細川・小泉連合ははたして信用できるのか、脱原発候補者「一本化」をめぐって議論は沸騰した、東京都知事選を考える(その2)

 東京都知事選については堺市長選のように連日ブログを書くつもりだった。ところがここ2、3日、少なくない友人から「ちょっと待て」とのシグナルが送られてきた(今も続いている)。「もう少し様子を見よう」、そうしないと「軽々に判断できない」と言うのである。先日の研究会後の飲み会でも議論は沸騰した。議論の大勢は2:1で私が少数派、多数派は「一本化は難しい」というものだった。

 理由はいろいろあるが、それは結局「細川・小泉連合は信用できない」と言うことに尽きるようだ。要するに、これまで悪行の限りを尽くしてきた両氏がいまさら「脱原発」を唱えても信用できない、だからあくまでも宇都宮氏でいくべきだというのである。私の友人はほとんどが生え抜きの革新派だから、言うことには筋が通っている。私もまた(一面では)その通りだと思う。

 もう少し議論の中身を具体的に言うと、議論は3つに分かれた。最も多かったのは宇都宮氏を擁立しての主戦論で、「革新の大義」を掲げて最後まで果敢に戦うべきだと言うもの(しかし勝てるとの言葉はなかった)。次は別に一本化しなくとも細川氏が通るという冷めた意見(これは案外多かった)。最後が私のような一本化論である。どこで議論が分かれたのだろうか。それは安倍政権とどう対決するかという戦略論ともかかわっているように思う。

 確かに中長期的にみれば、安倍政権の没落は避けられないだろう。だが彼がたとえ退陣したとしても、そのときに原発が再稼働され、国家安全保障会議が確立され、集団的自衛権行使など実質的改憲が強行され、TPPへの参加が決まっているような事態が現出しているのであれば、それはこの間の政治闘争が歴史的敗北を喫したことになる。逆に言えば、安倍政権は「戦後体制の総決算」という中曽根元首相以来の歴史的使命を達成したことになり、戦後日本の国家改造に成功したことになるのである。

 したがってこのような事態を“いま現在”において阻むためには、たとえ細川・小泉のような自民党出身の元首相であっても、安倍政権に反対する立場をとるときは「連携すべし」というのが私の意見である。また「脱原発」はシングル・イッシュ―であって政策としては不十分だという意見もみられるが、私は必ずしもそうは思わない。福島第一原発事故に際して首都圏一帯が高レベルの放射能汚染から(奇跡的に)救われたのは太平洋側に向かって吹いた当時の風向きの所為であって、もしそうでなければ(北からの風が吹き続けていれば)(放射能雲で覆われた地域に雨や雪が降っていれば)首都圏3千万人の緊急避難が現実のものになっていたのである。

 細川・小泉元首相の歴代の悪行については、数々の批判が革新政党の機関紙などで前面に出されている。彼らがいまもそれを肯定し反省していないのであればとうてい許すことはできないが、少なくとも原発政策については「間違っていた」と反省しているのだから、それを「本心ではない」と断ずるのは適切ではないだろう。過ちを改めれば許すのが世の常なのである。

 また細川氏については小選挙区制導入の張本人であることは間違いないにしても、彼がそのことを反省しているにもかかわらず依然として批判し続けるのは妥当ではないだろう。もしこのような批判が正当化されるのであれば、河野洋平自民党総裁野中広務自民党幹事長に対しても同様の批判が向けられるべきであって、細川氏だけをことさらに取り上げるのは「ダブル・スタンダード」(二枚舌)だと言われても仕方がない。

 候補者一本化については社民党党首は前向きだと伝えられるが、共産党幹部は「政策が異なる」との理由で明確に否定している。だが候補者が異なれば政策が異なるのは当たり前のことだから、「政策が異なる」のはスタート地点のことであってゴール地点のことではない。一本化しようとする意志があるのであれば、異なる政策のすり合わせをすればよいだけのことだ。

 それに首長選において「政策が異なる」との理由で選挙協力しないのが共産党の原則なのであれば、最近の大阪での一連の首長選でとった共産党の態度は説明できないことになるのではないか。2011年大阪市長選では共産党はわざわざ自党候補を降ろしてまでこれまで敵対してきた相手陣営の支援に踏み切った。直近の岸和田市長選では、れっきとした自民党籍のある元市議会議長を勝手連的に(全力を振り絞って)応援した。同候補の選挙事務所には安倍自民党総裁や石破幹事長の激励文が大書して貼られていたにもかかわらずである。そういうことを差し置いて「政策が異なる」との理由で一本化できないのであれば、共産党は西と東で首長選の原則が違うという「ダブル・スタンダード」政党になり、ご都合主義だと言われても仕方がない。

 いずれにしても東京都知事選の行方は予断を許さない。近く各マスメディアから一斉に世論調査の結果が報じられるであろうが、そのときを待ってさらに考えたい。もちろん拙ブログに対しては読者諸氏からのコメントを沢山寄せていただきたいし、それらの意見を参考にしながら友人たちとも議論を重ねていきたい。(つづく)