安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(3)、安倍内閣の「逃げ切る戦略」は成功するか、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その180)

 「桜を見る会」の疑惑が発覚してからの一連の世論調査が、毎日新聞調査(11月30日、12月1日実施)およびNHK調査(12月6~8日実施)で終わった。内閣支持率は毎日新聞42%(▲6ポイント)、NHKは45%(▲2ポイント)で先行調査とあまり変わらない。毎日新聞の方が的を射た質問をしているので、主だった結果を紹介しよう。

  1. 内閣支持率は42%で前回調査(10月26、27日実施)から6ポイント低下し、不支持率は35%で5ポイント上昇した。特に女性の支持率が38%になったのが目立つ。
  2. 「国の税金を使って開く『桜を見る会』に、安倍首相の地元後援会関係者らが多数、招待されていたことが明らかになりました。あなたはどう思いますか」との質問に対しては、「問題だと思う」65%、「問題だとは思わない」21%で、問題視する回答が問題視しない回答の3倍に上った。女性は70%対14%で5倍だった。
  3. 「野党は『桜を見る会』に反社会的勢力の関係者が参加していたと指摘しています。あなたは、誰の推薦でどのような人物が『桜を見る会』に招待されていたのか、政府は明らかにすべきだと思いますか」との質問に対しては、「明らかにすべきだ」64%、「明らかする必要がない」21%で、これも「すべき」が「必要ない」の3倍に上った。
  4. 『桜を見る会』の招待者名簿を取りまとめている内閣府は、野党の議員から国会で『桜を見る会』に質問を受けたその日に名簿をシュレッダーで廃棄していました。政府は廃棄と国会質問は一切関係がないと説明していますが、この説明に納得できますか」との質問に対しては、「納得できる」13%、「納得できない」72%で、「できる」が「できない」の5倍強となった。 

  いずれの回答も政府への批判が圧倒的であり、否定側の意見は肯定側の意見の3倍から6倍に達している。問題は「桜を見る会」の疑惑に対する不信感がこれほど大きいにもかかわらず、安倍首相夫妻による国政私物化の真相究明を妨げている自民・公明・維新の支持率がいっこうに下がらないことだ。

   毎日新聞の与党支持率は、自民36%→36%、公明3%→3%、維新4%→4%、合計43%→43%と微動もしていない。一方、野党支持率は、立民10%→8%、国民1%→1%、共産3%→4%、社民1%→0%、れいわ1%→2%、合計16%→15%と却って低下している。これは「支持政党なし」が34%→35%とほとんど変化していないからである。与野党支持率の差が3倍もあるのでは話にならない。

   NHKの与党支持率は、自民35.1%、公明2.7%、維新1.6%、合計39.4%。野党支持率は、立民5.5%、国民0.9%、共産3.0%、社民0.7%、れいわ0.6%、合計10.7%と、こちらの方は与野党差が4倍近くに開いている。「支持政党なし」41.4%が大きな割合を占めているためだ。

 自民など与党支持率が下がらないのは、世論調査の方法にも問題があると私は考えている。内閣支持率に関しては関連する質問項目が沢山あるのに、政党支持率の方はそれが全くないのである。例えば、「『桜を見る会』の真相解明には国会での予算委員会集中審議など徹底した質疑が必要だと思われますが、自民・公明など与党会派が野党の開会要求を拒否しました。あなたはどう思いますか」と言った質問が当然あってしかるべきなのに、その種の質問にはお目にかかったことがないのである。

 また、「国会特集」として、国会運営に関する調査報道とともに議院運営委員会をはじめ各委員会での審議状況に関する項目を組み、それぞれにふさわしい質問を工夫して世論調査をすることも考えられるが、このような企画についても寡聞にして知らない。安倍1強政治を批判するのであれば、それを支える自民・公明の国会運営の実態を明らかにすべきであって、単に政党支持率だけを聞いていても仕方がないのである。

 昨日12月9日に国会が閉会された。安倍首相をはじめ自民首脳部は「逃げ切った」と言っているらしい。国会で追及される心配がなくなると、「反省している」「説明が足りなかった」「これからは改善する」といった言葉を並べ、「もはや終わったこと」として事態の終息を図るのが彼らの常套手段なのだ。後は補正予算の大盤振る舞いで景気の落ち込みをカバーし、オリンピックになだれ込んで興奮状態をつくりだす...という算段なのだろう。

    だが、これで幕引きだと思うほど国民はバカではないだろう。私は毎日世論調査にも見るように、とりわけ女性の怒りが大きいことに注目している。安倍首相夫妻すなわち安倍首相はもとより昭恵夫人に対する怒りが彼女らの間には渦巻いているのである。こんな気持ちや感情は簡単に消えるものではない。地下に溜まったマグマ火山のようにいつでも噴き出す活火山なのだ。「逃げ切った」のではない。逃げている醜い姿が国民にはいつまでも見えているのである。次回は、枝野立民代表が呼びかけた野党合流の行方を考えてみたい。(つづく)