731部隊検証の新たな展開(8)、京都大学における予備調査その後、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その138)

 前回のブログからもう1カ月近くも経った。だがこの間、京都大学からは予備調査に関する回答がない。「満洲731部隊軍医将校の学位授与の検証を京大に求める会」(「検証を求める会」)が結成されたのは今年の1月20日、1年間の活動を締めくくるためにも今年中に是非回答が欲しかったが未だ実現していない。これまでの経緯を簡単に記そう。

 〇7月26日、京都大学が会議室を用意して検証求める会の要請趣旨を聞き、要請書を受理した。研究倫理・安全推進担当副学長の野田亮医学系研究科教授は、(1)皆さんの要請を深く受け止める、(2)過去を変えることはできないが、未来に生かすようにしたい、(3)未来に生かすということは、現在の問題としてとらえ、過去の検証をすることも含まれている、(4)皆さんの言われたことを執行部で検討する、(5)9月上旬に大学執行部で検討し、その結果を会に報告すると述べた。 

 〇9月18日、野田副学長より検証を求める会に対して、「この度、貴殿からの旧満州731部隊軍医将校の学位授与の検証に関する要請について、『京都大学における公正な研究活動の推進等に関する規程』及び『京都大学における研究活動上の不正行為に係る調査要項』を準用し、当該論文に関する調査を実施することといたしました。つきましては、当該要請書に関しすでにご提出いただいた資料以外に貴殿がお持ちの関係資料がございましたら、平成30年9月25日(火)までに、研究倫理・安全推進室までご提出頂けますでしょうか。それをもちまして、予備調査を開始いたします。なお、追加の資料がない場合もその旨ご連絡いただきますようお願いいたします」との通知があった。

〇9月26日、検証求める会は当該通知に対して、「当会は、この回答を当会が要請する検証の具体的措置の更なる一歩であり、画期的なものとして受け止め、関係資料を期限までに提出いたしました。京都大学が『過去を変えることはできないが、未来にいかす』との方針で速やかに予備調査を終え、さらに進んで、過去を真摯に省みる本調査の実施を決定されることを当会は要請いたします」との回答を送り、同日に記者会見を開いて内容を公表した。
 
〇10月3日、研究倫理・安全推進室から「資料をお送りいただきまして、誠にありがとうございます」との返事があり、検証を求める会はこの日を以て予備調査が開始されたものと理解した。

 〇11月4日、10月3日から30日が経過したので、検証を求める会は野田副学長に対して、予備調査の進捗状況及び通知の目途についての説明を要請した。

 〇11月7日、野田副学長より「本件は、戦時中の事案であること、頂いた資料が膨大であることなどの理由から速やかな調査が困難とのことで、医学系研究科長より予備調査期間延長の依頼が提出されております。なお、本学の研究不正調査におきましては、進捗状況を当事者に逐一お知らせすることは致しておりません。この点、ご了解頂きますようお願い申し上げます」との回答があった。
 
〇12月25日、10月3日から60日(特別な場合、予備調査は60日延長)が経過したので、求める会は役員会を開き、年明け早々に予備調査の進捗状況及び通知の目途についての説明を再度要請することを決めた。

 以上が7月以降の簡単な経過であるが、現状をどうみるかについて役員会で意見交換が行われた。楽観論、悲観論入り混じっての議論だったが、一致した意見は次のようなものである。
(1)予備調査が長引いていることは、事案の性質上、一定程度は理解できる。医学研究科長から「予備調査期間延長」の依頼が出されていることは、予備調査が医学系研究科の責任において行われていることを示すものである。また、予備調査が実質的には本調査の段階に踏み込んでいるので、時間がかかっていると考えることもできる。
(2)しかし、予備調査の延長期間が特定されていないこと、進捗状況を当事者に逐一知らせることはしないとの通知は、事案の行方を見守っている社会に対しても、検証を求める会に対しても真摯な対応とはいえない。真理の究明に対して忠実であり、軍事研究はしないと表明した京都大学であればこそ、その社会的責任を全うするための積極的な対応を示すべきではないか。
(3)再度の要請に対する京都大学の真摯な対応と誠実な回答を求めるために、検証を求める会は、新年にふさわしい新たな行動を起こしていく。(つづく)