退陣するしかない安倍政権の末期症状、立憲民主・国民民主の合流新党は国民の期待に応えられるか、安倍内閣支持率下落と野党共闘の行方(41)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その218)

 暫らく膠着状態にあった国民民主と立憲民主の合流話が、最近になって急に動き出した。内閣支持率が第2次安倍内閣発足以来最低レベルに落ち込む中で、安倍首相の体調が優れないこともあって、「解散間近し」との噂が国会を駆け巡っているからだ。

 

それにしても、今年に入ってからの安倍内閣の評価は地に堕ちている。新型コロナへの対応が後手々々に回り、大方の国民が呆れかえって匙を投げているからだ。例えば、今年3月から5月(2回)にかけての朝日新聞の世論調査結果をみると、「新型コロナウイルスを巡る政府の対応を評価しますか」との質問に対する回答は、3月時点では「評価する」と「しない」がともに41%で拮抗していたが、4月になると「評価する」が33%に下落する一方、「評価しない」は一挙に53%に跳ね上がった。5月後半にはこれが30%と57%になってさらに差が開き、政府のコロナ対策への国民の評価は決定的なものになったのである。

 

安倍政権にとって痛手なのは、それとともに内閣支持率が急落していることだ。内閣支持率は3月時点では「支持」41%で「不支持」38%を若干上回っていたが、4月には「支持」「不支持」が41%で横並びとなり、5月前半では「支持」33%、「不支持」47%と形勢が一挙に逆転した。そして、5月後半には「支持」29%、「不支持」52%とかってないほど大きく差が開いたのである。

 

内閣支持率下落の原因は、コロナ対策の失態ばかりではないものの、国民の最大関心事がそこにある以上、安倍政権はこれらの世論調査結果を重く受け止めるべきだった。だが、そこは経産官僚が牛耳る安倍政権のこと、コロナ対策の失態を経済対策で手っ取り早くカバーしようと考えたのであろう。1兆7千億円もの巨額のGo To キャンペーン事業を全国にばら撒けば、経済状況も少しは改善し、国民の不信感も薄れるかもしれない。暫くすれば内閣支持率も回復するかもしれない...と期待したのである。

 

安倍政権にとって経済対策は、政権を維持するために残された数少ない選択肢であり(他に打つべき施策がない)、経済対策が「安倍政権の命綱」になっている。経済回復がままならなければ政権維持が危うくなる以上、例えGo To トラベル事業によって感染が広がっても、いま即効性のある経済対策を打たなければ「政権がもたない」との政治判断が下されたのだろう。

 

だが、世間の我慢にも限度があるのではないか。その兆候はすでに各メディアの論調や世論調査にもはっきりあらわれている。とりわけ8月に入ってからというものは、安倍政権に親和的だった大手紙においてもこれまでとは打って変わった変化が出てきている。以下、産経新聞社説(8月2日)と読売新聞世論調査(8月10日)の内容を紹介しよう。

 

まず、産経の大型社説(主張)は、「政府のコロナ対応、首相は戦いの前面に立て、『Go To』は一時停止を」と論旨が極めて明快だ。産経社説がここまで言うのは、それだけ安倍政権の無為無策ぶりが目に余るからであり、このまま放置しておけば保守政権の存続にも影響するとの懸念(危機感)が強いからだろう。以下はその要旨である。

  1. 国民の信頼なくしてコロナに打ち勝つことはできない。もっと首相が前面に立つべきだ。
  2. コロナ対策の急務は、法的拘束力を伴う休業要請と補償を可能とする新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正である。臨時国会を召集して特措法の改正を急ぐべきだ。 
  3. 読売新聞の8月世論調査(7~9日実施)の結果はさらに衝撃的だ。通常の世論調査の場合、意見の賛否にはそれほど大きな差がつくものではないが、今回の世論調査では安倍政権の政策に対して「NO」が「YES」の数倍にもなるような異次元の結果が出ている。このことは、国民が安倍政権の政策に対してもはや疑問の余地がないほど失望しており、はっきりと「NO!」を突き付けていることを意味する。以下、概況を記そう。
  4. (3)「Go To トラベル」は一時停止すべきであり、感染拡大の収束こそが眼前の課題である。キャンペーンに促された旅行者が医療体制が十分でない地方にクラスター(感染者集団)を発生させれば、これは悲劇である。
  1. 内閣支持率は37%(前回39%)、不支持率は54%(同52%)となり、不支持率は2012年第2次安倍内閣発足以降で最高となった。不支持が支持を上回るのは今年4月調査から5回連続となった。
  2. 新型コロナウイルスを巡る政府のこれまでの対応は、「評価しない」66%(前回48%)に急上昇し、2月以降6回の調査で最高になった。これとは逆に「評価する」は27%(同45%)に急落し、2月以降で最低になった。
  3. 安倍首相が新型コロナへの対応で指導力を発揮しているかについては、「発揮している」が17%にとどまり、「そうは思わない」が5倍近くの78%に上った。
  4. 政府が「Go To トラベル」を開始したことについては、「適切だった」10%、「適切でなかった」85%と桁違いともいうべき結果が出た。
  5. 野党が新型コロナウイルスへの政府の対応などを議論するため、臨時国会を速やかに開くことを求めていることについては、「速やかに開くべきだ」73%、「急ぐ必要はない」23%で3倍以上の大差がついた。

 要するに、国民はGo Toトラベル事業をはじめコロナ対応を巡る安倍政権のあらゆる政策に対して一刻も早い是正を求めている。ところが安倍首相による記者会見は、通常国会閉会翌日の6月18日を最後に7月中は1回も開かれず、8月は広島と長崎の平和式典後に毎年開く形式的な記者会見が2回あっただけ、それも質疑応答は2回あわせて僅か32分だった。

 

 この短い記者会見で安倍首相が述べたことは、(1)新型コロナへの基本対策に関しては、「感染予防、重症化予防に万全を期しながら、社会経済活動と両立を図る方針に変わりはない」と強調、(2)感染再拡大を受けた緊急事態宣言の再発例については、「再宣言を避けるための取り組みを進めていかなければならない」と否定、(3)お盆期間中の帰省については、「一律の規制を求めるものではない」として国民に万全の感染対策を要求、(4)改正新型インフルエンザ対策特別措置法については、「終息した後により良い仕組み、制度となるように検討していく」と全てゼロ回答だった。例によって、官邸官僚の書いた模範解答を読み上げただけで、首相独自のコメントや発言は何一つなかった(読売8月10日)。(つづく)