安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(6)、政権崩壊に至る支持率下落のメカニズム、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その183)

これまで、内閣支持率と自民支持率の変化(下落)をトレースしてきたが、ここにきて政治情勢がにわかに流動化してきた。「IR法=カジノリゾート法」を強行採決した張本人の秋元内閣府副大臣(IR担当)がIR関係中国資本からの現金授受に伴う外為法違反容疑で任意聴取され、逮捕一歩手前の家宅捜索を受けたと言う。目下、カジノリゾートの選定作業を一手に握っている菅官房長官にとってこれは手痛い打撃だろう。IRの認可が闇の世界の巨大な利権によって動かされていて、自民国会議員がその手先となって暗躍していることの一端が図らずも明らかになったからだ。

 

一方、加計学園の獣医学部新設問題に関して「総理に代わって私が言う」と文部次官を恫喝した和泉首相補佐官が、今度は厚生労働省の女性官僚を京都にまで同行し、山中京大教授に対して「ips補助金を打ち切る」と脅かしたという。それだけではない。その後二人は市内で(いささか旧い言葉だが)〝逢引き〟を楽しんだことが、週刊誌で写真入りで暴露された。京都在住の私は、逢引きの場所はいずれもよく知っているが、選りも選ってよくもこんな人目に立つところを選んだものだと驚嘆する。白昼堂々、親密な関係を披露することに何の躊躇を覚えないほど、官邸官僚の思い上がっている姿が目に浮かぶ。

 

加えて、下村元文科相の「強いリーダーシップ」の下に導入された大学入試の民営化(民間英語試験の採用、国語・数学の記述式問題採点の丸投げなど)の策動が、荻生田文科相の失言もあって土壇場で中止になった。全国の大学や受験性に与える影響は計り知れないものがある。そして今度は、鈴木総務次官が日本郵政副社長(元総務次官)に「かんぽ不正問題」の処分に関する情報を逐一漏洩(報告)していたとして更迭された事件が発生した。元総務次官は、自らの責任は棚に上げ「かんぽ不正問題」を報道したNHK番組の撤回を迫り、会長に謝罪させた名おうての強者だ(面構えからもよくわかる)。こんな人物が、官邸人事で各省庁のトップに任命されるのだからたまったものではない。もう何もかも滅茶苦茶ではないか。

 

深刻な不祥事がこれほどまでに頻発するのは、史上最長の長期政権による安倍首相の「身内政治=国政私物化」の弊害が構造化し、もはや官僚機構全般に及んでいるためだ。国民全体の奉仕者であるべき官僚が〝安倍首相の私的召使〟に堕したことが官僚機構の劣化と腐食を招き、止まることの知らない統治機構の機能不全をもたらしている。「資料が見つからない」「資料を破棄した」「調べるつもりはない」「これまでの見解通り」などなど、菅官房長官の記者会見における慣用語句はそのことの象徴と言える。

 

だが、このような事態はもはや限界に来ているのではないか。ここにきて、世論の風向きが変わってきていることはあきらかだ。〝知らぬ存ぜず〟一点張りで逃げ切ろうとする姿勢が国民の激しい怒りを呼んでいるからである。安倍首相当人や官邸は、国会延長を要求する野党の追及を振り切り「逃げ切った」と思っているらしいが、野党はもとより国民がそんなことで納得するわけがない。正月が来れば「その内にみんな忘れてくれる」なんて甘い夢は見ない方がいいのである。

 

この間の世論状況の推移を各社の世論調査で追ってみると、僅か2カ月足らずの間に世論が大きく動いていることがわかる。画期の区分は、(1)内閣支持率も自民支持率も下がらない、(2)内閣支持率は下がるが、自民支持率はそれほど下がらない、(3)内閣支持率と不支持率が接近し(あるいは不支持率が支持率を上回り)、自民支持率も下がる、の3期である。このような区分をするのは、安倍政権に対する支持は、首相自身に対する評価と自民党全体に対する評価の二重構造になっていて、内閣支持率が下がっても自民支持率が下がらなければ、自民党政権が安泰だからである。自民党政権の危機は、その両方が連動して本格的に下がるときに初めて訪れることになる。この3期に分けて、内閣支持率および自民党支持率の推移をみよう。

 

第1期の「内閣支持率も自民支持率も下がらない」時期は、今年11月前半まで続いていた。11月になって最初に行われた時事通信調査(11月8~11日)は、政府が首相主催の「桜を見る会」を来年度中止を決定した11月13日以前だったためか、2閣僚辞任や大学入試への英語民間試験の導入見送りなど不祥事が相次いだにもかかわらず、内閣支持率は48.5%(△4.3ポイント)、不支持率は29.4%(▲3.6ポイント)となり、支持率が逆に上昇していた(マジか!)。

 

一方、政党支持率の方は、「自民」30.1%(△2.6ポイント)で断トツ1位を維持しており、それに比べて「立憲」3.1%(▲2.7ポイント)で公明3.7%を下回る始末、その他野党はいずれも2%以下で見る影もない。「支持政党なし」55.5%(▲0.5ポイント)が過半数を占めているように、国民多数が〝野党離れ〟にある状況の下で、安倍政権はこのまま不祥事をやり過ごせると踏んでいたのである。

 

しかし、安倍首相が来年度の「桜を見る会」中止を決定した11月13日以降、情勢は少し変り始めた。11月半ばから後半にかけて、世論動向は第2期の「内閣支持率は下がるが、自民支持率はそれほど下がらない」へ移行した。これまで相対的に高い支持率が続いてきた読売調査(11月15~17日)と産経調査(11月16、17日)においても、読売「支持」54→49%(▲6ポイント)、「不支持」34→36%(△2ポイント)、産経「支持」51.7→45.1%(▲6.6ポイント)、「不支持」33.0→37.7%(△4.7ポイント)となって、下落傾向が明らかになってきた。50%台を恒常的に維持していた読売・産経の内閣支持率が、過半数割れの状態に落ち込む傾向がはっきりと出て来たのである。

 

また、支持率が低かった朝日調査(11月16、17日)においても「支持する」45→44%(▲1ポイント)、「支持しない」32→36%(△4ポイント)となった。首相が来年度の「桜を見る会」中止を決定してからというものは、程度の差はあれ支持率が下落し、不支持率が上昇した。安倍首相の「臭い物に蓋をする」姿勢に少なくない国民が失望したのだろう。ただしこの段階では、まだ不支持率が支持率を上回るような状況ではなかった。

 

一方、「自民」支持率の方は、読売42→37%(▲5ポイント)、産経37.7→36.2%(▲1.5ポイント)、朝日45.7%で変わらずと各社まちまちだった。野党は「立憲」にやや上昇傾向がみられるものの(読売5→7%、産経7.3→7.8%、朝日7.8→9.8%)、「支持政党なし」がほとんど動いていないので(読売38%変わらず、産経39.4→38.7%、朝日30.0→26.5%)、こちらの方はそれほど大きな変化はなかったと言える。(つづく)