「維新伸び悩みーーー」、選挙戦終盤に向けた各紙世論調査が出揃った、ひょっとすると橋下維新の“雪崩的大敗“が起るかもしれない、堺市長選の分析(その18)、改憲勢力に如何に立ち向かうか(48)

 読売新聞は9月19日から21日、残り各社は20日から22日と若干のずれはあるが、各社の堺市長選に関する市民世論調査が一斉に行われ、23日に調査結果が公表されて大方の見取り図が浮かび上がってきた。結論的に言えば、竹山陣営が橋下維新をリードしており(どれぐらいリードしているかは不明)、しかもその根拠が「大阪都構想」の賛否に対する有権者の態度と直結しているので非常に分かりやすい結果となった。

 つまり、大阪都構想に反対する有権者はほとんどが「竹山支持」であり、賛成する人は「維新支持」が多いというように、大阪都構想への賛否によって有権者の候補者選択が明確に分かれたのである。これは、橋下維新が大阪都構想を最大の争点にして市長選に臨んだことの反映であり、選挙結果がそのまま大阪都構想の評価につながることになった点でも意義深いことだと言える。またこの結果は、堺市はもとより大阪府大阪市も含めて今後の大阪都構想の行方に決定的な影響を与えるだろう。

 各紙のデータ―を検証しよう。
(1)読売新聞:9月19〜21日、回答者数810人、回答率57%
 「大阪府大阪市堺市を統合再編すべきだ」22%、「府と大阪市を統合再編」24%、「統合再編は必要ない」46%で、大阪都構想への堺市の参加については「府と大阪市を統合再編」と「必要ない」を合わせて70%が否定的な回答を寄せた。9月上旬の前回調査では、堺市内では「府と大阪市堺市を統合再編」31%。「府と大阪市を統合再編」と「必要ない」を合わせて60%だから、僅か2週間余りで反対が10%も増えたことになる。

(2)毎日新聞:9月21〜22日、回答者数1006人、回答率不明
 「堺市が都構想に入ることに賛成」27%、「反対」42%、「わからない」28%で、これも多くが反対の意思を示した。

(3)朝日新聞:9月21日〜22日、回答者数1192人、回答率60%
 「大阪都構想に賛成」19%、「反対」44%、「その他、答えない」37%で、反対が賛成を大きく上回った。今年2月の大阪府民を対象にした調査では、賛成48%、反対36%だったので、今回の堺市民調査では大阪都構想に対する賛否が逆転したことになる。半年余りで維新に対する風向きが“逆風”に転じたのである。

(4)日経新聞:9月20〜22日、回答者数514人、回答率66%
 「大阪都構想に賛成」30%、「反対」48%、「どちらともいえない、わからない、答えない」22%で、ほぼ半数が反対だった。

(5)共同通信:9月21〜22日、回答者数・回答率不明
 「大阪都構想堺市が加わることについて賛成」15%、「どちらかといえば賛成」20%、「どちらかといえば反対」23%、「反対」28%、「わからない、無回答」14%という結果で、これを集約すると賛成35%、反対51%となり、反対が過半数を占めた。

 以上、私はこれまで数多くの世論調査を見てきたが、各社揃ってこれほどはっきりした結果が出たケースは数えるほどしかない。一言でいえば、大阪都構想堺市が参加することへの賛否は、「賛成」が19%〜30%、「反対」が42%〜70%と「賛成」と「反対」が明確に2つのグループに分かれており、しかも「反対」が「賛成」の倍以上になったことを見れば、もはや堺市民の「大阪府構想=NО!」という“民意の所在”は明らかであろう。

 次に、政党支持分布(毎日新聞のみ)をみると、自民24%、維新16%、公明6%、共産6%、民主5%、みんな2%、支持政党無し34%というものである。これを支持候補別に分けると、竹山支持は自民・民主・共産3党を合わせて35%、これに対置する維新が16%、中立(自主投票)が公明・みんなで8%、無党派34%と言う内訳になる。維新支持率が全国的には数パーセント以下に低迷している昨今、堺市の16%は如何にも多いが、これは市議会49議席のうち、維新が公明12議席に次ぐ10議席を占め、一定の影響力を持っているためだ。

 しかし、この中で注目しなければならないのは、無党派の比重が34%と非常に高いことだろう。私はこれまで公明がキャスティングボートを握るとしてその動向に注目してきたが、ここでは無党派層の動向(投票率と各候補支持率)がそれにも増して市長選に大きな影響を与えることに留意しなければならないと思う。

 そこで、注目される公明支持層と無党派層に絞って候補者別の支持率をみよう。
(1)読売:公明(竹山7割、維新2割)、無党派(竹山5割、維新2割)
(2)毎日:公明(竹山4割、維新1割)、無党派(竹山4割、維新1割)
(3)朝日:公明不明、無党派(竹山7割、維新不明)
(4)日経:公明(竹山6割、維新3割)、無党派(竹山4割、維新2割)
(5)共同通信:公明(竹山6割、維新不明)、無党派(竹山5割、維新1割)

 ここで言えることは、まず公明支持層に関しては竹山支持が4〜7割を占め、維新支持は1〜3割にとどまっていることだ。また無党派層においても竹山支持が4〜7割に達し、維新支持は僅か1〜2割でしかない。つまり現段階においては、公明支持層と無党派層は明らかに竹山候補に傾いているといえる。橋下維新は公明対策に懸命だといわれるが、この数字を見る限り効果を挙げていない。

 加えて、維新にとっての最大の懸念材料は、無党派層の維新支持率がいままでにはなかったぐらい(恐ろしいほど)低いことだろう。維新はこれまで無党派層の「ふわっとした人気」に依拠して選挙戦を戦ってきた。それが選挙のプロたちを困惑させ、また維新に対する恐怖感の源泉となってきた。選挙前の予想に反して、蓋を開けてみると維新が圧倒的な票を集めて勝利するといった現象が続いてきたからだ。だがこの数字を見る限り、維新の神通力はもはや雲散霧消しているといわざるを得ない。維新最後の“頼みの綱”が切れたといっても間違いないだろう。

 ひょっとすると、橋下維新は“雪崩的大敗”を被るかもしれないーー。私はいまそんな予感(期待とも言ってよいが)を抱いている。各紙が竹山が先行するものの「予断は許さない」と言っている時に、なぜそのような大胆無謀なことを言うのか。次回はその説明をしよう。(つづく)