再び問う、公明党は本気で都構想反対の住民投票に取り組むのか、創価学会は都構想成立の場合にどう責任をとるのか、大阪府議選・市議選から都構想住民投票へ(5)、橋下維新の策略と手法を考える(その23)

 「八尾・吹田・寝屋川の3市長選における維新候補の敗北で都構想住民投票の潮目が変わった」との私の観測に対して、その後、各方面から「楽観的過ぎる」との疑義が寄せられている。日ごろから定期的に情報交換している大阪市関係者からも、「反対派の姿が見えない」、「反対派の主張が弱い」、「どう考えても市民にとっては失うもの(お金、資産、権限・・・)が多いのに、橋下市長の人気と都構想という名称に引きずられている」、「このままだと確実に賛成が優勢になると思う」、「反対やよくわからない人は投票に行かない率が高いので、互角では勝ち目がない」といった危機感溢れるメールが送られてきた。

 また昨日あたりの各紙記事を見ても、都構想反対派が優勢だとはどこにも書かかれていない。むしろこのままでは、大阪市関係者が言うように反対派が不利な状況に立たされているとの見方のほうが多い。主な理由は、住民投票に関する事前予測で「賛成が反対を上回る」との情報が流れていること、創価学会票がどちらに転ぶか分からないことの2つである。

 私自身は、4月12日投開票日の朝日出口調査を参考にして「賛成派」「反対派」の割合を推計した。その結果、「ハードな賛成派」(維新支持・都構想賛成)32・2%、「ソフトな賛成派」(非維新・都構想賛成)14・8%、「ソフトな反対派」(維新支持・都構想反対)1・8%、「ハードな反対派」(非維新・都構想反対)43・4%となって、賛成派47・0%が反対派45・2%をやや上回り、非維新でありながら都構想に賛成する層を如何に説得するかが勝敗のカギになると分析した。

 4月28日付けの毎日新聞でも、「実は、自民大阪府連の独自試算では、賛成が反対を上回っている結果が出た。大阪市議選の新聞各社の出口調査で、都構想の賛否は拮抗。維新に投票した人の約9割が『都構想賛成』と回答したのに対し、自民、公明に投票した人の2割弱〜3割強も賛成と答え、反対派は一枚岩とは言えないのが実情だ」とある。

また毎日は、首相官邸自民党本部が自民大阪府連を尻目に静観を保つことで、「結果的に維新を『側面支援』することになりそうだ」との観測を伝え、根拠は示さないものの、「党本部側では住民投票は可決されるとの見方が強く、早くも住民投票後を見越した想定を始めている」との注目すべき動きを伝えている。自民党本部がどのような資料をもとに「住民投票可決」を判断したのか分からないが、彼らがそれなりの情報を握っているのであれば警戒しなければならない。

もうひとつの不安材料である創価学会票の行方についてはどうか。この点については、各紙も日替わりで論調が変わる。それほど公明党創価学会の立ち位置は互いに微妙なのだ。たとえば4月28日の毎日は、「支持母体の創価学会が自主投票を決めていることもあり、公明党は積極的に街頭活動はしない方針。しかし、この日は府本部(西区)で小笹正博・市議団長が『反対』を明言した。『大阪市廃止・特別区設置に反対です』と書かれたポスターを背景に、『大阪市の廃止は市民にとって決して良くないと訴えたい』と述べた。市議団幹部も『ゴングは鳴った。とことん行く』と意気込んだ。近く24区全てで党支部の会合を開き、市内で約1万人いる党員に働きかける」とある。これだけ読めば、読者は公明党がもはや迷うことなく住民投票反対の線で突っ走ると思うだろう。

ところが翌4月29日付の朝日新聞になると、今度はまるで逆の観測記事が出てくるのだから読者は混乱せざるを得ない。公明党は確かに反対運動を始めたーー、ここまでは毎日新聞と同じだ。しかし朝日は引き続いて、(公明)府本部幹部が「党だけでどこまでのことをできるのか・・・・」と心配していることを伝え、その根拠に今月18日に開かれた公明府本部幹部と創価学会関西組織執行部との会議模様を挙げる。それは学会からの「学会組織は党の反対運動に関与しない」、「党籍がある学会員を除き反対運動に巻き込まない」、「議員が反都構想の街頭演説をしない」、「他党の反対集会への出席を控える」とのお達しである。この「きついお達し」を忠実に守れば反対運動はほとんど出来なくなる。

4月18日の会議と言えば、府議選・市議選の投開票日からまだ1週間も経っていない。周知のごとく、公明は都構想への変節によって世論の厳しい批判を受け、多くの候補者は苦境に立っていた。公明新聞は連日特大見出しで「常勝関西」の危機を伝え、学会は全国(東京)から3万人もの学会員を派遣してなり振り構わず票の掘り起こしに狂奔した。しかし、それでも票が伸びないほど批判が強いので、府本部が最後にとった非常手段は、各候補者が封印していた「都構想反対」を前面に出して訴えることだった。

こうして辛うじて、公明は府議、市議(1人落選)の当選を確保したのだが、その余波も収まらないうちに、今度は学会が「住民投票で都構想反対運動は罷りならぬ」との指示(命令)を出すのだから心底恐れ入る。これでは、学会にとっては選挙公約など選挙に通るための「単なる方便」にすぎず、通ってしまえば(つい1週間前の)公約ですら「破棄しても構わない」と言っているに等しい。学会と公明党本部は首相官邸の働きかけで大阪府本部の方針を覆したばかりか、統一地方選での「都構想反対」の公約を府本部に破棄させることで、大阪府民・市民を二重三重に騙せるとでも思っているらしい。事実とすれば、創価学会は「壮大な詐欺集団!」にほかならない。

なぜ学会側がこんな無理難題を言うのだろうか。それは学会が公明党府本部に住民投票実施への協力を指示(命令)した趣旨と同じ線上に立っているからだ。朝日新聞はこの点を、「学会側には、橋下徹大阪市長大阪維新の会代表)との関係を修復したい思惑がある。学会関西組織の関係者は、『軍勢を動かさない』という創価学会の方針は、橋下さんに塩を送ることになるだろう」と話したことを伝えている。その上で「大阪市内の学会組織票は『15万票程度』(幹部)とされ、その動向は住民投票を左右しかねない。ある維新議員は『最後は結局、学会票で決まる。賛成に入れなくてもいいから、できればおとなしく寝ていて欲しい』と漏らす」と締め括っている。

この記事を要約すればこうだ。創価学会および公明党本部の真の意図は、5月の安保法制国会を控えて改憲勢力の一翼としての維新を利用したい首相官邸の指示に従い、橋下氏を都構想住民投票で「側面支援」して関係修復したいと考えている。ただ公明党大阪府本部に対しては、直前の統一地方選で「都構想反対」を叫んだ事情もあり、表向き反対を唱えることは認めるが、しかし学会員も含めて反対運動に組織的に参加することは都構想が否決される可能性があるので、学会員は参加させない(ただし党籍のある学会員は除く)よう指示するというものだ。

公明党の実態を少しでも知る人なら、こんな詭弁が通用しないことは百も承知だろう。なぜなら、「公明党創価学会=ゼロ」だからである。先の統一地方選でも学会員を全国的に動員しなければ、「関西常勝」は夢のまた夢だった。学会の支えがない公明党など「抜け殻」にすぎず、立っていることさえままならないことは誰もが知っている。だから「学会抜きの住民投票運動」を指示することは、維新関係者が言うごとく「寝ていろ」と命令するに等しい。

だがしかし、創価学会公明党本部の詭弁と謀略は、大阪府本部や学会組織に激しい混乱を引き起こさずにはおかないだろう。現に「府議選・市議選の後に開かれた学会関西組織の地区幹部会合では、婦人部の幹部を中心に『反対運動しないと現場は収まらない』との異論が相次いだ」(朝日、同上)ことが伝えられている。だがそれ以上に私が指摘したいことは、もし学会と公明の裏切りによって都構想住民投票で賛成が反対を上回り都構想が成立すれば、その段階でいったいどのような事態が待っているかと言うことだ。

おそらく大阪市の解体と特別区への移行段階で空前の混乱が引き起こされて市政は無秩序状態に陥り、市民の批判は「主犯」である橋下市長に対してはもとより「共犯」としての学会と公明に向けられることは避けがたい(必至だ)。折りしも国会では自公与党と維新の連携で集団的自衛権の行使を軸とする安保法制審議が始まり、「平和の党」から「戦争の党」に変身した公明の赤裸々な姿が国民の目の前に曝されるだろう。同時並行的に大阪では、都構想に「側面支援」した学会と公明の醜い姿が市民の前で明らかになるだろう。この国会と大阪府議会・市議会での一連の騒動が共鳴して、学会と公明の「政教一体」の弊害が国民の前に鮮明に映し出され、学会と公明は一挙に崩壊過程に向かうことになるかもしれない。(つづく)