堺市長選がいよいよスタート、産経新聞が総力をあげて維新支援に乗り出した、大阪維新のこれから(1)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その153)

 

10連休最後の5月6日午後、堺市産業振興センター(南海・地下鉄御堂筋線、中百舌鳥駅の近く)で「市政を刷新し清潔な堺市政を取り戻す市民1000人委員会、スタートの集い」が開かれた。会場は100人規模程度のセミナー室だったが、倍以上の市民が詰めかけたため立錐の余地もない大混雑となった。私もNPО関係の知人から知らせを受けて様子を見るため参加したが、なにしろ席がない人たちが周り一面に立っていたので、司会者や講演者の顔も見えない始末、声だけを聴くような有様だ。

 

中百舌鳥駅といえば、昔は総合運動競技場「なかもずグラウンド」の最寄り駅でよく通った駅だ(私は大阪府立高校時代、陸上競技部に属していた)。だが、もう半世紀以上の前のことだから、駅周辺の光景もすっかり変わってしまって様子が全くわからない。しばらく周辺を歩いてみたが、さっぱり記憶が戻らないので会場に戻った。堺市が大都市に変貌していることを改めて実感した次第だ。

 

前置きはさておき、この市民集会の様子をどのように書くかでかなり悩んだ。市民集会の後で主催者側の方々と懇談の時間を持ったのだが、短い時間だったので選挙情勢がよくわからない。とにかく維新側はイケイケドンドンの調子で勢いが凄いとのこと、それに比べて反維新側は候補者もなかなか決まらず立ち遅れていることだけが分かったくらいだ。

 

これでは話にならないので、この間の情勢についてマスメディアがどのように伝えているかを調べてみた。私は4紙を定期購読しているが、読売・産経紙は取っていない。必要なときには近くのコンビニに買いに行ったり、図書館で調べることにしている。そんなことで今回は大学図書館で念入りに調べてみたところ、驚いたことには他紙とは比較にならないほど産経新聞(大阪本社版)が大々的に(しかも系統的に)堺市長選を取り上げているではないか。朝日・毎日・日経などは通り一遍の事実経過を書いているだけなので選挙構図がよく分からないが、産経紙を読んでみるとその意図がよく分かる。4月後半からの主だった記事の見出しを並べてみよう。

 

〇4月23日(火)1面トップ、「竹山・堺市長が辞職願、6月にも市長選、政治資金不記載 維新『候補擁立』」

〇同上、27面トップ、社会面特集「激流、1強の衝撃(上)」、「堺市長辞職願、2.3億円不記載 自公が引導」「強気一転 竹山氏謝罪、『納税者の感覚ない』松井氏が批判」

〇4月24日(水)、1面トップ、「大阪府市と堺 成長戦略共有、堺市長選 維新の公約に、松井市長『都市圏に』、吉村知事は特区構想」

同上、27面トップ、社会面特集「激流、1強の衝撃(中)」、「橋下氏の宿敵 突然自滅、『都構想』に立ちはだかり10年」

〇4月25日(木)、27面トップ、社会面特集、「激流、1強の衝撃(下)」、「浮上する『大大阪』、都構想の発展型、堺市長選にらみ議論活発化」

〇4月27日(土)、3面トップ、「堺市長選、維新 永藤氏軸に調整、竹山氏の辞職 議会同意、反維新勢力 出足鈍く」

〇5月4日(土)、1面トップ、「橋下氏『公明 改憲の妨げ』、首相への協力 維新に促す」「公明苦境、大阪都構想めぐり溝、衆院選で維新対抗馬」

〇同上、4面トップ、「単刀直言」、「橋下徹 元大阪市長、改憲の運命 大阪が握る、公明が都構想協力なら矛収める」

 

産経紙が今回の堺市長選に対してどれだけ力を入れているかは、この間の見出しを見ただけでも明らかだろう。出るという記事が全て1面トップ、関連記事もトップ扱いだから力の入れ様が凄まじい。おまけに、竹山市長の辞職表明直後から大型特集を組み、3回にわたってその背景を詳しく解説している。この特集記事は維新側の選挙戦略に関する解説記事とも言えるもので、その抜粋を読んだだけでも狙いがよくわかる。以下、該当する部分を抜粋しよう。

 

「竹山は、大阪維新の会反対派の急先鋒として知られる。前回、前々回の市長選では維新の看板政策『大阪都構想』反対を掲げ、自民など『反維新勢力』からの支援を受けて維新候補を退けた。大阪で府知事、大阪市長ポストを維新に押さえられた自民にとり、堺市長は『最後のとりで』だった」(激流、上)

「『松井・吉村体制は、都構想実現のため堺市長を取りに行く』。22日、堺市長の竹山修身の辞職が報じられると、大阪維新の会前代表の橋下徹は早速ツイッターに立て続けに投稿。維新の次のターゲットを『宣言』した。竹山は橋下の『宿敵』だ。10年前、不政策企画部長だった竹山を堺市長選に担いだのは、府知事だった橋下と府議だった松井。竹山は絶大な橋下人気を追い風に初当選したが、翌年、橋下が大阪市や堺市を再編する『大阪都構想』を打ち出すと、『堺に二重行政はない』と反対に回り、たもとをわかった。橋下は『裏切り者』と竹山を激しく攻撃したが、『堺はひとつ』を唱えた竹山は『反都構想』を旗印に結集した自民、民主(当時)、共産各党の支援を受け、平成25年の市長選では維新候補が敗北。大阪での『維新不敗神話』が初めて崩壊した」(激流、中)

「竹山さんは『堺のことは堺でやる』と言っていたが、これからは堺も含めて府域全体が成長する形を、新市長のもとで一緒につくっていきたい。大阪市長の松井一郎は24日、記者団にこんな展望を語った。『堺も含む成長モデル』は、大阪府市と堺の3自治体で広域行政を連携して行う――という意味にとどまらない。視線の先にあるのは大阪都構想の発展型『グレーター大阪』の青写真だ。維新前代表の橋下徹が提唱した当初の大阪都構想は、まず府と大阪市、堺市を統合し、次の段階で周辺市を特別区に再編するものだった。面積、財政とも拡張し、東京23区に対抗しうる大都市とする最終形態を大ロンドン市(グレーターロンドン)にならい、グレーター大阪と呼んだ」(激流、下)

 

大阪都構想はもとより「グレーター大阪」も夢ではない――、こんな大阪維新の大それた野望の解説記事を読むと背筋が寒くなるが、問題はそれに止まらないことだろう。それは、5月になって新たに登場した橋下徹氏の「公明は改憲の妨げ」と題するインタビュー記事の紹介だ。(つづく)