公明党は住民投票で大阪都構想に本当に反対するのか、関西創価学会はすでに「自主投票」の方針を決めている、橋下維新の策略と手法(その2)

 公明党大阪都構想について180度態度を変えたとき、「住民投票を実施することには賛成するが、大阪都構想には反対する」との訳のわからないことを言っていた。いまさら論理矛盾を詮索しても始まらないので、その言い分をそのまま受け入れるとすると、結論は「住民投票大阪都構想に反対する」ということになる。本当にそうなのか。

 こんな疑問を拭いきれないところへ、関西創価学会大阪都構想の是非を問う住民投票で「自主投票」の方針を決めたというニュースが入ってきた。昨年末に住民投票の実施を容認する方針に転じてからまだ日も浅い今年1月27日のことだ。この決定は極めて重大な意味を持つので、比較的詳しく伝えた朝日・毎日両紙の記事を紹介しよう。朝日は次のように言う(1月27日)。

 「5月17日に実施される見通しの大阪都構想の是非を問う住民投票について、公明党の支持母体の創価学会が自主投票の方針を決めた。26日の幹部会合で、関西組織のトップが表明。公明党大阪本部にも伝えられた。公明党住民投票の実施を容認したが、都構想の中身には反対の姿勢。党が進めようとする反対運動に影響しそうだ」
 「創価学会の幹部会合は26日に大阪市内で開かれた。学会関係者によると、4月の統一地方選で実施される大阪府議選、市議選で公明党候補者を当選させるには、自民党支持者ら保守層の取り込みが不可欠と分析。保守層の中にも都構想賛成の有権者が少なくないことなどから、自主投票の方針を決めたという」
 「学会幹部は同日、公明党府本部の幹部を呼び、『住民投票の判断は市民に委ねられている』という趣旨の指摘をし、学会員らに都構想への反対姿勢を強調しすぎないよう求めたという。学会の関西組織は強固な組織力を誇り、『大阪市内で15万票程度の組織票がある』(幹部)とされる。住民投票有権者は約215万人」

 ここで確認されることは、(1)関西創価学会の幹部会合が(学会本部の指示にもとづき)大阪都構想の是非を問う住民投票に対して学会員の「自主投票」(賛否を投票者に委ねる)の方針を決定したこと、(2)学会決定を公明党府本部に伝え、学会員らに都構想への反対姿勢を強調しすぎないよう求めたこと、(3)「自主投票」の方針を決めた理由は、統一地方選公明党候補を当選させるためには、都構想賛成の有権者が少なくない自民党支持者ら保守層の取り込みが不可欠であると判断したこと、の3点である。

 毎日(1月27日)もほぼ同様の趣旨を伝えている。
大阪市を解体・再編する大阪都構想の是非を問う住民投票で、関西創価学会が、自主投票とする方針を公明党府本部に伝えていたことが26日、分かった。創価学会公明党の支持母体。公明は『市民生活に重大な悪影響が出る』として、住民投票で都構想に反対する姿勢だが、党の活動に影響を与える可能性がある」
「複数の関係者によると、26日に大阪市内であった関西創価学会公明党府本部幹部との会合で、方針が伝えられた。創価学会関係者は毎日新聞の取材に、自主投票の方針を公明党本部に伝えたことを認め、『過去の自治体の住民投票でも、創価学会は原則、自主投票としている。都構想に賛成、反対という議論に巻き込まれると、住民のためにならない』と説明した。都構想の是非は民意に委ね、4月の統一地方選で幅広い支持を得ることに全力を注ぐという(以下、略)」 

 事実経過は朝日とほぼ同じだが、取材先が異なるのか「自主投票」になった説明として、(1)過去の自治体の住民投票でも創価学会は原則、自主投票としている、(2)都構想に賛成、反対という議論に巻き込まれる、住民のためにならない、(3)都構想の是非は民意に委ね、4月の統一地方選で幅広い支持を得ることに全力を注ぐ、を挙げている点が若干異なっている。

 朝日・毎日両紙の記事から窺える事態は、議会民主主義を基底とする地方自治制度が1宗教団体の介入によって乱暴にも破壊されつつあるという事実であろう。これはなによりも、1宗教団体にすぎない創価学会が「公党」である公明党の政治方針を事実上決定し、それに従うように指示(命令)していることにあらわれている。この事態は公明党住民投票の実施についての態度を180度変えたときと全く同じ構造であり、選挙の審判を受けない宗教団体が公党の政治方針に介入して自らの意思に従わせるもので、政教分離を原則とする憲法違反そのものだといわなければならない。

 第2は、「自主投票」にした理由として、一方では「保守層を取り込むため」といいながら、他方では「賛否の議論に巻き込まれると住民のためにはならない」というなど、その場凌ぎのご都合主義に徹していることだ。その時々の都合によってころころ言い分を変えるのが彼らの常套手段だとはいえ、これほど露骨な言い回しになると聞くに堪えなくなる。

 第3は、大阪都構想の是非を「民意に委ねる」といいながら、結局のところ創価学会のホンネは、公明党が学会員らに都構想への反対姿勢を強調しすぎないように牽制し、大阪都構想住民投票を成立させる「別働隊」としての役割を果たすことにある。首相官邸創価学会本部のホットラインの指示にもとづき、維新を改憲勢力の一翼として活用するため、大阪都構想住民投票を成功させることが政治日程に上ってきたからだ。

 だが、こんなオーソドックスな政治分析でなくても、非常に分かりやすい記事がある。産経新聞1月30日のごく小さなベタ記事だ。これまで自民党や他の野党各派とともに橋下市長を批判する急先鋒だった待場公明党大阪市議団(前)幹事長が、4月の市議選に出馬せず引退を決めたとある。理由は「体調不良」だということらしいが、本当のところは「降ろされた」のではないか。すでに創価学会住民投票対策は始まっている。(つづく)