菅政権のダッチロール(その9)、菅政権の基本的性格は「非小沢型大連立」をめざす新自由主義過渡的政権だ

 この10日間ほど日記を書く意欲が全く湧かなかった。毎日のニュースが小沢問題などもっぱら政界の泥仕合ばかりで、まともに論評できる出来事には何一つお目にかかれないからだ。それというのも菅政権がその場凌ぎの政権運営を続けていて、政治に対する国民の不安感と閉塞感を払拭できないからだろう。

 しかし来年度の予算編成案の内容をみると、これからの方向が問わず語りに見えてくる。経済面では「新成長戦略」の要となる法人税の5%減税が決まった。外交面では沖縄県民や国内世論を無視して、辺野古地区への普天間基地移設予算が組み込まれた。米軍への「思いやり予算」もここ数年間は継続して計上するという大盤振る舞いだ。

 一方、国民年金や医療・介護保険の財源不足については、「抜本的な税制改革」が必要だとして消費税増額の準備が与野党を通して着々と進行している。マスメディアも総力を挙げて大キャンペーンを張っているので、このままでいけば、遠からず「抜本的な税制改革」が打ち出されることは必至の情勢だ。

 表向きは泥仕合を演じながら、その裏では着々と自公政権と変わらない政策を実行している菅政権とはいったい何者なのか。結局のところ、その実態は「非小沢型大連立」をめざす「新自由主義的な過渡的政権」というものだろう。つまり小沢元代表が福田政権との間で密約した「小沢型大連立構想」ではなく、ダーティー・イメージの濃い小沢色を脱色した「非小沢型大連立構想」を推進する役割だ。

 小沢国会招致問題がかくも長引いているのは、表向きは小沢氏の抵抗によるものとみられているが実はそうでない。小沢氏を排除する形での「非小沢型大連立構想」の調整に手間取っているためだ。おそらく水面下では菅政権と自民・公明両党との間で大連立政権についての交渉が粘り強く続けられていて、近いうちに基本的な合意が成立するとみてよい。そうでなければ、臆病な菅首相が「小沢切り」に踏み切るはずがない。

 すでにその兆しは随所にあらわれている。読売新聞社主のナベツネ氏などが陽動作戦を展開する一方、大連立政権への参画で復権を果たしたい与謝野氏も負けずに自己存在をアピールしている。また自民党の石破氏も「小沢抜きが大連立の条件」だと言いはじめた。もう少し経つと公明党あたりが抜かりなく登場してくるのだろう。

 次の政局転換はおそらく小沢証人喚問と内閣改造を契機にして急浮上するものと思われる。どちらが早いか予測はつかないが、要するに「小沢切り」を政治的に明確にして内閣支持率の回復を図り、参院で問責決議を受けた仙石官房長官と真淵国交相が辞任する代わりに、次の大連立政権を準備する人物を菅政権の要に据えることで自民党との妥協を図るのがその基本シナリオだろう。

 当面は民主党政権が続くかもしれない。しかしそれは形式上そうであっても、実質的には大連立政権だといっても過言ではない。普天間基地移設問題に決着をつけ、消費税の増額を図るという支配層の懸案を解決するためには、現在の民主党政権はあまりにもひ弱すぎる。まして菅首相の政治的力量は地に堕ちている。彼が支配層から見限られる日もそう遠くない。

 だが問題は、なぜかくも支配層の思惑がかくも易々と実行されるかということだ。そこには日本の革新政党労働組合の歴史的な「ひ弱さ」がある。(つづく)