大阪維新は、「ワン」(総選挙での惨敗)、「ツー」(次期統一地方選での大敗)、「スリー」(次期ダブル首長選での敗北)の3連打(ワン・ツー・スリーパンチ)を浴びて来年には消滅するだろう、2014年総選挙を分析する(その8)

 この2日間、たまたま大阪で研究会があり、その前後に大阪選挙区の選挙情勢についていろんな人たちと意見交換する機会があった。大阪や堺の知人友人たちとの議論を通して明らかになったことは、各選挙区において「自公選挙協力=自公旋風」が恐るべき力を発揮しており、維新がほとんどの選挙区で「競り負け」をしているという現実だった。今回の総選挙は追い風も向かい風も吹かない「無風選挙」だというが、そんなことはない。大阪維新にとっては猛烈な「逆風」が吹き荒れているのであって、維新候補者はその場に踏み止まっていることさえ困難な状況に置かれているのである。

 「自公旋風」を受けているのは維新ばかりではない。19全選挙区で候補を擁立している共産もその煽りを喰らって、足元にも近寄れないような状況が続いているという。大阪では公明が伝統的に強いのに加えて、今回は自民がやけに元気がいいので(アベノミクス効果か?)、両党が手を組むと「手がつけられない」勢いになっているのだそうだ。それでも共産は何とか踏ん張って前回よりも得票を増やし、比例代表区での議席増を目指している(その可能性があると言っていた)。

 そんなことで、「維新が負けるのは気味がいいが、自公がこれだけ勝つとまた別の意味で副作用が出てくる」とか、「今回の選挙は痛し痒しで、どっちがどっちとも言えない」という意見もあった。確かに全国的に見れば、自公が衆院議席の3分の2を占めると、選挙後は安倍政権が一段と改憲攻勢を強めてくることが予想される。こちらの方はまさに「天下分け目の大合戦」になるが、しかしその前に大阪維新を片付けておかないと大合戦は戦えない、とにかく「大阪冬の陣」で勝利することが先決だ――、まあざっとこんな風に、大阪の人たちは割り切っていた。

前回、19選挙区で12議席(それも4議席を公明に譲って)も取った維新が、今回の選挙予想では「壊滅=議席ゼロ」とか「惨敗=1〜2議席」とかいった状態に追い込まれているのはなぜか。最大の原因は、大阪維新の結党の原点である「大阪都構想」の化けの皮が剥がれて(剥がされて)、もはや有権者の関心を引くことができなくなったからだ。維新以外の候補はもう誰一人「大阪都構想」のことを話題にしないし、維新候補といえどもそれだけを訴えていたのでは選挙にならない。だから、彼らには訴えることが「ない」のである。

もともと自民に所属していたが、「橋下旋風」が吹き荒れるのを見て維新に鞍替えしたご都合主義の地元候補にはまだ「選挙地盤」というものがある。ところが維新塾などで橋下氏に見出され、橋下旋風に乗って当選した「落下傘候補」には拠るべき地盤がないのである。彼らはまさに「根無し草候補」となって選挙区を浮遊するほかはなく、淀川のどこかの川辺に打ち捨てられるか、果ては大阪湾の藻屑となって海底に沈む以外に道がないのである。

今回の総選挙で大阪維新が惨敗すれば、その影響は大阪にとっても全国的に見てもすこぶる大きいものがあるといわなければならない。大阪維新の惨敗は全国的な維新退潮につながり、「最後の第3極」である維新の消滅につながる公算がきわめて大きいからだ。すでに「みんな」と「結い」が無くなった。次は「生活」と「次世代」が見えなくなるだろう。そして「維新」が最後に消えることになると、第3極は「もう誰もいなくなった」状態になる。あれだけマスメディアに持て囃され、世間を騒がせた「第3極」が僅か数年(実質的には2年余り)で消えるとは誰も予想できなかった。今回の総選挙後、マスメディアにはこの間の「第3極」報道についてキチンと総括してもらいたい。そうでなければ「社会的公器」としての責任や役割を果たせないと思うからだ。

だが、大阪にはまだ「残された課題」がある。それは来年春の統一地方選および11月のダブル首長選(知事・大阪市長選)で、大阪維新を一掃するという「維新大掃除」の課題である。すでに大阪府議会・市議会では大阪維新は少数派に転落しており、彼等の議員活動は実質的に封じられている。だから、「することが無くなった」議員たちには一刻も早く消えてもらわなくてはならない。来年4月の統一地方選はその絶好の機会であり、議会を大掃除して(リサイクルできない)不用品はゴミ箱に捨ててしまわなければならない。

だが聞くところによれば、総選挙での惨敗が明らかになれば、来年の統一地方選を待たずに大阪維新は「内部崩壊」が始まると囁かれている。これまで水面下で進められてきた維新脱退工作が一挙に浮上し、維新は「戦わずして敗れる」事態に直面するのではないかと言われているのである。真偽のほどは確かめようも無いが、もしこのような事態が起これば、大阪維新が選挙前に雪崩を打って崩壊することもあり得ると考えて然るべきだろう。

さらに注目されるのは、橋下・松井両氏の去就だろう。すでに松井氏は、「大阪都構想に目途がつけば後進に道を譲る」と再三再四言明している。大阪都構想の「目途」がなにを指すのか不明ではあるが、都構想の実現がもはや不可能である以上、「目途」は今回の総選挙および来春の統一地方選の「結果」を意味するものと考えてよい。言い換えれば、来春の統一地方選大阪維新が敗北すれば、「知事を辞任する」ということだ。

そうなると、かねがね「松井氏と運命を共にする」と言明している橋下氏も「市長を辞任する」公算が大きくなる。しかし橋下氏は松井氏ほど単純ではないので、統一地方選にダブル首長選を仕掛けて「トリプル選」に持ち込むことも考えられる。「大阪冬の陣」が終わっても、すぐに「大阪春の陣」が始まるかもしれないということだ。とはいえ結局のところ、大阪維新は、「ワン」(総選挙での惨敗)、「ツー」(次期統一地方選での大敗)、「スリー」(次期ダブル首長選での敗北)の3連打(ワン・ツー・スリーパンチ)を浴びて消滅する運命から逃れられないだろう。これがこの2日間で達した私の結論である。(つづく)