〝解党的出直し〟を迫られている共産党、統一地方選挙前半戦の結果を見て(2)、共産党党首公選問題を考える(その8)、岸田内閣と野党共闘(43)

今回の統一地方選に関するさまざまな分析のなかで、朝日新聞(4月11日)の解説記事に興味を引かれた。「維新伸長、各党に危機感」と題する一連の記事の中で、自民党が統一地方選前半戦の結果をどのように評価しているか、党内の見解をいろんな角度から分析しているのである。その中にこんな一節があった。

――自民参院幹部は同日(10日)、大阪選出の参院議員に、選挙態勢を含めて「解党的出直し」が必要だと伝えた。茂木氏も首相官邸での政府・与党連絡会議で「大阪関西圏の体制立て直しという課題が明らかになった」と総括した。維新伸長の背景として、自民内では「維新候補は年齢が若く、自民はベテランが多すぎる」(参院幹部)と、世代交代の遅れを指摘する声が上がった。また、「既得権益打破」といった改革イメージへの共感が広がったとの見方もある。閣僚経験者は「有権者には自民が既得権の代表、維新が挑戦者のように映っている。オールド政治への飽きの表れ」と分析する。

 

私がこの記事に興味を持ったのは、この分析は大阪の自民党のみならず(それ以上に)京都の共産党にも当てはまると感じたからだ。今回の京都府議選および京都市議選の自民、共産、維新各党の候補者数と平均年齢を比較すると、自民54人(平均年齢55.9歳)、共産43人(同59.7歳)、維新20人(同41.9歳)となって、共産は自民よりも4歳上であり、維新との間には18歳もの開きがある。これでは、共産党が「オールド政治」を代表する政党だと見られても仕方がない。

〇京都府議選 自民30人(55.3歳)、共産23人(60.4歳)、維新9人(43.4歳)

〇京都市議選 自民24人(56.5歳)、共産20人(59.0歳)、維新11人(40.6歳)

〇合計    自民54人(55.9歳)、共産43人(59.7歳)、維新20人(41.9歳)

 

共産は府議選で12議席から9議席、市議選で18議席から14議席へ大きく後退した。渡辺京都府委員長は、「議席の後退は極めて残念。党組織の高齢化で党勢の回復が厳しかった」と述べ、多くの選挙区で維新の躍進を許したことは、「自民への批判票が共産ではなく、維新に流れた。有権者からすると維新が自民の補完勢力だと見ていないことが要因で、どう訴えを届けるか一層分析がいる。野党共闘が後退する中、われわれが単独で自民批判の受け皿となるのは力不足だった」と総括している(京都新聞4月11日)。

 

共産が後退した原因は、渡辺府委員長が言う通り、党組織の高齢化でベテラン議員の後を引き継ぐ若手候補者を発掘できなかったことにある。その結果、府議選では70代候補者4人が全て落選し、60代候補者は8人のうち4人しか当選できなかった。これに対して、市議選では70代候補者4人のうち3人、60代候補者7人のうち5人が当選して健闘したが、このままでいくと、4年後には府議選と同様の事態が起らないとも限らない。

 

 全国の道府県議選の結果は、共産当選者数は前回99人から75人となり、4分の1の議席を失った。唯一の「空白県」だった愛知で議席を得たが、公認候補の当選者ゼロの「空白県」が新たに新潟、福井、静岡、福岡、熊本5県に拡がった。また、大都市圏の埼玉、神奈川、京都、兵庫、奈良、和歌山では、3人ずつ減少するという大幅な後退となった。このことは、政令市議選での115議席から93議席へ(およそ5分の1)の後退と相応している(各紙4月11日)。

 

テレビ新潟(4月10日)によれば、1967年以来半世紀以上にわたって県議会で守ってきた議席を失った樋渡県委員長は、「今回初めて公認候補がゼロになってしまった。そういう意味では歴史的にすごく汚点を残した。もっと共闘を前進させて共産党の議席も増やしていくこと。とくに若い人のなかで支持・入る方を増やしていくことが私たちの直面する大きな課題だと思っています」と語ったという。ここにも、渡辺京都府委員長と同様の認識が示されている。

 

この事態は、大阪の自民党と同じく共産党自体が〝解党的出直し〟を迫られている状況だと言える。小池書記局長も4月10日の記者会見で、空白県の増加について「大変残念な結果だ。党の地力が低下している」との危機感を示した。しかし、小池氏は「力不足が背景にある」と語るだけで、「党の地力」をどう回復させるかについてはそれ以上踏み込まなかった。また(松竹・鈴木両氏の)除名問題の影響については、「いろいろな宣伝物なども含めて誤解を解く努力を全力でやったので、それが選挙全体に影響したとは思っていない」と述べたという(産経新聞4月11日)。

 

 共産党中央委員会常任幹部会の声明、「前半戦の教訓を生かし、後半戦の全員当選をめざして奮闘しよう」(赤旗4月11日)も同じく、(統一地方選の途中だということもあるが)道府県議員選や政令市議選での後退については数字を並べただけで、「いま何よりも大切なことは、前半戦のたたかいから、後半戦のたたかいに生かすべき教訓をただちに明確にして、後半戦での全員当選をかちとることに、あらゆる力をそそぐことです」として、総括はスルーした。ここでいう「教訓」とは、県議選で5議席を6議席に増やした長野県と高知県の成果に限定され、大幅な後退を示したそれ以外の府県の「教訓」は触れられていない。そして結びでは、「前半戦のたたかいで、『手紙』と『返事』のとりくみを通じた支部の変化、職場支部の決起、『真ん中世代』の選挙での新鮮な力の発揮など、新しい前向きの変化も生まれていることは重要です」と強調され、「7中総以来のすべての努力を生かし切って、後半戦での全員当選の実現に、新たな決意を固めてたちあがることを心から訴えるものです」と締めくくられている。

 

統一地方選前の赤旗(3月16日)では、「3月の幹部会の『訴え』は、3月、4月を強く大きな党をつくりながら選挙諸課題をやりぬいて統一地方選挙を必ず勝ち抜き、さらに「130%の党」へ前進していく――新しい歴史的挑戦をやりとげられるかどうかの〝勝負の2カ月〟だと訴え、その確かな土台をつくりだしつつあるのが、第7回中央委員会総会の『手紙』『返事』のとりくみであることを明らかにしました」とある。だが、赤旗(4月4日)の「3月の党勢拡大」に関する報告は、この間342人の入党申込者があったものの、日刊紙読者1197人減、日曜版読者8206人減、電子版読者26人増という惨憺たる結果に終わったことを明らかにしている。つまり、選挙前の集中的な党勢拡大の取り組みにもかかわらず、〝勝負の2ヶ月〟は最初から「勝負にならない」様相を呈しているのであって、小池書記局長のいう「党の地力低下」をどう克服するかについては、何の見通しも明らかにされていないのである。

 

読売新聞(4月11日)は、「日本維新の会と地域政党・大阪維新の会が、統一地方選前半戦で議席を拡大したのは、自民、立憲民主両党などへの批判票の受け皿になったことが大きい」と解説している。立憲が「市民と野党共闘」の戦列から離れ、維新と「国会共闘」を組んだことが、維新に「改革政党」のイメージを与え、延いては与党批判の「受け皿」になることを助けた。そのことが、既成政党への不満を募らせていた無党派層の関心を維新に向けさせるきっかけとなり、維新の躍進につながったのであろう。後半戦の行方を注視したい。(つづく)