党地方議員の高齢化が加速し、47都道府県のうち過半数が平均年齢65歳を越えている、人口減少にともなう地方自治体と党地方議員の分析(2)、共産党はいま存亡の岐路に立っている(その25)、岸田内閣と野党共闘(90)

 第3の問題は、党地方議員の高齢化である。全国の地方議員の平均年齢は、都道府県議員56.7歳(全国都道府県議長会、2019年)、市区議員58.8歳(全国市議会議長会、2021年)、町村議員64.4歳(全国町村議会議長会、2023年)である。2023年統一地方選挙によって多少は変化していると思われるが、まだ情報が更新されていないので、一応これを基準にして比較したいと思う。以下は、分析結果である。

 (1)党地方議員の議員数及び平均年齢は、総数2297人・63.4歳、都道府県議員113人・60.9歳、市区議員1553人・61.7歳、町村議員631人・68.0歳であり、全国平均よりそれぞれ都道府県議員は4.2歳、市区議員は2.1歳、町村議員は3.6歳上回っている。このことは、若い後継候補者を見つけるのが容易でなく、また見つかっても当選可能性が低いので、党地方議員の新陳代謝がなかなか進まないことを示している。田村委員長が言うように候補者を立てられず、選挙のたびに議員数が減少していく場合も多い。町村議員の高齢化が加速しているのはこのためである。

 (2)党地方議員の平均年齢を5歳刻みにして都道府県別に分類すると、「50代後半(55~59歳)」4都府県、「60代前半(60~64歳)」18道府県、「60代後半(65~69歳)」23県、「70代前半(70~74歳)」2県となる。総じて議員定数が多い大都市圏では平均年齢が低く、定数が少ない地方圏では平均年齢が高い。47都道府県のうち25(過半数)が「60代後半」に分布しており、これらの県では平均すると党地方議員は全て「前期高齢者」に属することになる。

 (3)都道府県議員は数が少ないので省略するが、市区議員1553人と町村議員631人の平均年齢は、地方圏においても都市集中が進んでいるためか、市区と町村の二極化が著しい。市区議員の場合は「50代後半」11都道府県、「60代前半」16県、「60代後半」18県、「70代前半」2県となり、平均年齢65歳未満が47都道府県のうち27(57%)を占める。これに対して町村議員の場合は「50代後半」ゼロ、「60代前半」8県、「60代後半」17都道府県、「70代前半」18県、「70代後半」2県となり、45都道府県(富山・大分は町村議員ゼロ)のうち平均年齢65歳以上が37(82%)となる。これでは全国ほとんどの町村議員が(超)高齢化していると言っても過言ではない。

 

 地方議員の中でも人口減少の影響を最も強く受けているのが町村議員である。町村はもともと人口規模が小さいうえに人口減少の度合が大きいので、その影響は予想を超えるものがある。社人研『人口の動向、日本と世界(人口統計資料集2023)』(厚生労働統計協会、2023年)によると、「平成大合併」によって2000年から2020年までの20年間に町村数は2558から929、町村人口(郡部人口)は2706万1千人から1038万8千人に激減した。これに伴い議員定数も3万8800人(2003年)から1万800人(2023年)、党所属議員も2103人から655人へ激減している。町村合併と少子高齢化が相俟って町村数と郡部人口、議員定数と党所属議員数が激減し、町村自治体における地方自治はいまや危機に瀕している。今後もし「令和大合併」が実施されるようなことがあれば、町村は更なる減少を免れず、場合によっては自治体そのものが消滅してしまう可能性も否定できない。

 

 このことを予測させるのが、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)から2023年12月に公表された『日本の将来推計人口(令和5年推計)』及び『日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)』である。前者は、2020年国勢調査を基に2070年までの50年間の全国将来人口、後者は2050年までの30年間の全国市区町村別の将来人口をそれぞれ推計したものである。これらはいずれも長期の合計特殊出生率(1人の女性が産む生涯子ども数)を高位(1.64)・中位(1.36)・低位(1.13)の3通りに仮定して推計したものであり、一般に公表されているのは中位推計に基づく数字である。しかし、これまでの人口推移は中位推計よりも下振れで推移しており、今回もその可能性は十分あると予測しておかなければならない。

 

 なお、全国推計には「長期参考推計(2071~2120年)」が附されており、2070年の合計特殊出生率を1.00から2.20まで0.20刻みに7通り仮定して、2070年と2120年の将来人口を推計している。合計特殊出生率が2070年以降も(現在のような)1.20の低水準で続く場合は8235万人(2070年)と3998万人(2120年)になり、人口置き換え水準に近い2.00に回復している場合は1億750万人(2070)年と1億610万人(2120年)になるとしている。出生率の回復がどれほど重大な課題であるかを長期参考推計は文字通り指し示している。以下、地域別将来推計人口を用いて自治体と党地方議員の行方を考えてみよう。

 

 社人研の地域別将来推計人口は、将来人口を都道府県別・市区町村別に求めることを目的としたものであり、2020年国勢調査を基に2050年までの5年ごと30年間について男女・5歳階級別人口を推計している。この人口推計は5年ごとの人口と指数で表されているが、本稿では2050年の推計人口指数(2020年=100)を用いて分析する。これは、全国1741自治体(23特別区、792市、926町村)の30年後の推計人口を指数化したものであり、「指数50」は2020年人口の5割(半数減)、「指数70」は7割(3割減)になることを意味する。

 

 なお、社人研推計は市区町村の中に20政令指定都市の175区を含めているが、本稿では東京23区(特別区)だけを区として扱い、政令指定都市の175区は含めていない。また福島原発災害を受けた3市10町村の個々の推計値はないので(「浜通り地域」として一括表示されている)、本稿では上記の3市10町村を除いた1728自治体(23特別区、789市、916町村)を将来人口を分析する場合の基本数とする。加えて、これに共産党が現在議席を有する自治体数を内数として併記し、人口減少が自治体および党所属議員の消長にどのような影響を与えるかを考えることにした。以下は、分析結果である。

 (1)社人研の2050年推計人口によると、30年後に人口が「半数未満=指数50未満」になるのは1728市区町村のうち336(19.4%)、789市のうち51(6.5%)、916町村のうち285(31.1%)である。町村はもともと人口規模が小さいので、これが「半数未満」になると、人口戦略会議ならずとも「消滅可能性」が大きくなる。30年後には、町村の3分の1が消えて無くなるかもしれない。

 (2)市の場合は「半数未満」が少ないように見えるが、「3割減=指数70未満」までを含めると365(46.3%)に跳ね上がる。市のおよそ半数近くが30年後には激しい人口減少に直面することになり、なかでも人口規模の小さい市は町村と同じ運命をたどる可能性がある。

 (3)人口が「半数未満」になる市町村を地方別にみると、北海道179市町村のうち67(10市・57町村、37.4%)、東北214市町村のうち81(7市・74町村、37.9%)、関東316市町村のうち19(2市・17町村、6.0%)、中部316市町村のうち42(5市・37町村、13.3%)、近畿227市町村のうち46(6市・40町村、20.3%)、中国・四国202市町村のうち49(11市・38町村、24.3%)、九州・沖縄274市町村のうち32(10市・22町村、11.7%)となる。つまり、北海道・東北は4割近く、近畿・中国四国は2割余が「半数未満」になる。

 (4)その結果、埼玉・千葉・東京・神奈川の「首都圏人口」は3691万4千人(2020年)から3524万8千人(2050年)へほとんど減少せず、全国人口に占める割合は29.7%から33.7%へ上昇して「東京一極集中」がますます加速することになる。その一方、北海道・東北は413万人、中部は422万5千人、近畿は446万3千人、中国・四国は278万2千人、九州・沖縄は272万2千人が各々減少し、国土一円は激しい人口減少に襲われることになる。

 

 これらの事態はまさに〝国難〟そのものであり、〝国家の危機〟ともいえる事態にほかならない。次回は、このような情勢の下で共産党が議席を持つ市区町村が直面する事態を、社人研の2050年推計人口を基に分析してみたい。(つづく)