民進党は野党共闘に本気なのか、衆院東京10区補選の様子では、蓮舫・野田執行部は「食い逃げ」戦略を描いているような気がする、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その18)

 10月11日告示、23日投開票の衆院補選が東京10区と福岡6区で始まった。両選挙区ではいずれも野党共闘が成立して民進党候補に一本化されたが、内情は複雑で選挙運動がいっこうに盛り上がらないらしい。東京10区に関して言えば、与党側も内幕は複雑だ。自民党候補は小池知事肝いりの候補なので、表向きは自民党推薦だが都議会議員連中の多くはそっぽ向いているのだという。だが、もっと複雑なのは野党共闘の方だ。

 これは信頼できる東京の友人からの情報だが、民進党自体はともかく、選挙協力している(はずの)他の野党関係者や支持者の方には選挙らしい雰囲気がほとんど見られないのだそうだ。幹部は一応選挙協力の建前を崩していないが、党員や支持者は白け切っているというのである。まるで今年4月に行われた衆院京都3区補選のようではないか。

 衆院京都3区補選では、民進党京都府連が「いずれの選挙においても共産党と共闘しない」と大会決議までした野党共闘を拒否した。なのに、いずれの野党も候補擁立を見送り、「自主投票」という形で民進党候補に選挙協力した。大義のない「野党共闘」に大半の有権者がそっぽ向き、投票率は記録的な低さとなった。選挙中も選挙後もだらしない野党幹部に対して厳しい批判が沸き起こった。

 今回の東京10区補選では一応「野党共闘」が成立したことになっている。しかし民進党候補の推薦は地域政党だけで、他の国政政党はどこも推薦していない。野田民進党幹事長が「他の野党の推薦は受けない」と断ったからだ。推薦を受けないのだから政策協定を結ぶ必要もない。それでいて選挙協力(だけ)はしてくれというのだから、誰が見ても「虫のいい話」ではないか。

 こんな野田幹事長の態度に対して、他の野党から批判が起ったのは当然というべきだろう。小池共産党書記局長は「こんな選挙協力は今回の補選だけだ」と言ったというが、無原則も甚だしい。民進党が推薦を拒否するのであれば、せめても「自主投票」にするのが筋というものだろう。それとも補選で選挙協力すれば、衆院選では本格的な野党共闘をするという下約束でもあるのだろうか。

 11日の告示日当日の選挙風景を伝えた朝日新聞記事がリアルで実に面白い。
――「選挙の顔」として民進党代表に選ばれた蓮舫氏は、11分の演説のうち、補選に関する言及はわずかで、野党共闘には一言も触れなかった。
――共闘で合意した共産、社民、生活の3党の幹部の姿はなかった。
――民進は3党からの推薦を拒否。社民が申し出たが、「社民の推薦を受ければ、共産の推薦も受けなければならなくなる」(幹部)との理由で断った。党内では参院選以上に衆院選での共産との共闘には抵抗感が強い。
――蓮舫氏は党会合で野党候補の一本化に言及したものの、野田佳彦幹事長は10日、「過半数を狙えるという候補者を立てる」と単独過半数の目標を掲げた。あくまで党独自候補にこだわり、3党が候補者を降ろして支援してくれるのならいいという姿勢だ。

 野田幹事長の姿勢は民進党京都府連の態度に限りなく近い。「いずれの選挙においても共産党と共闘しない」とする京都府連と「野党共闘の約束は守る」とした蓮舫代表の言葉は決定的に違うとの見方もあるが、野田幹事長の「他党の推薦は受けない」「民進党単独過半数を狙う」といった態度は野党共闘の精神からはほど遠い。東京10区補選において野田幹事長がとった態度は「今回限り」ではなく、衆院選での「前触れ」と見るのが自然ではないのだろうか。

私は、蓮舫・野田執行部は「食い逃げ」戦略を描いているのではないかと疑っている。衆院選では東京10区補選の手法をそのまま踏襲して(できるところは)民進党候補に選挙協力をとりつけ、議員数を一定数増やせればさっさと野党共闘を解消するという戦略だ。「騙まし討ち」戦略だと言ってもいいが、案外それを否定できないところに野田幹事長の真骨頂がある。

いずれにしても衆院補選の結果はすぐにあらわれる。私は誰が勝った、誰が負けたという選挙結果よりも投票率と得票数に注目する。「大義のない選挙」の行方を確かめるためである。(つづく)