内閣不支持率が高まる中、1人一律10万円支給で事態を打開できるか、安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(34)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その211)

 前回の拙ブログをめぐって、最近何人かと議論する機会があった。「3密」を避けての少人数の集まりだから盛り上がらないことおびただしい。それでも幾つかの論点が浮かび上がり、それぞれが自己満足して別れた。論点は以下のようなものだ。

 

(1)安倍首相は本気で解散総選挙を企んでいるのだろうか。それとも「隙あらば」と狙っている程度だろうか。

(2)小池都知事は総選挙との同時選挙を望んでいるのだろうか。それとも嫌がっているのだろうか。

(3)4月14日告示、26日投開票の衆院静岡4区補選の結果は総選挙にどんな影響を与えるのだろうか。

 

 まず第1の安倍首相の本気度だが、これは「本気」だと全員が一致した。自民党内に目ぼしい対抗馬もなく、本人がまだ若いことからもまだまだ「やる気満々」だというのである。それに何よりも悲願の改憲が緒にもついていない。このままでは「死ぬに死ねない」と思っているに違いない――との意見が多かった。

 

この点で安倍首相が気をよくしているのは、4月11、12両日に行われた産経新聞世論調査の結果だろう。内閣支持率が3月前回調査(3月21、22両日実施)と比べて2.3ポイント減の39%になり、不支持率は3.2ポイント増の44.3%で2カ月ぶりに不支持率が上回ったというのに...である。理由は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍首相が7都府県を対象に緊急事態宣言を発令したことを「評価する」との回答は65.3%で、「評価しない」29.0%を大きく上回ったことだ。しかも、発令時期については「遅すぎる」82.9%が圧倒的で、安倍首相には「断固やるべし!」との激励になったに違いない。

 

前回3月調査では、緊急事態宣言の発令を「直ちにすべき」は6.5%、「積極的にすべき」は22.7%に留まり、「慎重にすべき」が65.0%で多数派だった。それが僅か20日で世論が急変したのである。国民が進んで自らの行動の自由や私権の制限を望むようになったのだから、安倍首相としては「わが意を得たり!」というところではないか。

 

加えて、安倍首相を狂喜させた質問がある。産経新聞が肝入りで打ち出した「国家的な危機や大規模災害に際して政府が緊急的・一時的に国民に対し強制力を持つ措置をとれるよう、憲法に『緊急事態条項』を設けることに賛成か反対か」という質問だ。同時期に実施された読売新聞世論調査でも、さすがにこの質問は入っていない。回答は「賛成」65.8%、「反対」23.4%で、産経新聞も驚く結果になった。どさくさ紛れというか、火事場泥棒というか、世論は安倍首相の狙い通りに展開しているのである。

 

第2の小池都知事の態度に関しては、少々意見が分かれた。安倍首相と小池都知事が権力至上主義の同種の人物であることは疑いない。しかし、その手法やタイミングの取り方についてはそれぞれ個性があり、両者の思惑は必ずしも一致していないというのである。緊急事態宣言をめぐる首相官邸と小池都知事の綱引きは、「協力金」「支援金」という名の休業補償をするかしないかを巡って争われているが、この点については安倍首相が目下のところ休業補償を頑なに拒んでいる。「要請はするが補償はしない」というのが、政府の一貫した姿勢だからだ。しかし、この身勝手な姿勢がいつまでもつかわからない。次の世論調査の内閣支持率の動きで、休業補償に関する政策の帰趨が決まるだろう。

 

今回の綱引きでは最終的に首相官邸が小池都知事に押し切られたように、この点について世論は明らかに小池氏の側に分があるようだ。小池氏は前回総選挙時の新党立ち上げ騒動の汚名など忘れたかのように生き生きと動いていて、自民党の支持が得られなくても当選は確実だと踏んでいる。小池氏にとってもはや自民党と一緒に選挙をするメリットがない以上、総選挙と都知事選の同時選挙など迷惑千万ということになる。安倍首相にとっても小池氏とコラボできなければ東京選挙区での勝利が危ないことから、同時選挙の芽は無くなったというのが大勢の意見だった(私もそう認めざるを得なかった)。

 

第3の衆院静岡補選の影響についてはどうか。この点については、最近の野党の影がますます薄くなっていることもあっていずれも元気な声が出なかった。産経、読売、共同の最新世論調査結果をみても、野党各党の支持率は恐ろしく低いままで推移している。産経新聞などは立憲民主党の支持率が維新の会を下回ったことを大々的に取り上げ、いまや野党第一党は維新の会だと騒ぎ立てる始末、残念ながらこれを否定する材料が見つからない。おまけに立憲民主党衆院議員が、外出自粛要請が出ている新宿歌舞伎町のキャバクラで性的サービスを受けていたとか、聞くも恥ずかしい事実が週刊文春のスクープで明るみに出たとあって、野党第一党としての立憲民主党はもはや「賞味期限切れ」「消費期限切れ」の存在に成り下がった感がある。これでは静岡補選は危ない――というのが一致した意見だった。

 

とはいえ、4月26日は間近に迫っており、自公与党は補選対策として「1人一律10万円支給」の具体化を急いでいる。108兆円の緊急経済対策の中身がスカスカだとわかって国民の不評を買っている現在、安倍政権が事態を打開できるとすれば「現金しかない」というのが事の真相だろう。河合夫妻の広島選挙区での場合が示すように、「現金給付」の影響は極めて大きい。まして国家的規模での現金給付となれば、その効果は全国に及ぶ。野党はいったいどんな戦術で対抗するのだろうか。この件については結論が出なかった。(つづく)