堺市長選が始まった、合同選対本部の設置なしには、堺自民・共産・立憲・市民ボランティアの「混成部隊」は維新・公明の「正規軍」に惨敗するだろう、大阪維新のこれから(7)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その159)

 

 5月26日から堺市長選が始まった。6月9日(日)が投開票日なので、選挙運動期間は僅か2週間しかない。人口80万人の政令指定都市の市長選がたった2週間とあっては、それ以前の準備状態で勝敗が決まると言っても過言ではない。しかし、反維新側の自民堺市議が離党して立候補表明したのは選挙公示日直前の5月18日(土)のこと、それ以前に万全の準備を整えて出馬表明した維新側候補に比べると、情勢が極めて不利なことは否めない。

 

 加えて今年4月7日(日)投開票の堺市議選では、大阪維新が前回の14議席(得票数9万9千票・得票率31%)から18議席に(13万1千票・39%)に躍進し、ダントツの第1党に躍り出た。公明は現状維持の11議席(6万票・19%、→5万9千票・18%)、自民は1議席増の9議席(5万7千票・18%→5万9千票・18%)を死守して何とか支持層を固めたが、割を食ったのは共産、立憲、無所属だった。共産は6議席(4万票・13%)から4議席(3万5千票・10%)へ、立憲は2議席(1万9千票・6%)から1議席(1万6千票・5%)へ、無所属も7議席(4万2千票・13%)から5議席(3万5千票・10%)へとそれぞれ大きく後退した。要するに、共産・立憲・無所属が大阪維新に票を喰われたのである。

 

 堺市長選の公示日、5月26日(日)の維新・公明の合同記者会見で、公明が維新に屈服表明したことの影響も大きい。このことは、衆院選大阪16区(堺市の中心区)が地盤の北側一雄氏(公明党副委員長)に対して、維新が対抗馬を出さないことを約束し、その代り堺市長選で公明が維新側候補を支援するという取引(ディール)が成立したことを意味する。直前の堺市議選の政党別得票数を基礎にして、維新・反維新の両候補の基礎数を計算すると以下のようになる。

〇維新側候補20万7千票=維新13万1千票+公明5万9千票+無所属1万7千票〈1/2〉

〇反維新側候補12万7千票=自民5万9千票+共産3万5千票+立憲3万8千票+無所属1万7千票〈1/2〉

 

 5月28日(火)の午後から夜にかけて、私は市民ボランティアの事務所や集会の様子を見て回ったが、集会では参加者の発言を聞いて衝撃を受けた。反維新側はそれぞれ勝手連的に選挙運動を展開しているのだが、それが候補者の運動に結びついていないのだ。例えば、駅前の街頭演説で候補者が雨中で懸命に訴えているにもかかわらず、周辺には運動員がチラホラとしかいないといった状況があちこちで見られるという。

 

 大阪維新と公明が構成する選挙陣営は〝正規軍〟なのである。彼らの陣営には選挙参謀としてプロの大手広告会社が常駐し、選挙情勢を分析して宣伝活動や集票活動の指揮を執っている。街頭宣伝には近畿地方の維新議員が組織的に動員されて宣伝活動を担い、地元の維新堺市議団はもっぱら業界や地域を回って集票工作を担当するなど、分業体制も徹底している。そして決起集会には、吉村知事や松井市長が駆け付けて候補者と揃い踏みをするという演出も凝らされているのである。

 

 これに対して、反維新陣営は勝手連的な〝混成部隊〟でしかない。それぞれのグループでは頑張っているが、それらのエネルギーを束ねて大きなうねりを作っていく参謀本部や司令部が不在なのだ。大阪ダブル選挙では反維新候補として有為な人材を擁立したにもかかわらず、維新陣営の際立った組織戦に負けた。反維新陣営の中核となるべき自民大阪府連が分裂し、選対本部が機能せず、自主的に支援する各政党や市民グループとの協力体制が成立しなかったためだ。

 

 堺市長選では大阪ダブル選挙の誤りを繰り返してはならないだろう。堺自民はもはや大阪自民からの支援は得られない以上、支援政党や市民グループと共闘体制を組むしかない。その要となる「(暫定)合同選対本部」を直ちに設置し、選挙態勢を立て直さない限り勝利の展望は見えてこない。待っているのは“惨敗”だけだ。残る時間は僅かであり、関係者の決断が迫られている。(つづく)