安倍首相の御用達新聞、読売新聞の内閣支持率世論調査(2017年6月19日発表)を検証する、政策よりも人格で否定された安倍政権の末路、国民世論は「脱安倍」へと着実に向かい始めた(35)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その66)

 安倍内閣の支持率が一斉に下がった。新聞各社の2017年6月世論調査によれば、内閣支持率は読売49%、日経49%、朝日41%、毎日36%と軒並み急落した。だが、読売・日経と朝日・毎日とでなぜこれほどの違い(差)が出るかについては、誰しもが不思議に思うだろう。理由は簡単だ。一般的に言えば、調査結果は調査手法によって大きく変動するので、読売・日経はより高い支持率が出るような調査手法が採用されており、朝日・毎日はそうでないだけの話なのである。

読売・日経は、まず「支持」「不支持」の二択で回答を求め、次に「言えない、わからない」と回答した人に対しては、さらに「どちらかといえば(お気持ちに近い方は)」と「重ね聞き」をして支持・不支持の回答を促す調査手法を採っている。日経はホームページでこのことをキチンと説明して公表しているが、読売にはそれらしき説明がないので読者室に電話で尋ねたところ、「重ね聞き」については否定しなかったのでそう解釈することにした。

「重ね聞き」の特徴は、1回目の回答と重ね聞きの回答の両方を足して支持率、不支持率を算出するので、重ね聞きをしなかった場合(1回目だけ)に比べて数字が増える仕組みになっていることだ。「支持」「不支持」とも増えるので結果は一見同じように思われるが、通常は「支持」が「不支持」を上回っている場合が多いので、支持率の伸びが大きくなるのである。

この調査手法の最大の問題は、1回目の明確な支持・不支持(これを「確かな支持・不支持」という)と2回目の重ね聞きの支持・不支持(これを「なんとなく支持・不支持」という)が等しい重みで足し算されてしまうことだ。普通、「確かな支持・不支持」を1とすれば、「なんとなく支持・不支持」はその半分程度の重みしかもたない。「なんとなく弱い支持・不支持」2人分で1人分と数えるのであればまだしも、両者を量的に等しくカウントするとになると、これは明らかに「水増し統計」になる。事実、今回も読売・日経の内閣支持率は朝日・毎日に比べて一段と高かった。読売・日経が調査手法を変えないのであれば、1回目と重ね聞きの内訳を記事の中で明確に区分し、読者を「誤解」させたり「誘導」(印象操作)したりしないようにしなければならない。

「重ね聞き」をしない朝日・毎日の調査手法の違いについても注意する必要がある。朝日は「支持」「不支持」の二択回答であるのに対して、毎日は「支持」「不支持」「関心がない」の三択回答であるため、毎日の場合は無関心層や曖昧層の回答が「関心がない」に集約され、支持・不支持が一層明確になるように設計されている。いわば、1回目の「確かな支持・不支持」をさらにブラッシュアップする工夫が凝らされていると言える。この点、今回の各紙調査は「支持」が「不支持」を上回っているが、毎日だけが「不支持」が「支持」を上回ったことが興味深い。明確な態度表明をした回答者に絞った毎日の調査で、「安倍ノ―」の世論状況が浮かび上がったことの意味は大きい。

 前置きはさておき、今回の拙ブログの本題は各紙の調査手法の違いを分析することではなく、安倍政権を支え続けてきた読売の世論調査においてさえ支持率が今回急落した原因を解明することにある。安倍内閣支持率は、安保法制の強行採決や閣僚の不祥事などによる一時的な支持率低下はあったにしてもその都度回復し、内閣支持率は全体として高止まりをしてきたことが大きな特徴だ。また、今回の支持率49%、不支持率41%という数字は、過去と比較しても決して特異だとは言えない。なのに、いったい何が問題なのか。

 2012年12月の安倍内閣発足以降、読売では2013年1月から2017年6月まで61回の内閣支持率世論調査が行われている。その中で支持率、不支持率の両方が40%台になり、支持・不支持率が拮抗したのは今回を含めて8回(○印)、逆転したのは2回(●印)しかない。結果を念のため列挙して見ると、以下のようになる。
 ○2014年7月2〜3日、支持率48%、不支持率40%、集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定後の世論調査。国会審議を経ずに集団的自衛権の行使容認に踏み切った安倍内閣へ批判集中。前回5月末調査から支持率は9ポイント下落して第2次安倍内閣発足以降初めて5割を切り、不支持率は9ポイント上昇して4割台に乗せた。
 ○2014年11月21〜22日、支持率49%、不支持率42%、衆院解散直後の緊急調査。安倍首相が「消費税10%引き上げ先送り」を理由にして、突如衆院解散したことに対する批判が集中。内閣支持率は11月7〜9日調査から6ポイント下落して5割を切り、不支持率は6ポイント上昇して4割台に達した。
 ○2014年12月24〜25日、支持率49%、不支持率41%、第3次安倍内閣発足後の緊急調査。この時は大半の閣僚が留任したため内閣改造効果が認められず、アベノミクスの不調、原発再稼働への批判などを受けて内閣支持率は横ばいとなった。
〇2015年7月3〜5日、支持率49%、不支持率40%、内閣支持率が5割を切ったのは2014年12月の第3次安倍内閣発足直後(49%)以来2度目。安倍首相に近い自民党若手議員らの6月25日の勉強会で、勉強会の講師を務めた作家の百田尚樹氏が「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない」と発言。大西英男議員らが「マスコミをこらしめるには広告料収入がなくなることが一番だ」と同調するなど、安全保障関連法案をめぐる「報道規制発言」が原因。
 ●2015年7月24〜26日、支持率43%、不支持率49%、安全保障関連法案の衆院強行採決直後の世論調査内閣支持率は、強引な国会運営に対する批判を反映して7月3〜5日調査から6ポイント下落し、2012年12月の第2次安倍内閣発足以降で最低となった。不支持率は9ポイント上昇して最高となり、第2次安倍内閣発足以降、初めて不支持率が支持率を上回った。
 ○2015年8月15〜16日、支持率45%、不支持率45%、参院において安全保障関連法案の審議中の世論調査。同法案に対する反対世論が依然として強く、法案の国会成立に対しても否定的世論が継続。
 ●2015年9月19〜20日、支持率41%、不支持率51%、参院での安全保障関連法の強行採決後の緊急世論調査内閣支持率は8月調査から4ポイント下落し、不支持率は6ポイント上昇した。支持率と不支持率の逆転は7月調査以来2度目、しかもその差は10ポイントと過去最大となった。
 ○2015年10月7〜8日、支持率46%、不支持率45%、第3次安倍改造内閣発足直後の世論調査内閣支持率内閣改造効果の所為か、9月調査から若干回復して支持率と不支持率が拮抗した。
 ○2016年3月4〜6日、支持率49%、不支持率40%、アベノミクスの不調、首相の憲法改正発言などに対する批判が再燃。
 ○2017年6月17〜18日、支持率49%、不支持率41%、共謀罪法案強行採決と「加計疑惑」隠しに対する批判を受けて、2017年5月調査から支持率は12ポイント下落して5割を切り、不支持率は13ポイント上昇して4割台に乗せた。下落幅12ポイントは、2012年12月の第2次安倍内閣発足以降最大。

 読売は、いずれの調査においても内閣を支持する理由(単一回答)、支持しない理由(同)を尋ねている。
 〇「政策に期待できる」「できない」:政権の政策に対する評価
 〇「首相に指導力がある」「ない」:首相のリーダーシップに対する評価
 〇「首相が信頼できる」「できない」:首相の人格に対する評価
 〇「閣僚の顔ぶれがよい」「よくない」:組閣人事に対する評価
 〇「自民党中心の政権だから」:政権政党に対する評価
 〇「これまでの内閣よりよい」「これまでの内閣の方がよい」:内閣に対する相対評価
 〇その他
 〇答えない

 これまでは支持・不支持率ばかり注目してきたが、今回は支持・不支持の理由に注目して分析してみたい。何故なら、今回の世論調査では内閣を支持しない理由のトップが「首相が信頼できない」48%(回答者全体の20%)となり、第2次安倍内閣発足以降で最も高くなったからである。詳細は次回に譲る。(つづく)