維新・国民新会派の結成で危うい立憲民主党の行方、衆参5補選、統一地方選挙後半戦の結果から(4)、共産党党首公選問題を考える(その12)、岸田内閣と野党共闘(47)

 京都からは立憲民主党の幹部が多数出ている。泉健太代表(衆院京都3区)、山井和則国対委員長代行(同6区)、福山哲郎元幹事長(参院京都選挙区)などである。だから、その支えとなる地方議員が数多くいると思われているが、その数は驚くほど少ない。今回の統一地方選(前半戦)においても、府議3人(前回4人、定数60)、京都市議2人(前回2人,定数67)しか当選できなかった。41道府県議選全体(合計2260人)の結果と比べると、立憲は185人(得票率10.38%)を占めるが、うち京都は3人(得票率6.82%)にすぎない。17政令市議選(合計1005人)でも立憲は112人だったが、京都は2人にとどまった。いずれも、その非力さがわかるというものだ(朝日新聞4月11日)。

 

 京都府と京都市では、長らく自民、公明、旧民主系(立憲民主党、国民民主党)の国政与野党が相乗りして首長与党(いわゆる「オール与党体制」)となり、野党共産党と対立する構図が続いてきた。府議会、京都市議会では1桁の得票率しか獲得できない少数政党の立憲が、2021年総選挙では小選挙区6人のうち2人が当選し(得票率3区48.1%、6区45.2%、両区とも共産非擁立)、2022年参院選では京都選挙区(定数2、得票率26.5%)で議席を獲得するなど、自民に次ぐ勢力を維持してきた。その背景には、オール与党体制を支える連合京都の組織票に加えて、それを上回る(議員個人後援会に結集する)保守系支持層の分厚い支援があったからだとされている。京都の立憲は、いわば「オール与党体制」に依拠することによって国政での議席を得てきたのである。

 

 ところが、今回の統一地方選で維新が府議9人(前回3人)、京都市議10人(前回4人)と躍進し、府議会では維新・国民が新会派13人、京都市議会では維新・京都・国民が新会派18人を結成したことから、もはやオール与党体制をそのまま維持することができなくなった。「非自民・非共産=第2保守党」の結成を目指す前原国民代表代行は、維新と手を組むことでオール与党体制から離脱し、自民に代わる新しい政治勢力を立ち上げることに踏み切ったのだ。取り残された立憲は、このままオール与党体制にしがみ付くか、それとも孤立するかの道しか残っていない。

 

 オール与党体制を支えてきた連合京都も、国民と立憲との間で「股裂き状態」に陥っている。連合京都会長は、これまで通りのオール与党体制で現在の府市政を支えていくと表明しているが(毎日新聞5月2日)、傘下の労組が国民系と立憲系に分かれている以上、維新・国民会派が新しい首長候補を擁立するときは、選挙運動は事実上分裂せざるを得ない。京都でのこの状況は、国政での維新・国民の接近によって連合本部が近い将来直面する矛盾を先取りしたものと言えるだろう。

 

 維新・国民の新会派がオール与党体制の有力な対抗馬になれば、この数十年来続いた京都の古臭い体制に飽き飽きしている有権者にアピールすることは確実だ。保守系支持層は立憲と馴れ合う生ぬるい自民に不満を抱いているし、連合京都傘下の労働組合員は「鵺(ぬえ)」のような体質の立憲を必ずしも快く思っていない。共産がその「受け皿」になることには抵抗があっても、「非共産」を標榜する対抗馬であればそれほど大きなギャップもない。維新・国民が来年2月の京都市長選、あるいはそれより先に来るかもしれない総選挙で見栄えのする若手候補を擁立すれば、自公候補が惨敗してオール与党体制が崩壊するという〝地殻変動〟が起こる可能性も否定できない。

 

 オール与党体制の崩壊は、立憲の脆弱な政治基盤を直撃する。これまでのように連合京都の選挙支援を期待できず、加えて保守系支持層の多くが維新・国民新会派に流れるとなると、地方議員が少ししかいない立憲は踏ん張るだけの自力がない。前回の総選挙では泉・山井両氏は共産が候補擁立を見送ったことで楽勝したが、福山氏の場合は直近の参院選で維新女性新人候補に1700票差まで詰め寄られるという薄氷の勝利だった。次回総選挙で各党がガチンコで対決することになると、立憲現職が「全敗」する可能性も否定できず、国政にも大きな影響を及ぼすことになる。泉立憲代表は衆参5補選の「全敗」については「次回総選挙が迫っている」との理由で責任を回避しているが、自分自身の足元についても注意を払った方がいいのではないか。次回は共産が「不戦敗」を選択することはまずないからである。

 

 本稿の主題である共産の消長についても触れよう。京都で党首公選制などを主張した古参党員2人が除名されたことは、志位委員長をはじめ党中央の頭からの否定にもかかわらず、「ボディブロー」のように効いてきているというのが、京都でのもっぱらの評判である。しかもその影響は、京都だけに止まらず全国的に拡散しているのだから事態は深刻だと言わなければならない。党中央はこのような事態を打開すべく、統一地方選前から「130%の党」づくりを掲げ、この3月と4月は〝勝負の2カ月〟だとハッパをかけてきた。しかし、「3月の党勢拡大」(赤旗4月4日)は、入党申し込み者342人、日刊紙読者1197人減、日曜版読者8206人減、電子版読者26人増という惨憺たる結果に終わり、「4月の党勢拡大」はそれにさらに輪をかけたものになった。結果は、入党申し込み者146人、日刊紙読者4548人減、日曜版読者2万3104人減、電子版8人減と、党勢は加速度的に後退している(赤旗5月3日、全国都道府県委員長会議、小池書記局長報告)。

 

5月21,22日には第8回中央委員会総会が開催されて、「統一地方選の総活と教訓」「当面する政治任務と総選挙をたたかう方針」などが討議されるというが、来年の党大会までに世代継承を中軸に据えた「130%の党」をつくるための方針が依然として掲げられているところをみると、これまでの方針が抜本的に変わるとは思えない。党執行部が取るべき責任を取らず、「壊れたレコード」のように「130%の党」づくりを繰り返すだけでは、総選挙での結果は目に見えている。共産はこれからも日本陸軍のインパール作戦のように、破綻した作戦命令を変更も撤回もせず進軍を続けるつもりだろうか。(つづく)