次期沖縄知事選ではまたもや「苦渋の選択」をするのか、集団的自衛権の行使容認で「毒を喰らわば皿まで」の勢いが止まらなくなった公明党が仲居真陣営に加担する日が近くやってくる、維新と野党再編の行方をめぐって(その33)

 2014年11月16日に行われる第12回沖縄知事選において、米軍基地問題を軸に保革勢力が激突してきた従来の対決構図が一変する可能性が出てきた。前回の知事選で普天間基地の県外移転の公約を掲げた仲井真知事が安倍政権に屈して沖縄県民を裏切り、辺野古基地への移設を認めたことを機に、沖縄の保守陣営に分裂の様相が深まってきたからだ。前回、中居真陣営の選対本部長を務めた翁長那覇市長が「辺野古移設反対」で出馬するというのだから、これほど明確な保守陣営の分裂はないだろう。

しかも社民党共産党など県政野党と革新系諸団体が、那覇市議会の自民会派や経済界(の一部)とともに翁長氏を支持・擁立するというのだから、これは単なる「保守分裂選挙」でもなければ、従来型の「保革対決選挙」でもない。これまでの政治常識では考えられない新しい対決構図の知事選なのだ。マスメディアでは「政府協調派vs 対本土派」などと言っているが(毎日新聞、2014年8月5日)、そのうちいろんな名称が出てくることは間違いない。

私は、かって堺市長選の対決構図を分析したとき、これは「保守分裂選挙」でもなければ「保革対決選挙」でもなく、「国家保守 vs 地元保守+革新」の戦いだと考えた。世界市場で活躍するグローバル企業の利益を代表する「国家保守」と地域経済や地場産業を重視する「地元保守」の利害が衝突し、もはや従来型の保守勢力の枠内では括れなくなっていると思ったからだ。また革新側も地域住民の「暮らしと環境」を維持する立場から、地元保守との共闘に踏み切ったことは言うまでもない。

そのとき、このような「国家保守 vs 地元保守+革新」の対決構図は、米軍基地問題を抱える沖縄県原発問題を抱える福島県では再現する可能性が高いと予測した。国家戦略の土台である安全保障政策(日米軍事同盟)とエネルギー政策(原発再稼動)は、国家保守と地元保守の利害が衝突する最前線であり、この矛盾が新しい形の首長選や地方選になって現れると思ったからだ。果たせるかな、沖縄知事選はその通りの展開になり、堺市長選を遥かに越えるレベルの一大政治決戦の火蓋が切られようとしている。

もっとも沖縄知事選よりも前に行われる福島知事選(10月26日)においては、当の佐藤知事が出馬の態度も政策も明らかにしていないので、「独自候補を擁立する」とした自民党福島県連も候補者選びに手間取っている。また安倍政権の側も「与野党相乗り」を検討していると伝えられており、肝心の原発再稼動の是非をめぐる政策的対決点はいっこうに明らかになっていない。だが「復興政策には与野党もない」といった訳のわからない理屈で与野党相乗りの知事選が行われるときは、原発再稼動問題を抱えた全国自治体からの批判は免れないし、福島への支援活動を続けてきた多くのボランティア団体にも失望と戸惑いが広がるだけだ。国民の最大関心事の一つである原発再稼動問題を棚上げにした福島知事選などあり得ない以上、安倍政権に対する地元保守の真価が問われていることを福島県民には改めて知ってほしいと思う。

話を沖縄に戻そう。私の最大関心事は、公明党が仲居真陣営につくか、翁長陣営につくかということだ。前回の知事選で公明党が仲居真氏を支援したのは、「普天間基地の県外移設」の公約を掲げていたからであり、これは公明党にとっては最も都合のよい立ち居地といえた。保守与党としての立場を確保しながら、それでいて「基地を無くす(減らす)」という沖縄県民の要望に応えるという「大義」を掲げることができたからだ。しかし、今度はそうは行かない。7月1日の集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定に署名し、日米安保条約の堅持と軍事同盟強化の推進を掲げた以上、仲居真知事を推薦する以外に道がない。ところがなぜか、公明党の態度がはっきりしないのだ。

公明党幹部が密室で自民党と協議し、海外での武力行使の「新3要件」を決めるといったことはそれほど難しくない。内外の政治的反響を無視することを決断すれば、手続きとしてはたやすいことだ。しかし、知事選の場合はそうはいかない。滋賀県知事選でもわかったように、公明党創価学会幹部が指示を下せば党員や学会員が命令一下総動員で動くというようなことにはならなかった。まして沖縄だ。地方紙の世論調査を見ても、今回の閣議決定に対する反発が一番強いのが沖縄だ。そこで公明党創価学会が仲居真支持を打ち出しても末端組織が動かないことは十分ありうる。

それに仲居真支持を打ち出して敗北したときはダメージが大きいこともある。「平和の党」といった看板は疾うに剥げ落ちているものの、それでも沖縄でそれを失うことは格別の意味を持っている。だから公明党は悩むのであり、態度を明確に出来ないのである。でも集団的自衛権の行使容認に踏み切ったいま、公明党に残された選択肢は「毒を喰らわば皿まで」の道しかない。これから知事選まで3ヶ月余り、公明党幹部は悩みに悩みながらそれでいて「苦渋の決断」に踏み切るのだろう。(つづく)