復興庁の“原発周辺地域無人化計画”および“広域合併移住計画”に注目しよう、中間貯蔵施設の現地調査受け入れが復興計画に与える影響(6)、福島原発周辺地域・自治体の行方をめぐって(その31)、震災1周年の東北地方を訪ねて(101)

 中間貯蔵施設候補地の現地調査が始まれば、地元自治体は否応なく避難区域住民の“帰還可能性”についての判断を迫られることになる。いつまでも判断を引き延ばして、「虚構の世界」に浸っているわけにはいかないからだ。国の方でも「帰還困難区域」「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」の区域再編を機に、次の段階への新たな準備を始めたようだ。

この動きに関して誤解を恐れずに言えば、それは原発事故直後から国が意図していた原発周辺地域・自治体の“無人化”と当該地域住民の“広域移住”を計画的に進めようというものであり、以下のような基本方針から構成されている(と私は考えている)。

(1)帰還不能区域(帰還困難区域ではない)を広域指定して、当該区域を永久に“無人化”(非居住区域化)する。
(2)帰還不能区域では、除染もインフラ復旧も行わない。
(3)帰還不能区域では、放射性廃棄物の中間貯蔵施設に加えて最終処分場の設置を計画する、もしくは中間貯蔵施設を最終処分場へ転換する。
(4)現在避難中の当該地域住民は、個々の自治体が「仮の町」を設置して受け入れるのではなく、国と福島県が主導して“広域(移住)ニュータウン”を建設して受け入れる。
(5)“広域(移住)ニュータウン”の計画と建設を契機に、原発周辺自治体の広域合併を推進する。

このような国の方針をそのまま発表すれば、避難住民や関係自治体の間で蜂の巣を突いたような騒ぎになることは確実なので、目下真意は伏せられたままだ。しかしその意図を濃厚に窺わせる文書が、すでに昨年末に復興庁から発表されていることに関しては案外誰も気づいていない。『福島復興の課題と今後の進め方について』(原子力被災者生活支援チーム、2012年11月30日)と題する文書がそれである。

この復興庁文書は、原発周辺地域・自治体の今後の復興のあり方に関する国の方針を事実上示したもので、避難区域住民の帰還可能性を考えるうえでの重要な判断材料になる。以下は、その抜粋である。

[避難の長期化に伴う問題提起]
(1)避難が長期化することによって、帰還意向のある住民が減少する可能性が存在。仮に帰還する住民が少なくなるのであれば、避難前の町並みには戻らないことも念頭においた新たな町作りの検討が必要。
(2)今後、①長期避難先及び集団での移住先の環境整備、②新たな町作りまでの間の残された土地・建物の特別な管理が必要。

[対応の方向性]
(1)避難が長期化せざるを得ない地域の特定
  ①高線量区域が町の少なくない部分を占めている。
  ②東京電力福島第一原子力発電所に近接している。
  ③生活に必須なインフラや生活関連サービスの復旧に長期間を要する。
  ④帰還する住民の数が限定的であると見込まれる。
(2)これらの地域における除染・インフラ復旧の取り組み方針を含めたより中長期・広域の復興の将来像を提示
  ①中長期(10年後も視野)
  ②広域(複数町を視野)
  ③復旧よりも抜本的な町づくり

 文書はメモ程度の簡単なものだが、ここで提示されている方針にはきわめて重大な内容が含まれている。具体的に言うと、これまで原発周辺自治体は、避難住民の帰還を前提としてそれぞれ個別に復旧・復興のまちづくり構想を描き、帰還までの暫定期間を「仮の町」で過ごすという方向を検討してきた。いわば“現況復旧”を計画コンセプトとする復興まちづくり構想である。

 ところが上記の復興庁方針は、避難が長期化せざるを得ない地域に対して、複数町にわたる広域の“復旧よりも抜本的な町づくり”を計画コンセプトにして「中長期・広域・復興将来像」を示したところに、これまでの個別自治体の復興構想とは根本的な違いがある。つまり原発周辺自治体のなかでも特に放射線量が高く、避難が長期化せざるを得ない双葉町大熊町浪江町富岡町などに対しては、住民の帰還を前提とする復旧・復興のまちづくり構想ではなく、住民の帰還を前提としない広域的な「ニュータウン計画」の建設を複数町合同で進めることを促したものと受け取れる。

 この新しい方針が今後どのようなプロジェクトとして推進されていくのか、復興庁が福島県および関係市町村と連携して目下実施中の「避難区域等における住民意向調査」を通して考えよう。(つづく)