民進主導で野党支持層・無党派層から総スカンを食った衆院両補選、東京でも福岡でも過去最低の投票率となった、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その20)

10月23日投開票の衆院両補選は、告示直前に共産が候補を取り下げる形で野党共闘が成立したにもかかわらず過去最低の投票率となり(東京10区35%、福岡6区45%)、いずれも与党候補が圧勝し、野党候補は完敗した。東京10区の投票率などは過去最低だった2014年衆院選と比べてなお19ポイントも落ち込み、有権者が一斉にそっぽ向いた形になった。私はたまたま投票日直前の週末に東京にいて選挙風景を垣間見たが、共産、社民、自由の合同街頭演説会には民進幹部はおろか肝心の民進候補者も姿を見せなかった。テレビの政見放送でも野党候補は「民進」の連呼ばかりで、野党共闘の「や」の字も言わなかった。これでは野党共闘も何もあったものではないだろう。

衆院2補選とりわけ東京10区の野党候補(民進公認候補)の完敗は、3つの意味で蓮舫・野田執行部にとっては大きな痛手となった。第1は、「民進主導=いいとこ取り作戦」の共闘路線が早くも破たんしたということだ。実際、蓮舫・野田執行部が東京でとった態度は手前勝手極まりないものだ。共産に候補者を降ろさせて野党候補を一本化する。しかし、一本化した野党候補(民進公認候補)への各党からの推薦は断る。また、新たな政策協定も結ばない。これでいて選対事務局長の民進都議が「推薦もなく政策協定も結んでいない。新しい形の共闘だ」と言い切るのだから(朝日10月24日)、野党関係者はもとより野党支持層が白けるのは当然だろう。

第2に、より影響が大きいと思われるのが、参院東京選挙区選出の蓮舫氏のおひざ元・東京で蓮舫氏が「選挙の顔」として通用しなかったことだ。民進内には蓮舫氏の地元・東京での今回補選を「無党派層への浸透を占う試金石」と期待する向きもあったというが、選挙結果を見て「蓮舫氏の街頭演説に頼る選挙では勝てない」との指摘が党幹部から出ているのだという(日経10月24日)。蓮舫氏の最大のトレードマークである「選挙の顔」が東京でさえ通用しないとなると、民進は根本から選挙戦略の再検討を迫られることになる。

第3に、新潟県知事選で民進原発再稼働問題に対する態度を保留したように、「対決よりも提案」を重視する蓮舫・野田執行部は見るべき政策を打ち出せないことが明らかになったことだ。この点については各紙が以下のように異口同音に批判している。
民進党は年金や教育問題を訴え、アベノミクス路線を弱者切り捨てなどと批判して差別化を図ろうとしたが、浸透しなかった。無党派層を引き寄せる分かりやすい争点があると野党共闘が力を帯びるが、訴求力のある政策課題がない選挙では途端に力を発揮できない野党共闘の弱さが浮き彫りになった(毎日社説10月24日)。
―1週間前、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働が大きな争点となった新潟県知事選が有力な手がかりになる。民進党の自主投票にもかかわらず、共産、社民、自由の3野党が推す候補が、自民、公明の推薦する候補を破った。民意をくみ取り、明確な政策として提示できれば、有権者を動かすことができる。新潟県知事選の結果はそのことを教えている(朝日社説、同)。
衆院の2つの補欠選挙が投開票され、いずれも自民党が推した候補が大勝した。目立った争点がなく、安倍内閣の高い支持率がそのまま票差に出た。野党は無党派層を引き付けなくては勝機がないのにもかかわらず、さしたる工夫もなく惨敗に甘んじた。(略)2知事選(鹿児島、新潟)とも原子力発電の是非が争点だった。有権者の多くは安倍政権について「民主党政権よりまし」とみているにすぎず、全てを任せる白紙委任型の支持ではないことをうかがわせる。(略)衆院解散近しとの憶測も飛び交う中で、何をいちばんの争点にして安倍政権と対峙していくのかがよくみえない(日経社説、同)。

2つの野党共闘の選挙結果が示すものは、「民進抜き」の新潟県知事選では勝利し、「民進主導」の衆院補選では惨敗したという冷厳な事実だ。同時にこの結果は、今後の野党共闘の行方を占ううえでも重要な視点を提起している。すなわち「民進主導」では野党共闘は不発に終わり、平等互恵の野党関係でなければ政策づくりも市民共同の選挙運動も進まないということだ。民進には根本からの反省が求められるが、それが簡単でないことは蓮舫・野田執行部の体質を見ればよく分かる。

今回の衆院補選では表向き野党共闘が成立したことになっているが、その実態は選挙結果が示す通りでほとんど中身がない。こんな「野党共闘」が次期衆院選でも繰り返されるようなことがあれば、批判は民進だけではなく他の3野党にも撥ね返るだろう。「野党共闘ありき」ではなく、「ホンモノの野党共闘」を追求しなければ政党政治は国民から見捨てられるに違いない。(つづく)