにした。

 書き換えがあったのは、2015年から16年に近畿財務局が作成した決裁文書やそれに付随する計14件の文書。決裁当時の文書には「本件の特殊性」などの記述があったが、問題が発覚した17年2月以降、国会議員らに開示された文書ではそれらの記述が削除されるなどしていた。書き換えの期間は森友問題が国会で浮上し、野党が追及を始めた時期と一致する。また昭恵氏が問題の国有地を「いい土地ですね」と語り、学園を訪問した際に感動して泣いたなどと紹介した籠池氏の発言のほか、自民党平沼赳夫経済産業相北川イッセイ参院議員ら政治家の名前を含む売却までの経緯が削除されていた。

 森友問題では、国有地の売却価格が大幅値引きされた経緯が問題視された。昨年の国会で「事前の価格交渉はなかった」「交渉記録は破棄した」と答弁した佐川氏は、今月9日に辞任。麻生氏は佐川氏を懲戒処分とした。書き換え後の文書は昨年の答弁に沿う形になっており、麻生氏は財務省の調査や地検の捜査の結果次第で追加処分を行う意向を示している。決裁された公文書がミス以外で書き換えられたのは極めて異例で、公文書の信頼性や情報公開制度の根幹を揺るがしかねない深刻な事態に発展した。疑惑が裏付けられたことで、首相や麻生氏の責任を問う声がさらに強まるのは必至だ。

「森友14文書を書き換え 財務省が与党に報告 17年2月以降も、国会答弁と整合性図る? 」(日経新聞2018年3月12日10時37分、更新3月12日13時08分)

 財務省は12日午後、学校法人「森友学園」への国有地売却の決裁文書に関する調査結果を国会に報告した。財務省や近畿財務局が途中で書き換えた文書は14あり、森友問題が浮上した昨年2月から4月にかけて書き換えられた文書も含まれていた。国会答弁との整合性を図るため、関係者が意図的に書き換えた疑いが濃くなった。同省幹部は「14件の文書の書き換えがあった。あってはならないことだ。深くおわびする」と陳謝した。この後、衆院財務金融委員会理事懇談会でも報告する。

 問題になっているのは2016年6月に作成した国有地売却に関する決裁文書などだ。当初の文書とは違う別の文書が存在するとの疑惑が浮上。財務省は捜査当局の協力を得て、調査を進めていた。文書の原本は背任や公用文書等毀棄容疑などで告発を受けた大阪地検が近畿財務局から任意提出を受け、保管していた。関係者によると、捜査当局が原本の写しを財務省に提供した。財務省がまとめた調査結果は約80ページ。17年2月下旬から4月にかけて、財務省理財局が「貸付決議書」や「売払決議書」など5件の文書を書き換えていたことを認めた。これらの文書の書き換えを反映させる形で他の9件の決裁文書も書き換えていたことも明らかにした。当時の理財局長だった佐川宣寿・前国税庁長官の関与を事実上示したものといえる。

 売払決議書には「価格等について協議した結果、学園が買い受けることで合意した」と事前の価格交渉を示唆する記述があったが、書き換え後の文書ではこの部分が削られていた。当初は10年間定期借地契約後に売り払う契約になっていたことに関して「特例的な内容となることから」「理財局長の承認を得て処理を行う」といった記述もあったが、書き換え後は削除されていた。財務省本省の関与をうかがわせる内容だったため、削った可能性がある。このほか鴻池祥肇元防災相や平沼赳夫経済産業相ら4人の政治家の名前を含む記述を削った例も見つかった。

朝日新聞速報」(2018年3月12日15時47分)

 財務省の森友文書書き換え問題は、今月2日に朝日新聞が報じた。同省は同日、6日までに調査・報告すると国会に約束。だが6日の報告は「文書をただちに確認できない」などとする内容にとどまり、野党は「ゼロ回答」と反発。自民党二階俊博幹事長も会見で「理解できない」と述べ、対応が後手に回る展開となった。同省は8日になって近畿財務局の決裁文書のコピーを開示したが、すでに国会議員に開示されていた物と同じで、疑惑払拭(ふっしょく)にはつながらず。9日午前には、同局職員が自殺していたと見られることも明らかとなった。同日夜、決裁文書の国会提出時の担当局長だったなどとして、佐川宣寿国税庁長官が辞任した。

■安倍首相、記者団の問いかけに答えず
 安倍晋三首相は12日午前9時過ぎ、首相官邸に入った。記者団の「財務省が書き換えを認めるとの報道について受け止めを」との問いかけには答えず、硬い表情で執務室に向かった。首相は2日に書き換え問題が発覚して以降、財務省に対応させる姿勢を強調してきた。5日、参院予算委員会で「私は全くこの話、あずかり知らないから答えようがない」と答弁。8日の同委で「できるだけ早期に説明できるよう、同省をあげて最大限努力をしてもらいたい。政府も誠意を持って対応する」と述べた。10日も記者団に「同省において来週早々に(調査)結果について示せるよう全力で取り組んでもらいたい。麻生(太郎)財務大臣をはじめ同省を挙げて取り組んでもらいたい」と対応を委ねた。

■立憲・福山氏「前代未聞の異常事態」(10:15)
 立憲民主党福山哲郎幹事長が、国会内で記者団の取材に応じた。野党はまだ財務省からの報告を受けておらず、「改ざんされる前の元の文書が提出されるとすれば」とした上で「国会審議の信頼と前提を根本から覆す、前代未聞の異常事態」と断じた。「誰の指示で、いつ、なんのために改ざんされたのか明らかにすることは不可欠。財務省だけで判断することは絶対にない。官僚だけに責任を押しつけて済ますことはあってはならない。政府全体の責任は極めて重い。まずは、佐川(宣寿)元国税庁長官の証人喚問を求めたい」と述べた。

■自公幹部「書き換えられているらしい」政府からの報告認める(10:28)
 「西村(康稔・官房)副長官から、書き換えられているらしいという報告があった」。12日午前10時30分前、公明党大口善徳国会対策委員長が、国会内で記者団に語った。政府・与党が書き換えを初めて公に認めた。直後に、自民党森山裕国対委員長も「政府から、森友学園への国有地処分に関する決裁文書に、どうやら書き換えがあったようだとの報告を受けた」と記者団に語った。大口、森山両氏は午前9時45分ごろから、そろって西村氏から説明を受けた。約40分間の説明の後、取材に応じた。

■菅官房長官、麻生財務相の進退論を否定「麻生大臣に徹底した調査の指揮をとっていただくべきだ」(11:05)
 午前11時5分、菅義偉官房長官首相官邸で午前の定例記者会見に臨む。「麻生太郎財務相の責任論についてどう考えるか」との問いに、菅氏は「麻生大臣においては今、財務省をあげて調査を行われているところであり、徹底した調査を行い、まずそうしたことはすべてはっきりすべく、指揮をとって頂くべきだ」と答えた。調査の指揮を優先させ、ただちに進退論にはつながらないとの見方を示した形だ。

■共産・小池氏「昭恵さんの名前削除、首相本人の責任に直結する極めて重大な事態」(11:45)
 午前11時45分、共産党小池晃書記局長が記者団の取材に応じた。「安倍昭恵さんの名前も削除されていたと報道されている。まさに政権中枢、安倍(晋三)首相本人の責任に直結する、極めて重大な事態だ」とした上で、「内閣総辞職に値する問題にいよいよ発展してきている」と述べた。朝日新聞が国有地をめぐる取引の問題を報じたのは昨年2月。小池氏は、首相が昨年2月の国会で自身や昭恵氏が関与していれば退陣すると答弁したことに触れ、「この答弁をめぐって改ざんが行われたということがあれば符合する話になってくる」とし、首相答弁と書き換えとの関連をただす意向を示した。

■麻生氏「私の進退については考えていません」(14:05)
 麻生太郎財務相が午後2時5分、財務省内で記者団の取材に応じた。「昨年2月下旬から4月にかけて、本省理財局において、森友事案に関する14件の決裁文書の書き換えが行われていたことが明らかになった。決裁された行政文書について書き換えを行うことは、極めてゆゆしきことであって、まことに遺憾。私も深くおわびを申し上げる次第だ」と陳謝の言葉を述べた。今後については「捜査にも全面協力し、二度とこうした事態がおこらないよう、さらなる調査を進めて、その上で信頼回復に向けて努力したい」と述べた麻生氏。進退を問われると「私の進退については考えていません」と否定した。

■麻生氏「佐川の答弁に合わせて書き換えた」「忖度」は否定(14:10)
 麻生太郎財務相はぶら下がり取材で、書き換えの理由をこう説明した。「(昨年)2月下旬、佐川の答弁と決裁文書との間の齟齬(そご)があった、間違いがあった、そういう風に誤解を招くということで、佐川の答弁に合わせて書き換えたというのが事実だ」。当時の佐川宣寿・財務省理財局長は国会で事前の価格交渉を否定するなどしていた。こうした答弁と整合性を取るために書き換えた、との説明だ。麻生氏はまた、書き換えの背景に政治家への「忖度(そんたく)」があったかとの質問には、「考えていません」と否定した。

■麻生氏「最終責任者は理財局長である佐川」(14:15)
書き換えは誰の指示、責任だったのか――。麻生太郎財務相に対し、記者団からこの点への質問が相次いだ。麻生氏は「書き換えの一番トップはその時の担当者で、そんな偉い所じゃないと思うが、最終的な決裁として佐川(宣寿・前国税庁長官)が理財局長だったから、その意味で理財局長となろうと思う」と述べ、佐川氏の責任になると指摘した。「佐川さんの判断で行ったか」との問いには「佐川の判断の前の段階だと思う」としつつ、「書き換えは当時の理財局の一部の職員によって行われたので、最終責任者が理財局長である佐川ということになると思う」と、辞任した佐川氏の責任を強調した。

 これらの時間経過を追うと、目下の焦点は麻生財務相の佐川理財局長(当時)に対する任命責任監督責任に当てられており、安倍首相への言及は少ない。だが、麻生氏からすれば、「安倍のウソの尻拭いをなぜ俺がしなければならないのか」、「安倍の尻拭いなど真っ平だ」と、憤懣やるかたない気持ちで一杯に違いない。

麻生氏は、本人の資質や能力は別としても人一倍気位の高い政治家だ。いやしくも麻生氏は首相経験者であり、戦後保守政治の土台を築いた吉田茂元首相の末裔だとの自負が強い。それだけに自分の次の首相である安倍氏など心中では「目下」だと思っており、機会があれば(安倍を蹴落として)首相に返り咲きたいと思ってきた人物なのだ。だから、安倍の失策を尻拭いさせられて辞任するなど毛頭考えていないし、そのつもりもない。

一方、安倍首相も麻生氏を辞任に追いやれば、「返り血」を浴びて政権の混乱が避けられないことは目に見えている。安倍首相は自分を守るためには麻生氏を守らなければならず、麻生氏を守れば世論の批判を浴びるという「四面楚歌」に陥っているのである。結局、安倍首相は麻生財務相を頸(くび)にすることができず、一蓮托生で野垂れ死にをする破目に追い込まれるだろう。

安倍首相を支え続けてきたさすがの産経新聞も3月12日、10、11両日実施の世論調査で、内閣支持率が45%に下落し、森友文書書き換えで「麻生太郎氏は辞任すべき」71% に達したという結果を伝えた。安倍政権の「終わりの始まり」は、いまやっと始まったのである。(つづく)