「維新の独り勝ち」「共産の独り負け」だった、統一地方選挙前半戦の結果を見て(1)、共産党党首公選問題を考える(その7)、岸田内閣と野党共闘(42)

 統一地方選挙前半戦の投開票日(4月9日)、テレビ報道は「維新一色」に染まった。とりわけ関西では、大阪府知事・大阪市長ダブル選挙と奈良県知事選に維新が勝利(圧勝)したこともあって、報道の大半が維新に独占される始末。これでは、後半戦も維新の躍進が約束されたようなものだ。

 

これに比べて、共産の大幅な後退が目立った。京都新聞(4月10日)は、20面のうち12面を充てて「統一地方選大特集」を組んだ。1面トップの見出しは、「京都市会 自民第1党、維新躍進」「共産『牙城』崩れ大幅減、公明は全員当選」「府会も自民第1勢力、維新第2党、共産に並ぶ」というもの。京都府議選では、前回に比べて自民29→28,共産12→9,立民4→3と議席数を減らしたのに対して、維新が3→9と躍進した。公明5と国民4は現状維持だった。京都市議選(改選前欠員3)もほぼ同様の結果となり、自民20→19,共産18→14と後退したが、維新が4→10と躍進し、公明10→11,地域政党・京都党4→5,国民2→3も増えた。立民2は現状維持だった。

 

同紙は、この結果を「京都政界 三極構図へ」「維新 自共対決に参戦、京都市長選へ勢い」と分析している。また、とりわけ共産と維新に焦点を当て、「共産 現職相次ぎ落選、組織力の低下あらわ」「維新旋風 京都に浸透、『改革』訴え地位固め」「議席数 府会3倍、市会2倍超」との見出しを打った。京都新聞の解説はこうだ。

――共産党は、京都市議選で党の「牙城」とされる左京区の現職や市議団長を務める北区のベテランらが相次いで落選し、現有18から14議席へ大きく後退した。府議選では、京都市内のベテラン現職らが落選し、改選前から3減の9に沈んだ。全国トップの議席占有率を誇る京都での組織力の低下があらわとなり、退潮傾向が鮮明となった。北区では市議団長の井坂博文さん(67)が9選を逃し、同区で共産は56年ぶりに1議席を減らした。井坂さんは党勢の後退について「市議団長として全て私に責任がある。私たちの改革より維新の『改革』が浸透した結果で、台頭を許してしまった。まだまだやりたいことがあった」と声を落とした。

 

共産は選挙中から維新の躍進を終始警戒していた。赤旗にはしばしば維新批判の記事が掲載され、警鐘が鳴らされていた。小池書記局長は9日夜の記者会見で、統一地方選前半戦で注目された大阪府知事・大阪市長のダブル選や奈良県知事選で当選を確実とした日本維新の会に危機感を示し、「軍拡のみならず、核武装まで国会では主張する。そうした問題点を今後もしっかり有権者に訴え、『自民党政治の最悪の補完勢力』であるという本質を伝えていく努力を強めていきたい」と述べた。統一地方選後半戦に関しては「現有議席を絶対に確保して、一つでも多く増やしていくということに全力を注ぎたい」と語った(産経新聞4月10日)。

 

にもかかわらず、なぜかくも京都で(そして全国で)維新が躍進するのだろうか。そこには、共産党幹部の維新評価と有権者の抱く維新イメージとの間に大きなギャップがあることを窺わせる。共産はもっぱら政策面(とりわけ安全保障政策)から維新を「最悪の軍拡勢力」だと見ているが、有権者は必ずしもそんな深い読みをしているわけではない。維新が次々と派手に繰り出す「身を切る改革」に一見好印象をもち、財政改革で浮かせた財源を教育費の無料化に充てるとする政策を評価している(だけ)のことである。

 

同時に、若者の間で維新が「改革政党」であり、共産が「保守政党」だと見られていることも気になる点だ。若い首長が維新のリーダーになり、テレビの露出度を上げて華やかに活躍している一方で、共産党は党首公選制一つでさえ実行に移さない旧態依然とした政党だと見られている(松竹氏や鈴木氏の除名が行われた京都では特にそうだ)。有権者にとっては政党のイメージが決定的に重要であり、それが投票行動に直結する。政党がどんな立派な政策を掲げても、それを「聞く耳」がなければ有権者には届かない。落選した市議団長が「私たちの改革より維新の『改革』が浸透した結果で、台頭を許してしまった」と吐露しているのは、このことを意味している。しかし、こんな当たり前のことが、志位委員長をはじめ共産党幹部には理解できていないのだから、選挙に負けても仕方がないのである。

 

今回の統一地方選では、京都での投票率は府議選、市議選とも過去2番目の低さ(府議選40.2%、市議選39.8%)だった。このことは、政治一般への不信感に加えて、地方政治への関心が著しく低いのが原因だろう。革新府政・市政の時代には投票率が高く、有権者の多くが投票に足を運んだ。無党派層の人たちが政治に参加することで行政が活性化し、さらにそれが政治への関心を掻き立てた。その好循環が革新政党の停滞で断ち切られ、共産党の「牙城」といわれた京都でも革新政党の本格的な後退が始まったのである。この傾向を統一地方選後半戦で挽回できるかは予断を許さない。もし、前半戦の傾向がそのまま続くとなると、結果はもっと厳しいものになるだろう。次回は、道府県議員選挙の全国傾向を分析してみたい。(つづく)