希望の党の失速で前原民進党代表はどうなる(2)、行き場を失った策士には戻る場所もない、国民世論は安倍内閣を拒否し始めた(14)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その86)

選挙戦が中盤に差しかかって希望の党の失速状態がいよいよ顕著になってきた。毎日新聞衆院選中盤情勢分析(10月16日)によれば、「自民堅調」「希望失速」「立憲躍進」の傾向がますます顕わになってきている。自民は単独で300議席を超える可能性があるのに対して、希望の党は公示前の勢力に届かず50議席を下回る恐れがあるというのである。これに比べて、立憲民主党比例代表希望の党を上回って「第2党」となり、小選挙区を合わせると議席は公示前勢力の3倍になって50議席をうかがうとされている。

希望の党の支持率は、選挙公示前には10数パーセントに達していた。このままの勢いだと20%台に乗り、自民議席過半数割れに追い込みかねないとまで言われていたのである。それが公示後は見る見るうちに低下し、今回は自民29%、立憲民主党10%、希望の党9%、公明5%、共産4%、維新3%の順になった。終盤戦にはおそらく数パーセント程度(あるいはそれ以下)に低落するだろう。

毎日新聞の総合調査は、今回の特異な選挙情勢を的確に分析している。それは「自民への追い風がないのに自民が大勝するのはなぜか」という不思議な選挙情勢(政治現象)についての解析である。結論は「自民優勢の背景にあるのは、小選挙区で野党が候補者を一本化できず、分裂しているという『敵失』だ。与野党が『一騎打ち』になるのは56選挙区にとどまり、全289選挙区のうち約8割の選挙区で政権の批判勢力が分散した」というものだ。

毎日新聞はこうも書いている。「自民ベテランは、希望の党小池百合子代表(東京都知事民進党前原誠司代表が野党共闘を崩壊させたことについて『小池さまさま、前原さまさまだ』と語る・・・」。まさに事態の本質を衝く鋭い分析ではないか。この有様を見て、小池・前原両氏は「野党共闘分断」という当初の目的は遂げたものの、心中では「こんなはずではなかった!」と舌をかんでいるに違いない。

私は、選挙後に希望の党が「泡」の如く消えていくのではないかと予測している。「希望が泡の如く消える」という表現はあるが、「希望の党が泡の如く消える」と言うのはいささか早計であるかもしれない。しかし、参院民進党から民進党に残ったままで立憲民主党などとの再結集の動きが出ているところを見ると、希望の党が泡の如く消える可能性は否定できない。

そうなると、前原氏はいったいどうなるのか。前原民進党代表は10月14日、民進党参院議員の一部から、民進党に残ったまま立憲民主党などとの再結集を目指す動きが出ていることについて、「これほど有権者を愚弄(ぐろう)した話はない。絶対にやってはいけない」と述べ、あくまで希望の党への合流を進める考えを示した。「『非自民・非共産』の大きな塊を作ることを代表としてやりたい」とも語り、参院議員や地方組織が、衆院選共産党選挙協力する立憲民主と接近することに警戒感を示したという(読売新聞10月15日)。

民進党を解体して有権者を愚弄したのはいったい誰かなど...ここではこれ以上立ち入らない。だが、前原氏の悲鳴は、希望の党が現在直面している危機状況の深刻さを物語っていることは間違いない。立憲民主党が野党第1党に躍進し、残る民進党が再結集すれば、希望の党への合流は泡となって消える。持参金付き(政党助成金)と連合支持と引き替えに民進党希望の党に売り渡した前原氏は、その条件を悉く失い、「去るも地獄、残るも地獄」の立場に追い込まれるほかないのである。

一方、これほどの大勝が予想される自民内部の動向はどうか。選挙後に安倍首相が悲願とする改憲への動きが一挙に加速するとの観測もあるが、私は必ずしもそうは思わない。この点に関しても今回の毎日新聞調査は参考になる。それは「衆院選のあとも安倍晋三さんが首相を続けた方がよいと思いますか」との質問に対して、「よいと思う」37%、「よいとは思わない」47%と、続投を否定する回答が半数近くに達していることが注目点だ。この結果は、報道各社の世論調査安倍内閣の支持率が不支持率を下回っていることとも符合する。つまり、国民世論は安倍政権に対して明らかに「ノ―」を表明しているのであり、そのことは今後自民内で「安倍降ろし」の動きが強まることを予期させる。

事態は極めて錯綜している。これまで野党共闘に尽力してきた共産が議席を減らすと予測され、安倍政権批判の受け皿に立憲民主党が一気に浮上するなど誰もが予想していなかった。共産にとっては「一歩前進、二歩後退」の局面がこれからも続くかもしれない。選挙後の政局は激動すると予測されるだけに、この先どのような政治情勢が展開するかは未知の領域だ。しかし言えることは、希望の党は遠からず消滅し、小池・前原両氏は政治生命を失うことは間違いないと言うことなのである。(つづく)