国政政党を目指すと言いながら「大阪純化」する矛盾、地方分権型政党と言いながら「大阪主導=大阪独裁」にこだわる矛盾、「おおさか維新の会」は大阪以外では通用しない「橋下私党」となってやがて消えていくだろう、大阪ダブル選挙の行方を考える(その5)

 橋下大阪市長らが10月31日、新党「おおさか維新の会」の結党大会を開いた。大会には衆参18人の国会議員、19都府県からの地方議員ら約240名が出席し、橋下氏は「『おおさか』は改革の象徴。東京中心だった政治を変え、地方からしっかり改革を進める」と訴えた。また、「6人の大阪府議からスタートし、5年でここまで来た。次の5年以内には必ず国会で過半数を取れると信じている。原点に立ち返り、実行、挑戦、捨て身の政治を目指す」と抱負を語ったという。

新党代表には12月18日の大阪市長任期満了で政界引退すると表明している橋下氏が暫定的に就き、幹事長には松井知事、政調会長には市長選に出馬表明した吉村氏がそれぞれ就任した。新党綱領では「地方分権型政党」をうたい、憲法改正による首相公選制や一院制などの統治機構改革、大阪の「副首都」化による東京一極集中の打破などを掲げた。新しく登場した大阪の「副首都」を除けばそれほど目新しいものはない。

それよりも私が注目したのは党規約の方だ。10月31日の朝日・毎日両紙には新党の組織図が図解入りで詳しくは出ているが、「大阪色」があまりにもドギツイのに驚く。以下、私の解説を含めて新党組織の主な特徴を分析してみよう。
(1)大阪は従来からの地域政党大阪維新の会」をそのまま引き継ぐ。
(2)他の地域は「おおさか維新の会」の支部として、都道府県ごとに地域政党「○○維新の会」を結成する。
(3)大阪以外の全ての地域政党「○○維新の会」が参加して、政治団体日本維新の会」を構成する。
(4)党本部を大阪に置き、執行部にあたる常任役員会は、大阪維新の会からの「常任役員」と大阪以外の維新の会からの「非常任役員」で構成する。
(5)「常任役員」は、代表、幹事長、大阪府議団・大阪市議団・堺市議団の団長および代表が選任する者で構成される(ただし代表、幹事長は大阪以外からも可、共同代表に片山参院議員を想定しているためか)。
(6)「非常任役員」は、大阪以外の地域政党が参加する「日本維新の会」から互選する。ただし、任期は1年、役員数は代表が決める。

この党規約を一目でも見れば、橋下氏らが「大阪純化」にこだわって新党「おおさか維新の会」を結成した理由と目的がよくわかる。党運営など全ては大阪維新の会からの「常任役員」で実権を握り、大阪以外の支部は「非常任役員」の立場でしかなく「添え物」扱いにされている。最初から大阪維新の会は「一級」、大阪以外は「二級」と格付けされ、大阪以外の支部は参加するが権限は与えられない仕組みになっているのである。これでは植民地国家における「本国=大阪」、「植民地=大阪以外」の政治構造と寸分も違わない。

さらに、役員数が代表の意のままになる点も「大阪主導=大阪独裁」の傾向を一層強めている。常任役員も主要ポストを除いては代表が選任する「その他役員」を幾らでも加えることができるし、一方、非常任役員は任期1年の上に代表が役員数を決める(制限する)というのだから、これでは代表が思いのままに役員数を増減して党運営を操作することができる。発展途上国でもこれほど露骨な政党組織はいまどき珍しい。橋下氏らは近代政党組織を前世紀に戻すつもりなのだ。

「おおさか維新の会」は、「国政政党」と言いながらその実体は「大阪地域政党」そのものであり、「地方分権型政党」と言いながらその本質は「大阪主導(独裁)政党」でしかない。こんな規約を19都府県の地方議員らがシャンシャン大会で採択したのは驚き以外の何物でもないが、「おおさか維新の会」の本質が明らかになるにつれて地方議員は今後有権者の厳しい批判にさらされるに違いない。

国政政党を目指すと言いながら、橋下氏らは「日本維新の会」(2012年9月結党)、「維新の党」(2014年9月結党)の国政政党化に悉く失敗し、挙句の果てにたどり着いたのが今回の「おおさか維新の会」だった。だが政党を作っては壊し、壊しては作るうちに「橋下新党」はやせ細り、「橋下新党=橋下私党」の本質が誰の目にもあらわになってきた。大阪ダブル選の厳しい洗礼を受けて、「おおさか維新の会=橋下私党」が消えていく日はそう遠くない。(つづく)