堺市長選、維新候補は維新市議団の「汚れた体質の刷新」を選挙公約に掲げるべきだ、大阪維新のこれから(3)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その155)

 

 2019年5月7日、大阪維新は元府議・永藤氏を党公認の市長候補として擁立することを発表し、同氏が記者会見を行った。毎日新聞によると、当人は「市民の信頼を取り戻し、希望の持てる堺の未来をつくっていきたい」と述べたという。「市民の信頼を取り戻す」とは、竹山前市長が政治資金問題で辞職したことを指すのだろうが、維新堺市議団も決して「政治とカネ」問題には無関係でない。むしろ「真っ黒!」と言っていいほどに汚れ切った体質のグループなのだ。例えば...

 

まだ記憶にも新しい数年前の2014年、当時の維新市議団団長がウソの領収書をつくって政務活動費1千万円余を不正支出し、メディアや議会の激しい追求を受けて辞職に追い込まれた。翌年の2015年にはこれに懲りず、今度は中堅(男性)と若手(女性)の維新市議2人が架空のチラシ代など政務活動費約1300万円を不正支出。しかも証言拒否を続けて逃げ回るなど、議員にあるまじき悪質性が糾弾されてこれも相次いで辞職に追い込まれた。大阪維新が市長候補を擁立するのであれば、真っ先に自らの「汚れた体質」の自己批判から始めるべきだが、記者会見でそのことに果たして言及したかどうか、また記者団が追求したのかどうか、私にはわからない。

 

竹山前市長の「政治とカネ」問題も、堺市政全般の体質にかかわる(通底する)問題としてきわめて深刻だ。自民、公明、旧民主、共産などの市議会与党が、竹山氏の政治資金管理に日頃から監視の目を向けていたかどうかさっぱりわからないからだ。今年2月、竹山氏の問題が発覚したとき、自らの体質は棚に上げて即刻辞職を迫った維新の政治的思惑はともかく、心ある市民からも少なからず竹山氏への厳しい追求の声が上がっていた。この時、市長与党が毅然とした態度をとって真相を解明し、竹山氏が責任を取って辞職していれば、堺市長選は統一地方選の大きな焦点となり、「政治とカネ」問題の追求によって維新は大きな打撃を受けたであろう。

 

だが、市長与党は「市長が説明責任を果たすべき」として真相究明を怠った結果、竹山氏にまつわる「政治とカネ」問題はさらに不透明感を深め、もはや抜き差しならぬ泥沼状態に陥ったのだ。そのことがこれまでの維新の「汚れた体質」の問題を相対化させ、竹山氏の「政治とカネ」問題を追求する維新があたかも「クリーンハンド」の持ち主であるかのような印象を有権者に与えることになった。と同時に、竹山氏の問題を曖昧にしようとする市長与党が「同じ穴の狢(むじな)」と見られ、市民の信頼を失う原因となったことも否めない。そのことが与党会派の後退につながり、維新の躍進につながったことは間違いないのである。

 

もう一方の「希望の持てる堺の未来をつくっていきたい」という点についてはどうか。維新候補は「新しい堺を創る」をテーマに、(1)大阪府市との連携、(2)市内行政区の権限拡大による自治機能強化、(3)民間の活用――などを公約に掲げた。注目される大阪都構想については、ただちに議論を始めるのは「時期尚早」であり、今後の市長選で改めて市民に賛否を問うと語った。ただし、大阪の副首都化を目指す大阪府市の「副首都推進本部会議」には参加する方針を示した。しかし、これだけでは選挙戦でどのような具体策を打ち出すのかよくわからないので、今後の選挙戦をフォローしながらその狙いを分析していきたいと思う。

 

ただ、松井大阪市長(維新代表)や吉村知事(同政調会長)の戦略は明確だ。産経新聞の単独インタビューによると(産経4月24日)、松井氏は「大阪府市と堺市が一体となって、成長する都市圏をつくっていきたい」と述べ、大阪府市との成長戦略の共有が維新候補擁立の公約になると言明した。具体的には、2025年万博の用地となる人工島・夢洲を中心とするベイエリア活性化策に堺市を加え、堺泉北港までを含めた拠点づくりを目指すのだという。一方、吉村氏は「堺特区構想」を堺市長選の公約に掲げ、「堺市と大阪市の垣根を取り払う」と語った。大阪府市の重要課題を話し合う副首都推進本部会議に堺市を加え、観光戦略などを共同で構築していくべきだと主張している。

 

ただし、松井・吉村両氏とも大阪都構想は今回の堺市長選の争点にはならない(しない)としており、まずは大阪府市の都構想を実現した後、次の段階で堺市や周辺自治体を含めた「グレーター大阪」の形成を考えるとしている。この「大阪都構想の段階的戦略=争点隠し」に対して反維新候補が如何に切り込むか、これが今回の堺市長選の帰趨を分けることになるだろう。このことは、反維新側の候補者が決まってから検討したい。(つづく)