新潟県知事選で大失態を演じた蓮舫・野田民進執行部、野党共闘は「野田抜き」でなければ進まないだろう、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その19)

 2016年10月16投開票の新潟県知事選で、原発再稼働に反対する知事が鹿児島県に次いで誕生した。特筆されるのは、民進が与党候補を支援する連合新潟(電力総連)の意向を受けて野党共闘から脱落し、「自主投票」を決定したにもかかわらず、野党候補が「野田抜き」「民進抜き」で勝利したことだ。しかも投票率は53%と過半数を上回り(前回44%の9ポイント増)、得票数も52.8万票 vs 46.5万票と6万票を上回る大差がついた。「保守の牙城」と言われる新潟県の知事選で、「野田抜き」「民進抜き」の野党候補が与党挙げての総力戦に打ち勝ったのだから、その影響は極めて大きいと言わなければならない。

野田氏はもともと民主党政権時代に原発再稼働を容認した元首相であり、新潟県知事選では原発再稼働派の与党候補の応援に入ってもおかしくなかった人物だ。だが、さすがに民進幹事長の立場上表に出ることが憚られたのか、民進執行部としては「洞が峠」を決め込んで原発再稼働派に事実上のエールを送り、野田氏は最後まで新潟入りしなかった。

ところが執行部反主流・非主流の民進国会議員が続々と野党候補の応援に入るに及んで、漸く「これは拙い」(党内の力関係上)とでも思ったのか、投票日直前になって蓮舫代表や江田代行が急きょ新潟入りを決めた。理由は「執行部が関与しないままでは、米山氏が勝っても蓮舫執行部の勝ちにはならない。負ければ、『7月の参院選で勝利した野党共闘を壊した戦犯』と、どちらにしろ党内外の批判にさらされるため」だ(朝日10月15日)。

 蓮舫氏の態度は定見がないことおびただしく、その右往左往する有様はもはや見苦しさを通り越して哀れみさえ覚える。先月29日の記者会見では「(新潟県知事選は)政党間の戦いに持ち込むよりは県民の投票行動を見守りたい」と早々に言明し、民進党は選挙に関わらないと態度表明していた。今月13日の記者会見でも「新潟県知事選応援は未定」と答えている(毎日10月15日)。これは事実上の「不戦敗宣言」だとみていいだろう。

おそらくこれが、蓮舫氏のいう「対決から提案へ」の政治姿勢なのだろう。自公与党幹部が国政選挙並みの布陣で県知事選に臨んできているとき、「政党間の戦いにしない」すなわち「対決しない」というのだから、これは「野党」というよりは「与党」の立場に近い。蓮舫氏の「対決から提案へ」のスローガンは「対決しない」ことに重点があり、「提案」は単なるお添え物にすぎない。国会論戦でも蓮舫氏の質問は安倍首相に軽くいなされ、対決しない質問の無意味さが顕わになった。マスメディアでも「手応えなき提案路線」「蓮舫体制 焦りと不満」と評される有様だ(日経10月16日)。

こんな日に日に褪せていく代表就任「ご祝儀ムード」に危機感を持ったのか、蓮舫氏は前言を翻して「選挙の顔」として現地入りした。野田氏は周囲に「(蓮舫氏が)行くと言っても止める」と語っていたらしいが(毎日10月15日)、それでも蓮舫氏が街頭に立ったところをみると、自らの立ち位置に相当な不安を覚えているのだろう。しかし、それでも蓮舫・野田執行部の原発再稼働問題に対する態度は変わらない。

時事通信(10月17日)によれば、新潟県知事選の勝利を受け、野党側は次期衆院選でも原発政策を重要争点に掲げていく動きを強めている。小池共産書記局長は、「野党間の基本的な政策合意の中に原発問題もしっかり入れていくことを追求したい」と17日の記者会見で語り、野党共闘の柱に原発再稼働問題を位置づけることを表明した。共産、自由、社民3野党は原発再稼働に反対の立場であり、今回の知事選を踏まえて再稼働を進める安倍政権と明確な違いを打ち出せば、衆院選でも原発推進に慎重な民意を広く取り込めると考えている。ただ、民進は支持団体の連合傘下に電力総連があるため、条件付きで再稼働を容認している。蓮舫代表は17日、記者団に対し「われわれの考えが大きく変わるものではない」と表明し、早速3野党の動きを牽制した。

しかし、10月14〜16日の間に行われた朝日、日経、読売、共同通信各社の世論調査によると、衆院補選の東京10区、福岡6区ではともに「野党統一候補」は苦戦している模様だ(各紙10月17日)。「野田抜き」の新潟県知事選では勝利し、「民進主導」の衆院補選では敗北するとなると、蓮舫・野田執行部の存在意義はなくなり、今後急速に民進執行部の求心力の低下は避けられない。すでに党内では、「今の執行部は長く持たない」とする声が高まり、反主流・非主流派の動きが始まっているという(日経10月16日)。(つづく)