「双葉町住民意向調査」(速報版、2013年2月5日)において「20ミリシーベルト以下」の帰還基準は住民に受け入れられなかった、中間貯蔵施設の現地調査受け入れが復興計画に与える影響(9)、福島原発周辺地域・自治体の行方をめぐって(その34)、震災1周年の東北地方を訪ねて(104)

大熊町の住民意向アンケート調査について書いたその日(2月5日)、奇しくも双葉町の調査結果が復興庁から公表された。大熊町の調査期間は2012年9月、双葉町は2013年1月だから、両町の調査期間には約4カ月のタイムラグがあり、この間の住民意向に変化があるかどうかを知るうえでの貴重な調査結果だ。また、井戸川町長の主張がどの程度町民に受け入れられているかについても明らかになるだろう。双葉町の調査対象は、中学生以上全員6239人、回収数3710人(回収率59.0%)である。

 まず双葉町への帰還については、「自宅の補修・再建、インフラの復旧が終わればすぐに戻りたい」と明確な帰還意向を示した住民が1割(10.3%)、「そもそも双葉町には戻りたいと思わない」と帰還拒否を表明した住民が3割(30.4%)、「条件が整えば戻りたい」「現段階ではまだ判断がつかない」「無回答」といった中間的態度を示した住民が6割(28.4%、26.9%、4.1%)と分かれた。

 次に「条件が整えば戻りたい」と回答した1052人に対する「帰還の前提条件で重視するもの」(3つまで回答)については、「放射線量が十分低くなること」と回答した人が3/4(75.3%)に上った。さらに放射線量の低下を帰還の前提に挙げた727人(中高校生65人を除く)に対する「どの程度の線量になれば帰還できると考えるか」との質問に関しては、「森林・田畑を含めた双葉町の全体が1ミリシーベルト以下になること」(51.4%)、「双葉町の主要な市街地が1ミリシーベルト以下になること」(12.1%)、「自宅周辺が1ミリシーベルト以下になること」(16.4%)との内訳になり、“1ミリシーベルト以下”が圧倒的多数の8割(79.9%)を占めた。

この「1ミリシーベルト以下」8割という数字は、「20ミリシーベルト以下」を早期に帰還をめざす「避難指示解除準備区域」とした国の帰還基準(区域再編基準)を真っ向から否定するものであり、井戸川町長の主張を全面的に支持するものとなっている。この回答に従えば、双葉町住民の「条件が整えば戻りたい」(28.4%)は事実上の「戻らない(戻れない)」ことの表明であり、過半数の6割(58.8%)が帰還を拒否していることになる。

原発周辺地域・自治体に関する連載日記の5回目あたりに、私は「双葉町の復興問題は、短期・中期・長期の“三重構造”になっている」と書いた。短期は役場機能の再移転問題、中期は「仮の町」建設問題、長期は故郷への帰還問題である。だが、住民の多くが国の帰還基準である「20ミリシーベルト以下」を拒否している以上、双葉町ではもはや「帰還」という選択肢が無くなることになる。

とすれば、次の選択肢は「仮の町」ということになるが、「仮の町に移り住みたい」と回答したのは僅か1割に満たず(6.7%)、残りは「現時点では判断できないが、仮の町の具体的な姿が示されれば移り住むことを検討したい」(45.5%)、「仮の町ができても住むつもりはない」(42.8%)に分かれた。大熊町の場合は、「仮の町(復興拠点)に居住する」(22.8%)、「現時点では判断できない」(50.8%)、「居住しない」(24.2%)という内訳だから、双葉町の方が若干否定的傾向が強いといえる。

「仮の町に住みたい」「検討したい」と回答した1851人に対する「仮の町」に移転するまで待つことができる期間についても、「2年以内」(36.0%)、「3年以内」(26.1%)、「4年以内」(4.6%)、「5年以内」(19.5%)となって、「3年以内」が6割強(62.1%)、「5年以内」9割弱(86.2%)となった。これは大熊町と場合とほぼ同じである。

一方、「仮の町ができても住むつもりはない」と回答した1471人(中高校生117人を除く)の理由(複数回答)は、「仮の町がいつできるかわからないから」(32.1%)、「これから自宅を買うつもりだから」(31.1%)、「現在の避難先の暮らしに慣れたから」(29.4%)、「双葉町の町民が一緒に住むことにそれほど魅力を感じないから」(24.2%)などが主なものだ。

こうした調査結果をみると、双葉町の中期の課題である「仮の町」構想の実現はなかなか容易ではなさそうだ。それならどうするのか。「仮の町」構想にこだわる双葉町の住民アンケート調査をさらに分析しよう。(つづく)