大阪維新の会の統一地方選と大阪都構想住民投票への取組みが活発化している、橋下維新の策略と手法(その1)

 阪神・淡路シリーズが終わってから暫くしてブログを再開するつもりだったのが、思わぬアクシデント(個人的なこと)に足を取られて今日まで延び延びになってしまった。しかし、その間の政治の流れは恐ろしく速い。安倍政権は止まるところを知らない勢いで、自衛隊の海外派兵を可能にする安保法制の具体化に突進している。

安保法制をめぐる与党協議はまるで「空中戦(ショー)」のような様相を呈している。例によって、安倍政権は高飛車に公明党に圧力をかけ、公明党は慎重な振りをして(小さな)異論を唱える。すると安倍政権は若干の譲歩をして着地点を探る。こんなパフォーマンスを小刻みに繰り返しながら、両党は最終的には予定された場所に着地し、自衛隊の海外派兵を「いつでもどこでも」可能にする恒久法作成に同意すると言う算段だ。

国民が自民・公明の「空中ショー」に気を取られている隙に、与党間(高村・北側ライン)では安保法制協議が着々と進められている。こちらの方はゲリラ部隊の「地下活動」よろしく国会の真下にまで秘密通路を掘り進め、国会が開いた途端、一気に安保法制化の議論に攻勢をかけて憲法爆破作戦を決行するつもりなのだろう。マスメディアもいつまでも公明党の「慎重姿勢」や「異論」に頁を割くのではなく、もっとリアルに公明党の役割をあぶりだしてほしい。

ところで、大阪では統一地方選大阪都構想住民投票をめぐる「地上戦」がすでに始まっている。過日、研究会への途上、京阪寝屋川駅前で大阪維新の会の街頭演説に遭遇したので少しばかり様子を見ていた。大阪都構想住民投票大阪市民に限られるので寝屋川市民には関係ない。それがなぜ寝屋川市で街頭演説するのかと思って聞いていたところ、統一地方選に負けるようなことがあれば、その直後に行われる住民投票が「パーになる」とのことで、まずは統一地方選の取組みに全力を挙げるとのことだった。

私がこの動きに油断がならないと感じたのは、集まっていた聴衆の数と雰囲気が堺市長選のときとは全く別物だったからだ。堺市長選のときはとにかく「反橋下」「反維新」の空気が強かった。秋口で寒かったこともあるが、街頭演説でも冷たい視線が候補者や橋下氏に注がれていて拍手もまばらだった。演説する方も痛いほどこの冷たい空気を感じていたらしく、演説のトーンが見る見るうちに下がっていくのがよくわかった。

ところが寝屋川駅前の雰囲気は全く違った。この日は2月後半の冬日ではあったが小春日和の上天気で暖かく、正午から始まった維新の街頭演説には数百人に上る聴衆が集まっていたのである。一見すると、公明党支持者(創価学会員)の集まりのような中高年女性の姿が多く、若者や勤め人らしい姿はほとんど見かけなかった。平日のお昼なら仕事のある人はまず出てこない。しかし、この日は土曜日で休日だった。休日には郊外から大阪都心への乗降客も多い寝屋川駅なのにどうして中高年の女性だけが目立つのか、これが最初に感じた疑問だった。

演説の内容は、議会・議員攻撃が中心だった。議員の数が多すぎる、議員報酬が高すぎる、その上にまだ報酬の値上げをするのはけしからんなど、僅かばかりの年金で四苦八苦している庶民の感情に訴えることが重点だったらしい。そしてその後に必ず持ち出すのが、大阪都構想が実現すれば大阪市議会が無くなって議員の数を減らせる、特別区議会の議員数は少ないので経費を減らせる、二重行政の弊害がなくせるので経費が浮くなどの例の宣伝文句であり、そこで聴衆の拍手が沸くのだから恐ろしい。この論法に従えは、議会も議員も要らない、首長独裁が一番安くつくといったことになりかねないが、しかし聴衆の多くはそこまでは深く考えていないのだろう。

私が注目したのは、橋下・松井両氏が公明党のことをどう言うかということだった。この点、松井氏は公明党のことには一言も触れなかった。橋下氏は政党名を出して批判する時は自民・公明・民主・共産の順番で必ず4党の名前を挙げ、特定政党の攻撃に的を絞らなかった。これがどういう策略にもとづいているのか現時点では判断できないが、少なくとも「公明党攻撃をライフワークにする」と言っていた時点から方針転換したことだけは確かだ。何しろ公明党は橋下氏にとっては「命の恩人」であり、公明党の寝返り(裏切り)が無ければ大阪都構想住民投票もなく、したがって維新が統一地方選を戦う大義もなかったからである。

これは考えすぎかもしれないが、この日の寝屋川駅前の聴衆はこれまで私が見てきた維新支持者とは明らかに雰囲気が違った。確かに橋下氏には根強い人気があり、それは大阪人の気質に合っているからとの解釈も成り立つが、もしそうであれば聴衆がこれほど中高年の女性に偏ることはない。まして維新が寝屋川にさしたる政治基盤があるわけでもないのだから、橋下人気だけでこれだけの人数が集まるとも思えない。やはり誰か(ひょっとすると公明党あたりが)が動員をかけたとしか思えない顔ぶれなのだ。

目下のところ、公明党は(寝返り前に)自民党と結んだ選挙協力関係をまだ破棄するに至っていない。そうだとすれば、統一地方選公明党が維新を(公然と)支持することはあり得ない。しかし昨年の総選挙においては、大阪泉南地域の公明党が立候補していない選挙区では、橋下・松井両氏の不出馬と引き換えに大量の公明票が維新に流され、それが維新候補の当選につながったとの分析もある。これと同じことが起こらないとは、公明党選挙協力を結んでいるはずの自民党さえ誰一人信じていない。今回の統一地方選大阪都構想住民投票をめぐる分析の鍵は維新と公明の「狐と狸の化かしあい」の解明にある。(つづく)