安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(7)、政権崩壊に至る支持率下落のメカニズム(2)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その184)

11月後半になっても、第2期の「内閣支持率は下がるが、自民支持率はそれほど下がらない」傾向が続く。共同通信調査(11月23、24日)、日経調査(11月22~24日)、毎日調査(11月30日、12月1日)も全て同じ傾向だった。内閣支持率は共同通信「支持」54.1→48.7%(▲5.4ポイント)、「不支持」34.5→38.1%(△3.6ポイント)、日経「支持」57→50%(▲7ポイント)、「不支持」36→40%(△4ポイント)、毎日「支持」42%(▲6ポイント)、「不支持」35%(△5ポイント)となって支持率がかなり下がり、不支持率が上がって両者が接近した。その差は、共同通信調査と日経調査では10%だが、毎日調査では10%を割って7%になっている。

 

ただ、これまでと異なる大きな特徴は、男性に比べて女性の回答が否定側に大きく振れ始めたことだ。内閣支持率は男性・女性の平均なので、男女とも同じ傾向を示すこともあれば違う傾向を示すこともある。これを毎日調査でみると、男性よりも女性の方がいずれの回答においても否定側の回答が多く、否定側の回答が肯定側の5倍から8倍に達している。以下はその概要である。

 

(1) 内閣支持は42%(▲6ポイント)、不支持は35%(△5ポイント)となって、支持・不支持率が接近した。特に、女性の支持率が男性46%よりも8ポイント低く38%になったのが目立つ。

(2) 「国の税金を使って開く『桜を見る会』に、安倍首相の地元後援会関係者らが多数、招待されていたことが明らかになりました。あなたはどう思いますか」との質問に対しては、「問題だと思う」65%、「問題だとは思わない」21%で、問題視する回答が問題視しない回答の3倍に上った。女性は70%対14%で5倍だった。

(3) 「『桜を見る会』の招待者名簿を取りまとめている内閣府は、野党の議員から国会で『桜を見る会』に質問を受けたその日に名簿をシュレッダーで廃棄していました。政府は廃棄と国会質問は一切関係がないと説明していますが、この説明に納得できますか」との質問に対しては、「納得できる」13%、「納得できない」72%で、「できない」が「できる」の5倍強となった。女性は9%対72%で8倍となった。

 

 いずれの回答も政府への批判が圧倒的であり、特に女性の「桜を見る会」への疑惑が大きく、安倍首相(夫妻)に対する不信感が強い。女性に対して一旦不信感を抱かせれば、再び支持を取り戻すのは容易でないと言われている。内閣支持率の先行指標として女性の回答が注目されるのはそのためなのである。

 

それにしても「桜を見る会」の疑惑に対する不信感がこれほど大きいにもかかわらず、安倍首相夫妻による国政私物化の真相究明を妨げている自民・公明・維新の与党支持率がいっこうに下がらないのはなぜなのか。共同通信調査は「自民」44.6→41.8(▲2.8ポイント)とやや下落したものの、「立憲・国民・共産・社民・れいわ」の全てを合わせても16.6→16.2%(▲0.4ポイント)と変化がなく、「支持政党なし」28.9→30.4%(△1.5ポイント)が少し増えただけだった。

 

毎日調査でも、与党支持率は自民36→36%、公明3→3%、維新4→4%、合計43→43%と変化していない。一方、野党支持率は、立民10→8%、国民1→1%、共産3→4%、社民1→0%、れいわ1→2%、合計16→15%と却って低下している。つまり、この段階では〝自民離れ〟が〝野党支持〟へ移行しておらず、「支持政党なし」に途中下車している程度の変化しか見られなかったのである(日経調査は、政党支持率の数字が明示されていない)。

 

 自民など与党支持率が下がらないのは、世論調査の方法にも問題があるからだ。内閣支持率に関しては「支持する」「支持しない」の理由に関する質問項目があるにもかかわらず、政党支持率にはそれが全くない。例えば、「『桜を見る会』の真相解明には国会での予算委員会集中審議など徹底した質疑が必要だと思われますが、自民・公明など与党会派が野党の開会要求を拒否しました。あなたはこれをどう思いますか」と言った質問が当然あってしかるべきなのに、その種の質問にはお目にかかったことがない。

 

 また、「国会世論調査特集」として、国会運営に関する調査報道とともに議院運営委員会をはじめ各委員会での審議状況に関する項目を組み、それぞれにふさわしい質問を工夫して調査をすることも考えられるが、この種の企画は寡聞にして知らない。安倍1強体制を分析するには自民・公明など与党の国会運営の実態解明が不可欠であり、単に政党支持率だけを聞いていても仕方がないのである。

 

とはいえ、この時期の情勢は日経調査にも見られるように、(1)安倍長期政権の仕事ぶりが国民に評価されている(第2次安倍政権以降の仕事ぶりを「評価する」55%、「評価しない」34%)、(2)安倍内閣の支持率は底堅い(日経調査では50%ギリギリを維持)、(3)不祥事は政権の「緩み」から生じるもので本質的な欠陥に基づくものではない(「安倍政権に緩みがある」67%)と総括されている。つまり、続出する安倍政権の不祥事の原因は「腐敗」ではなく「緩み」によるものであり、質問全体が「党内改革」を図れば立ち直れるというストーリーになっているのである(そもそも「安倍政権は腐敗していると思うか」「腐敗していないと思うか」という質問項目がない)。だが、事態は刻々と変化している。12月に入ってどんな変化が現れるのか、次回はそれを追ってみたい。(つづく)