政治はすべて結果責任、100回超の虚偽答弁は万死に値する、安倍前首相は即刻議員辞職すべきだ、菅内閣と野党共闘の行方(15)、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その240)

 

 「度し難い人物」とは、まさにこういう人物のことを指すのだろう。東京地検特捜部が12月24日、安倍前首相の公設第1秘書を政治資金規正法違反の罪で略式起訴したことを受け、安倍前首相が開いた記者会見がそうだった。「噓八百」というが、まるでそれを地で行くような人物だ。100回を超える国会虚偽答弁を認めざるを得なくなったにもかかわらず、自分は「知らなかった」「知らされていなかった」と全責任を秘書に押し付け、自らの政治責任を免れようとする有様は醜悪そのものだった。

 

 翌25日の衆参両院議院運営委員会での態度はもっと悪質だった。自ら釈明すると申し出たのに、野党議員の質問に対しては「事前通告を受けていない」と居直る始末。事前通告の有無にかかわらず、自らが進んで事実を明らかにするのが本来の釈明の姿ではないか。ところが、これまでの国会答弁のように「事前通告を受けていない」と屁理屈をこねて答弁をはぐらかし、中には回答まで拒否するのだから始末に負えない。

 

要するに、今回国会で釈明すると申し出たのは、「謝罪した」という格好をつけて「それで終わり」と幕引きするつもりだったのだろう。「責任を痛感する」「反省している」「心からお詫びする」など、大げさで形式的な言葉を繰り返しながら、その実、表情や態度を見ていると全く反省していない。こんな茶番劇で国民を騙せると思っているのなら、きっと酷いしっぺ返しを喰うこと間違いなしだ。

 

それにしても、こんな度し難い人物が7年8カ月もの長きにわたって首相の座に居座っていたかと思うと、はらわたが煮えくり返る。本人は委員会後、記者団に「説明責任を果たすことができた」と胸を張ったというが、いったい何処からそんな言葉が出て来るのか不思議でならない。証人喚問には応じるつもりはないというし、おまけに来年の衆院選については「出馬して国民の信を問いたい」と言うのだから(朝日12月26日)、これで「一件落着」「みそぎ(の儀式)は終わった」と思っているのだろう。

 

 菅首相も24日、安倍政権時代の官房長官としての国会答弁については、「私自身も事実と異なる答弁になってしまい、国民に大変申し訳ない」と一応謝罪したが、これもうわべだけのことで言動が全く一致していない。「桜を見る会」について、記者団から招待者名簿などの再調査を行うかと聞かれて、「国会の中で質疑応答がきちっと行われてきている。予定はない」と平然と述べているのである(朝日、同上)。安倍前首相が100回を超える虚偽答弁を繰り返してきたというのに、「質疑応答がきちっと行われてきた」と言うのだから、こちらの方も安倍政権の忠実な後継者と言うほかない。「噓の上塗り」もいいところだ。

 

 新旧首相が揃いも揃って自らの政治責任を認めず、安倍前首相などは議員辞職など「どこ吹く風」といった具合だから、このような厚顔無恥の政治家は世論の力で倒すしかない。なかでも政権基盤の弱い菅首相にとって、内閣支持率の動向は決定的だ。内閣支持率がこれ以上下がれば「菅では選挙戦を戦えない」との声が高まり、「菅降ろし」が始まると言われているからだ。

 

このところ、菅内閣の支持率は先週末から40%を下回って急落している。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、その原因となった観光支援策「Go Toトラベル」の停止タイミングなどに対して、政府の対応への不満が高まっているからだ。なかでも菅政権を驚愕させたのは、支持率下落の大きさだろう。12月19、20両日実施の朝日新聞調査では、内閣支持率は11月の前回調査の56%から17ポイントも大幅下落して39%となった。一方、不支持率は前回20%から15ポイント増加して35%になった。ANNが同期間に実施した調査でも、支持率は38.4%で前月から17.5ポイント低下。不支持率は39.6%と17.1ポイント増え、不支持が支持を初めて上回った。

 

 事実を語らない安倍前首相の「釈明会見」、Go Toトラベル事業の突然停止に伴う混乱、コロナ感染状況の「過去最多」日々更新、吉川元農相の収賄容疑などなど、菅政権を取り巻く政治環境は刻々と悪化している。このまま年末年始を迎えて機能不全状態に陥るのか、それとも起死回生の一打を打ち出すことができるのか、菅政権は文字通り瀬戸際に追い詰められている。次回の世論調査結果で支持率が30%台を割るようなことになれば、何時政変が起きても不思議ではない。2021年の年明けは、風雲急を告げる時代になるかもしれない。(つづく)