2014年東京都知事選は単なる地方首長選ではない、それは事実上の“国政(代理)選挙”なのだ、東京都知事選を考える(その1)

 新春早々から関西在住の私が東京都知事選のことを書くなんて夢にも思わなかった。地方自治体の首長選は、その土地独自の事情や背景があってよそ者にはわからないことが多すぎる。だから、土地勘のない人が書くととんでもない誤解が生じることが多い。そんなことで、私は比較的事情をよく知っている大阪のことをもっぱら書いてきた。

 ところが昨日1月14日、細川元首相が都知事選に出馬表明し、同時に小泉元首相が全面的に応援することを約束したニュースに接して気持ちがガラリと変わった。それはこの都知事選が単なる地方首長選ではなく、事実上の“国政(代理)選挙”になると直感したからだ。

 周知のごとく、安倍政権は2016年7月の次期参院選までに国会を解散せず、この「黄金の3年」のうちにあらゆる反動的政策を駆使して国家改造を成し遂げようとしている。国家安全保障会議の創設、特定秘密保護法強行採決集団的自衛権の容認など反動立法・施策が目白押しだ。そして、その最終目標が憲法改定にあることは言うまでもない。

 安倍政権は当初、「改憲のマスターキー」である憲法96条の3分の2条項を2分の1条項に変えることによって憲法改定を目論んだ。ところが案に相違して「96条の会」の運動など国民世論の抵抗が強く、改定を強行すれば国民投票で負ける可能性が出てきた。国民投票は「憲法改定」という国政最大のイッシュ―を争点とする事実上の国政選挙であり、もし国民投票に敗れれば「黄金の3年」が台無しになり、安倍政権が崩壊するおそれすらあったからだ。

 ここから安倍政権の戦術転換が始まった。それは国民の直接的な国政参加をあくまでも回避し、「黄金の3年」を利用して、衆参両院での圧倒的多数を背景に遮二無二反動立法・施策を強行すると言う戦術である。それは国政選挙と言う国民の政治参加の道を封じ、国民を観客席に置いたままで勝手放題に反動政治を展開しようとするファッショ政治の一形態にほかならない。

 それでは、私たち国民はいったいどうすればよいのか。確かに政治集会や街頭行動も強力な政治参加の形ではあるが、しかしそれだけでは権力構造を変えることはできない。安倍政権の権力基盤が衆参両院での圧倒的な多数派権力にある以上、彼らに都知事選を通して強力な一撃を加え、次期国政選挙を通じて彼らの議席を国民の手に取り戻す以外に方法がないのである。

 結論的に言えば、私は2014年東京都知事選を事実上の“国政(代理)選挙”にしなければならないと思う。その意味で政治的立場は異なるが、小泉元首相の「国政に影響を与える知事選」という政治判断と私の時局認識は完全に一致する。また「原発ゼロでも日本は発展できるというグループと、原発なくして発展できないというグループの争いだ」という小泉氏の争点明確化もきわめて適切な課題提起だと思う。

 言うまでもなく都知事選は東京都の首長を選ぶ選挙であるから、政策も原発だけでないのは勿論だ。だが、有権者は必ずしも政策を総合的に判断して候補者を選ぶものではない。選挙の争点はその時点(瞬間)における有権者の関心の所在によって決まるのである。それでは、目下の国民・都民の最大の関心事は何か。それは国民がこの3年間国政選挙の機会を封じられたまま、安倍政権による反動政治が加速化する現状をこのまま座視してよいのかということだろう。

 このような認識に立てば、私は2014年東京都知事選を首都の単なる首長選だと捉えてはならないと思う。また従来の「保守 VS 革新」の観点(だけ)からも捉えてはならないと思う。今回の細川・小泉連合の本質は、安倍政権の目指す新自由主義極右反動路線をめぐる支配層の対立と分裂が「原発ゼロでも日本は発展できるというグループと、原発なくして発展できないというグループの争い」となってあらわれたと考えるべきなのである。そして革新勢力はこの対立の本質を見抜き、最悪の反動政権である安倍政権に一撃を加えるべきだと思うのである。

 すでに、圧倒的多数の国民はこの本質を見抜いている。そして都知事選が事実上の“国政(代理)選挙”になることを望んでいる。今日のテレビニュースでも、緊急世論調査の結果は圧倒的に細川氏の出馬を歓迎し、原発が争点化することに賛意を表するものだった。革新勢力はこの天から与えられた「千載一遇の機会」を逃してはならないと思うのである。

 前回に引き続いて今回も革新勢力の候補として立たれた宇都宮弁護士に関しては、多くの友人からその正義感あふれる人柄、優れた見識、果敢な実行力など、これ以上ないと思われる卓越した資質の持ち主だと聞いている。その意味では誠に都知事革新候補としてはふさわしい方であるが、今回ばかりはもう一段高い見地に立って考えてほしい。新聞紙上でも同氏は細川氏との政策討論を提案しておられ、必ずしも連携の可能性を否定しておられるわけではない。全ての政策で合意することは難しいだろうが、少なくとも2014年東京都知事選が現段階の政治情勢に与える意義や位置づけに関しては忌憚なく意見を交換してほしい。そして少なくともこれ以上の反動政治の行方を阻んでほしい。(つづく)