安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(8)、政権崩壊に至る支持率下落のメカニズム(3)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その185)

 

12月に入ってからは、調査主体によって傾向がはっきりと分かれるようになった。第1グループの読売調査(13~15日)、産経調査(14~15日)は、第2期の「内閣支持率は下がるが、自民支持率は(それほど)下がらない」段階にあるのに対して、第2グループの時事通信調査(12月6~9日)、共同通信調査(14~15日)、朝日調査(21~22日)は、第3期の「内閣支持率と不支持率が接近し(あるいは不支持率が支持率を上回り)、自民支持率も下がる」段階に移行した。明らかに安倍政権に対する世論の潮目が変わったのだ。

 

第1グループの内閣支持率は、読売48%(▲1ポイント)、産経43.2%(▲1.9ポイント)、不支持率は、読売40%(△4ポイント)、産経40.3%(△2.6ポイント)となった。読売の支持率が高いのは、内閣を支持するかどうかを聞く際、「支持」「不支持」を明確に答えなかった人に対し、「どちらかといえば支持しますか、支持しませんか」などと「重ね聞き」していることが影響している(最初の回答だけを集計すれば、支持率は数ポイント下る)。自民支持率の方は、読売37%(変わらず)、産経37.9%(△1.7ポイント)だった。産経は、内閣支持率の下落が小幅にとどまったとはいえ、女性の厳しい回答について次のように解説している。

「世論調査で、首相主催の『桜を見る会』への招待者選定をめぐる安倍晋三首相の説明について、『納得できない』との回答が74.9%に上った。国民の根強い不信感は安倍内閣の支持率や憲法改正の賛否にも影響しているとみられ、ボディブローのように政権の足元を脅かしつつある。(略)女性の方が安倍政権に厳しい傾向は、内閣の支持・不支持率にも表れている。女性では、40代を除く全ての年代で『支持しない』が『支持する』を上回った。50代では47.3%が『支持しない』と回答し、『支持する』37.8%を約10ポイント上回った」

 

第2グループの時事・共同・朝日の方はどうか。内閣支持率は、時事40.6%(▲7.9ポイント、共同42.7%(▲6.0ポイント)、朝日38%(▲6ポイント)、不支持率は、時事35.3%(△5.9ポイント)、共同43.0%(△4.9ポイント)、朝日42%(△6ポイント)とほぼ同様の傾向を示した。共同・朝日では遂に不支持率が支持率を上回り、不支持率と支持率の差は朝日が4ポイントで一番大きい。

 

内閣支持率の大幅下落とともに自民支持率もまた下落した。自民支持率は、時事23.0%(▲7.1ポイント)、共同36.0%(▲5.8ポイント)、朝日34%(▲2ポイント)となり、自民支持率が最も低い時事通信の水準は、森友学園の不正問題が国会で追及されていた2018年3月25.2%(▲3.3ポイント)よりも低い。与党総ぐるみで安倍首相の不正を隠し、野党の真相解明を妨げるために国会延長に応じず審議を拒否したことが、漸く国民から批判されるようになってきたのである。

 

しかしその一方、野党支持率の方は相変わらず低迷している。立憲・国民・共産・社民・れいわの全部を足しても、時事7.3%(△0.8ポイント)、共同20.6%(△4.4ポイント)、朝日12%(▲2ポイント)と、自民支持率の3分の1から2分の1程度の水準に過ぎない。これは「支持政党なし」が、時事61.1%(△5.6ポイント)、共同31.8%(△1.4ポイント)、朝日41%(△4ポイント)と自民を上回る水準に達しており、しかも増加しているためだ。つまり、自民離れ層が野党には流れず、「支持政党なし」に移行しているだけのことで、野党各党がこれから「政党支持なし」をどれだけ取り込めるか、そこに安倍内閣打倒の全てが掛かっていると言っても過言ではない。

 

第2グループの世論調査に共通することは、国民の安倍政権に対する不信感が頂点に達し、それも女性の不信感がもはや修復不可能なレベルに達していることだ。この事態を安倍政権に近いジャーナリストはどう見ているのだろうか。毎日新聞特別編集委員の山田孝男氏は、『風知草』(毎日新聞コラム、2019年11月18日)で次のように語る。

「時ならぬ桜騒動は、身内に厚く、問い詰められれば強弁――という、憲政史上最長政権の〈不治の病〉再発を印象づけた。見過ごされていた首相の公私混同、政権の慢心を丹念に調べた共産党の追及は鮮やかだった。これを小事と侮れば政権は信頼を失うが、『桜を見る会』の運営が天下の大事だとは思わない。大嘗祭もつつがなく終わり、令和への転換が進む。世界激動の今日、国際的な課題を顧みず、観桜会が『最大の焦点』になるような国会のあり方自体、改める時ではないか」

 

この主張は、その後テレビでも盛んにコピーされ、少なくないキャスターやタレントからも同様のメッセージが発信されている。天下国家の大事を論じなければならない国会が、こんな些末なことに何時までもかかわっていてよいのか――、一見尤もらしい主張である。しかし、事の本質は山田氏の前半の指摘にあるのであって、後半の主張にあるのではない。国民は「桜を見る会」疑惑の中に安倍首相の宰相としての「不治の病=公私混同・身びいき・えこひいき・強弁・居直り・すり替え・屁理屈・嘘つき・逃げ回り...」に気付き、こんなのは〝ダメ〟と言っているだけのことなのである。安倍夫妻のような「チャチな男とノーテテンキな女」に6年間もダマされてきたことを嘆き、そして怒り、心の底から嫌気がさしているだけのことなのである。

 

同じ毎日新聞のコラムでも、土曜サロンの「松尾貴史のちょっと違和感」(2019年12月7日)の方がはるかに的を射ている。

「この案件は関係者が安倍夫妻、副総理、官房長官、内閣府、自民党関係者、安倍晋三後援会、ホテルニューオータニ、そして招待者1万8000人というおびただしさなので、ウソで蓋をしようとすればするほど、つじつまの合わないところが出てきて疑惑が数珠つなぎに引っ張り出される構造になっている。森友学園や加計学園の疑惑は何となくほとぼりが冷めているだけなので、もしこの桜を見る会についてのスキャンダルが長引けば、さらに政権の体質自体が問題であることがどんどん顕在化して、ダメージは大きくなっていくだろう」

 

「桜を見る会」疑惑の本質は、松尾氏が指摘する通り、まさに安倍政権の〝体質〟の問題なのである。安倍首相夫妻の公私混同・身びいきの性癖が「国政の私物化」をもたらし、天下国家の大事を歪める根底になっているからだ。この土台を取り換えることなく、新しい時代を迎えることはできないし、国際的な課題はおろか人類史的な課題にも向き合うこともできない。

 

安倍首相は12月26日、2012年12月の第2次政権の発足から7年を迎えた。日中韓首脳会議の演出で支持率を回復させようと帰国した首相を待っていたのは、現職の自民党衆院議員のIR汚職による逮捕だった。「桜を見る会」疑惑の方は安倍首相が主役だったのに対して、IR汚職の方は自民党議員が主役だ。しかも逮捕された秋元容疑者はIR担当の内閣府副大臣だったというから、安倍政権の中枢部が事件に関与していたことになる。二階幹事長などは、「この件は安倍政権が関わったことではないので影響はない」と言ったというが、この人物はいったい何を見て、何を考えているのだろうか。安倍首相と自民党はいまやボロボロで見るに堪えないと言うべきだろう。

 

私たちは、もうそろそろ「みみっちい首相へ別れの手紙」を書く時が来たのであり(朝日新聞「多事奏論」、編集委員・高橋純子、2019年12月18日)、古い瘡蓋(かさぶた)を取り除いて新しい時代を迎える時が来たのである。次回は、今年最後のブログを「IR疑惑特集」で飾りたい。(つづく)