双葉町でいま求められているのは「帰還計画」でもなければ「仮の町」建設でもない、避難生活の改善こそが最大の課題なのだ、中間貯蔵施設の現地調査受け入れが復興計画に与える影響(10)、福島原発周辺地域・自治体の行方をめぐって(その35)、震災1周年の東北地方を訪ねて(105)

双葉町(当局)の場合、井戸川町長の「帰還は30年後」発言もあって、とりわけ「仮の町」への政策的関心が強いように思われる。もし帰還時期が30年後ともなれば、その間の町民の避難生活を支える「仮の町」がどうしても必要になるとの思いがそうさせるのであろう。「仮の町」に関する“想定質問”が至る所で用意され、これら一連の質問に関する回答は、復興庁や福島県の意図する「中長期・広域・復興の将来像」の現実性を占う格好のデータとなっている。

まず想定質問の第1は、「仮の町について特に設置を希望する自治体がある」ことへ関心を示した半数近い回答者(1678人・45.2%)に対して、設置を希望する自治体(複数回答)に関する質問である。回答は福島県内避難者と県外避難者に分けて集計してあるので、県外避難がその後の居住意向にどのような影響を与えているかがわかりやすい。

結果は、県内避難者の場合は圧倒的に「いわき市」に集中しており(72.7%)、郡山市(18.9%)、南相馬市(15.5%)以外の自治体名はほとんど上がらなかった。一方、県外避難者の場合は「県外市町村」(合計、28.1%)と「特に希望はない」(18.0%)に一定程度分散したものの、それでも「いわき市」(52.9%)が群を抜いて高かった。これは、いわき市双葉町と同じく「浜通り」にあって土地の気候風土に馴染みがあり、加えて人口35万人を超える県内最大都市であることから、雇用機会はもとより医療・福祉・教育・購買施設などの生活インフラが整っていると見なされているためであろう。

しかし、上記回答者に対する「仮の町が生活拠点としての条件が満たされれば」という第2の想定質問になると、「福島県内であれば、どの自治体でもそれほどこだわらない」3割(29.9%)、「福島県内・県外であれ、どの自治体でもそれほどこだわらない」2割(18.5%)を合わせて半数近くになり、選択の幅が若干広がるようになる。ただし「希望する自治体でなければ移り住まない」が1/3強(35.5%)もあって、そのなかで「いわき市」の希望が8割を占めるのだから、依然としていわき市への集中傾向は強いといわなければならない。

そうなると、「仮の町ができても住むつもりはない」と回答した全体の4割強(中高校生117人を除く1471人)の人たちは、いったいこの先どうなるのであろうか。その回答は、「今の避難先(居住先)の住居で継続して暮らしたい」(36.4%)と「今の住居から同じ市町村内に引っ越したい」(12.5%)を合わせて約半数(48.9%)が現在の避難先を選択し、残りが「他の市町村へ引っ越したい」(16.1%)と「現時点ではわからない、判断できない」(30.3%)に分かれる。

 以上の結果を要約すると、双葉町の住民意向はおよそ以下のようになる。
(1)現在のところ、明確な帰還意向もしくは「仮の町」への移住意向を示した町民は1割以下に過ぎない。
(2)放射線量が1ミリシーベルト以下にならない限り、町民の6割が帰還しない意向を表明している。
(3)「仮の町」に関心を示す町民は半数近く存在するが、設置を希望する自治体は「いわき市」に集中している。ただし生活拠点としての条件が整えば、一定数が県内外市町村に分散する可能性もある。
(4)「仮の町」に移住する意思を持たない町民は、半数が現在の避難先自治体での居住継続を希望し、他の自治体への移転希望は少数である。
(5)どの質問においても、「現時点ではわからない、判断できない」とする回答が3割程度を占め、困難な避難生活の下で将来を見通せない町民が多数存在していることを窺わせる。

以上から結論的に言えることは、双葉町の場合は大熊町と同じく、現時点では早急な帰還計画も「仮の町」計画もおよそ実現不可能だということであり、いま切実に求められているのは、今後長期にわたる避難先での生活支援の強化と居住環境の改善だということである。また避難先での問題を解決するための個々の家族レベルの移住支援も欠かせない。

このことは「双葉町に戻らない場合、今後の生活に求める支援」(複数回答)にも明確にあらわれており、「双葉町に残された土地・建物等の財産管理への支援」(60.1%)、「双葉町からの継続的な情報提供」(58.8%)、「双葉町外における自宅の再建または居住の確保への支援」(58.1%)、「継続的な健康管理の実施」(54.3%)の4項目が突出して高いことが何よりも物語っている。(つづく)