民進党代表選が明日9月1日に迫った、野党共闘に否定的な日経世論調査結果(2017年8月25〜27日実施)をどうみる、国民世論は安倍内閣を拒否し始めた(5)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その77)

 日経新聞が8月25〜27日に実施した世論調査では、安倍内閣に関する調査項目に加えて民進党代表選の項目もある。前原氏と枝野氏のどちらが次の代表にふさわしいか、民進党が次期衆院選共産党と共闘すべきかの2問だ。市民共同+野党共闘を推進してきた人たちにとっては予想外の結果となった。私の友人の中にはこのような「信じられない結果」を受けとめられない人もいる。結果を見よう。

 まず、民進党代表にふさわしいのは「前原」41%、「枝野」28%で相当な開きがある。地元京都で前原氏のありのままの姿をつぶさに見てきた私などは、いったい彼のどこが代表にふさわしいのかと思うが、全国的には前原氏の方が(外見上)よく知られているのかもしれない。なにしろ露出度が政治家の評価を決める時代なのだ。

 問題は、次期衆院選共産党と共闘すべきかとの質問に対して、「共闘すべきでない」61%、「共闘すべきだ」23%と意外にも大差がついたことだ。自公支持層であればまだしも、民進党支持層でも共闘否定が5割台、肯定が3割台だったという。野党第1党の民進党支持層が共闘に背を向けているのでは話にならない。せめて半々ぐらいの拮抗状態にならなければ、民進党幹部の姿勢も定まらないのではないか。それにしても民進党がバラバラなのは、かくの如き民進党支持層の多様さの反映かも知れない。

 しかしもっと衝撃的なのは、内閣不支持層でも「共闘すべきでない」53%、「共闘すべき」33%と否定が肯定を大きく上回ったことだ。私など単純系人間には「安倍内閣不支持=野党共闘支持」とばかり思い込んでいたが、全く当てが外れたわけだ。内閣不支持層であっても、それにとって代わる政治勢力として「市民共同+野党共闘」がまだまだ認識されていない...という現実があるのだろう。力不足というほかない。

 私が一番知りたかったのは、無党派層野党共闘に対する評価だった。だが、これは紙面の都合からか記事にされていない。世論調査という以上、結果のつまみ食い的分析ではなく、調査データそのものをきちんと示さなければ世論調査とは言えない。そうでなければ、解説記事の書き方で世論調査結果そのものが誘導操作されることになりかねないからだ。日経新聞はこのことを銘記してほしい。

 とはいえ、今回の民進党代表選では野党共闘否定派の動きばかりが目立っているのが特徴だ。極め付きは、民共共闘にブチ切れたとして若手議員5人が「民進党をたたきなおす!」とする声明文を前原・枝野両陣営に送ったことだろう。産経紙(8月24日)によれば、以下のような内容だ。
民進党の若手衆院議員5人が23日、党代表選に立候補した前原誠司元外相と枝野幸男官房長官に対し、国政選挙での共産党との共闘を断ち切ることなどを求める声明文をまとめ、両陣営に届けた。声明文は「民進党をたたきなおす!」と題され、共産党との関係に加え、党内で憲法改正の議論を深めることや、「改革政党」としての政策を前面に打ち出すことなどを提唱している。村岡敏英小熊慎司重徳和彦井坂信彦大西健介の5氏が名を連ねた。5氏のうち、大西氏を除く4人は旧民主党以外の政党から民進党結成に参加した。声明文には「民進党ができて1年半。残念ながら、国民の目には『看板は変わっても中身は旧民主党のまま』と映っている」という批判の文言も盛り込まれた―

井坂氏と言えば、民進党衆参国会議員が壊滅した兵庫県選挙区での唯一の生き残り議員である。井坂氏自身は若いにもかかわらず数えきれないほどの政党を渡り歩き、つい最近になって維新の会から民進党に移籍したばかりの新参者にすぎない。それがいつの間にか堂々と「共産党とは手を切れ!」と言うまでにのし上がっているのだから、民進党内の政治的力関係が如何に右傾化の度合いを深めているかよくわかるというものだ。

 しかし井坂氏の地元兵庫では、昨年2月に市民共同+野党共闘を推進する「連帯兵庫みなせん」が結成されて以来、現在に至るまですでに十数回の世話人会を重ね、県内各野党との協議も7回を数えるなど、全国でも注目される成果を上げてきた。それがこともあろうに、一挙に壊す暴挙に出たのが今回の井坂氏の行動なのである。そこには政党間で営々と積み上げられてきた努力に対する一片の仁義もなければ、市民団体に対する配慮やリスペクトの欠片もない。まさに「草の根民主主義」を踏みつける暴挙そのものだ。こんな国会議員が「民進党をたたきなおす!」と言うのだから、叩き直された民進党がどんな政党になるかは目に見えている。

 国民の誰もが、野党がバラバラでは自公連立与党に勝ち目がないことは知っている。それでいて「野党共闘ノー」と言うのだから、そこにはもっと複雑な政治状況が横たわっているとみるべきだろう。「民共共闘」するくらいなら自公与党に負けた方がましだ――と考える人たちが結構多いという現実がそこにある。それが民進党代表選にあらわれているのであって、別に前原氏が枝野氏よりも優れているのでもなければ、政策的に勝っているわけでもない。要するに、国民の間に歴史的に刻み込まれてきた反共意識を払拭するためには、何度も野党共闘をバージョンアップしなければならないと言うことだ。共産党が突然変異して野党共闘を唱えても、それが社会の底辺にまで降りていくには相当な時間がかかると言うことだ。今回の野党共闘はその始まりの始めにすぎないのだから。(つづく)