立憲民主党と共産党は「限定的な閣外からの協力」で合意、これが〝野党連合政権〟だと言えるのか(その1)、菅内閣と野党共闘の行方(46)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(271)

2021年10月1日の「しんぶん赤旗」は、1面トップで「政権協力で合意、共産・志位委員長と立民・枝野代表が会談」と大きく報じた。2面でもほぼ全紙を使って、志位委員長の記者会見を特集している。この記者会見の小見出しを拾ってみると、共産党が「限定的な閣外からの協力」をどう評価しているかがわかる仕組みになっている。以下は小見出しとその内容である(要約)。

 

(1)枝野代表から総裁選にのぞむ基本的立場についての提案

 冒頭、枝野代表からどういう形で総選挙に臨むかについて提案があった。その基本的内容は以下の3点である。

 ①次の総裁選において自公政権を倒し、新しい政治を実現する。

 ②立憲民主党と日本共産党は、「新政権」において市民連合と合意した政策を着実に推進するために協力する。その際、日本共産党は合意した政策を実現する範囲での限定的な閣外からの協力とする。

 ③次の総選挙において、両党で候補者を一本化した選挙区については双方の立場や事情の違いを互いに理解・尊重しながら、小選挙区での勝利を目指す。

 

(2)市民と野党の共闘を大きく発展させる画期的な内容

 志位委員長は、この提案に対して「全面的に賛同する」「枝野代表の決断に敬意を表する」と述べ、野党が協力して新しい政権へ向かう大きな一歩を踏み出す合意が得られたことを歓迎し、この合意を力に協力して選挙に勝ち、政権交代を実現し、新しい政権をつくるために全力を挙げると決意表明した。

 

(3)首相指名選挙、臨時国会での予算委開催でも協力を確認

 枝野代表の要請に応じて、共産党は10月4日に行われる首相指名選挙では枝野代表に投票する。臨時国会では本会議での代表質問にとどめず、予算委員会で国政の争点を議論していくことにも賛成する。

 

(4)選挙協力をどのように進めていくのか

 次の総選挙で、両党が候補者一本化で合意した選挙区において勝つために協力するという合意が成立したことは、選挙協力の上でも非常な前進だ。一本化する選挙区を増やしていくための協議にも積極的に取り組んでいく。

 

(5)「新政権」における協力の中身――「市民連合と合意」した政策と具体的に確認

 市民連合と合意した政策にもとづき政治の中身を変えることが一番大事で、協力の形は閣内でも閣外でも構わない。今回は協議の結果、「限定的な閣外協力」ということになった。これで十分に満足している。

 

(6)画期的とはどういう意味か――政権協力の合意ははじめてのこと

 市民連合とは共通政策を「共有して戦い」、その政策を実行する「政権の実現をめざす」ことを合意した。しかし、新政権のもとで日本共産党の協力がどういう形態になるかについての合意はなかった。画期的ということは、日本共産党も協力する新しい政権をめざすことで合意した点にある。

 

(7)「新政権」ができた場合の日本共産党の対応はどうなるのか

 市民連合と合意した政策以外の法案や政策については、党独自の判断にもとづき協力できるものは最大限協力する。

 

(8)候補者の一本化――与野党が競り合っているところを中心に行う

 候補者の一本化については、全ての選挙区で一本化しようというのではなく、与野党が競り合っている選挙区、一本化すれば勝てる選挙区を中心に一本化しようというのが合意だ。

 

(9)今回の党首合意と野党連合政権について

 今回合意された内容は、日本共産党が提唱してきた野党連合政権の一つの形態だと考えている。これまでは立憲民主党に対して政権構想のあり方を明らかにすることが選挙協力の条件だと言ってきたが、今回の党首合意をもって政権協力についての前向きの合意が得られたと考えている。

 

 以上が立憲民主党と日本共産党の党首会談に関する志位委員長の見解だが、次に、メディア各紙(2021年10月1日)がどのように論評しているかを見よう。

読売新聞は、「立共『限定的な閣外協力』、『連合政権』共産取り下げ」との見出しで、「限定的な閣外協力=野党連合政権の共産取り下げ」との見方を示した。

「立憲民主党の枝野代表は30日、共産党の志位委員長と国会内で会談し、次期衆院選で政権交代が実現した場合の枠組みについて、共産は『限定的な閣外協力』とすることなどで合意した。共産は『野党連合政権』の合意要求を事実上取り下げた。『政権を獲得できた場合の共産との枠組みはこれで明確になった』。枝野氏は会談後、記者団を前に胸を張った。(略)共産との協力に対しては、立民の最大の支持団体の連合や、同様に連合の支持を受ける国民民主党が強く反発していた。枝野氏としては、共産党との『連合政権』構想を否定することで、懸念を払拭する思惑がある」

 

産経新聞は、枝野氏の提案は、立民、共産、社民、れいわの4党が「市民連合」と合意した共通政策の実現に協力するのは当然のことにすぎないとして、これを「画期的だ」とする志位委員長の発言を冷ややかに見ている。

「立憲民主党の枝野幸男代表と共産党の志位和夫委員長は30日、国会内で会談し、立民が次期衆院選で政権交代を実現した場合、両党が安全保障関連法廃止を求めるグループ『市民連合』と結んだ共通政策を推進するため、共産が限定的に閣外から協力することで合意した。枝野氏は会談後、国会内で記者団に共産との協力について『限定的』『閣外から』と強調。志位氏は記者団に『政策実現のための協力が合意された意義は大変大きいと考えると(会談で)表明した』と語った」

 

朝日新聞は、「立憲と共産が党首会談、政権枠組み初の合意、あいまいさ残るも折り合い」との見出しで、党首合意が両党の言葉のうえで折り合った妥協の産物であることを示唆している。

「立憲民主党と共産党が9月30日の党首会談で、立憲が衆院選で政権を取った場合、『限定的な閣外からの協力』をめざすことで一致した。『野党共闘』で選挙後の政権の枠組みに関して、野党第1党と共産が合意して戦うのは初めて。ただ、両者の思惑の違いもあり、あいまいな表現で折り合った面もあるようだ。(略)枝野氏は今年6月、連合会長との会談後、『共産党との関係は、理念が違っている部分があるので連立政権は考えていない』と記者団に明言した。立憲の赤松広隆衆院副議長も志位氏らと会談を重ね、『共産がどうしても賛成できない法案もある。《連立与党》ではなく《協力勢力》になり、納得できない法案は党の理念から反対することがあってもいい』など説得。両党幹部が調整し、『限定的』『からの』という言葉を盛り込んで折り合った形だ。ただ、『限定的な閣外からの協力』にはあいまいさも残る。具体的なイメージを問われた枝野氏は『まさに文字通りの合意をさせていただいたということだ』と述べるにとどめた」

 

毎日新聞は今回の党首会談をそれほど大きく取り上げず、見出しも「立憲、共産と連携強化、政権交代時『閣外から協力』」と控えめだ。要するに、今回の党首合意を「連携強化」レベルで見ているということだろう。

「立憲民主党の枝野幸男代表は30日、国会内で共産党の志位和夫委員長と会談し、次期衆院選で政権交代が実現した場合、共産が連立に入らず、『限定的な閣外から協力』をする方針で一致した。自民党の岸田文雄総裁の選出を受け、野党が結束して対抗する狙いがある。両党が将来的な閣外協力で合意するのは初めて。共産は立憲と競合する小選挙区で候補者を取り下げるなど候補者調整を進める方針。立憲はこれまで、共産が連立に入ることはないと説明し、共産は『閣内・閣外協力ともにありうる』と述べるなど、政権交代後の枠組みが不明確だった。立憲の支持団体の連合の神津里季生会長は、共産の閣外協力への反対を表明しているが、枝野30日、『神津氏は、あらゆる法案の事前審査や内閣提出法案への賛成を前提とした狭い意味の閣外協力を言っており、それとはまったく違う』と理解を求めた」

 

 以上、今回の立憲・共産の党首合意に関するメディア各紙の評価は、共産党のまるで「鬼の首でも取った」喜び方に比べて著しく冷めている。なぜ、これほどの落差が生じるのか。次回はその分析をしよう。(つづく)