国民が本気で安倍政権の危険性を感じ始めた、政治の表舞台で国民が行動する日は近い、北海道新聞世論調査(2014年8月2日発表)で内閣不支持率が過半数を超えた意味、維新と野党再編の行方をめぐって(その32)

安倍政権による集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定以来、各紙いずれの世論調査においても政府への批判が急速に高まってきている。内閣支持率は読売48%、毎日45%、共同通信48%、朝日42%、産経49%、日経48%など、昨年12月の政権発足以来、軒並み最低水準を記録している。

拙ブログでも産経、日経の世論調査について多少の分析を行い、自公連立政権・安倍内閣の支持率に構造的変化の「前兆」があらわれていると書いた。年齢別、男女別集計結果において、若者と女性の「安倍離れ」の傾向が顕著に出ており、全体傾向との乖離が明白になってきたからだ。ただし、それでも内閣支持率は依然として50%近い水準を保っており、不支持率も30%台に止まっている。これが不思議でもあり、またこの高止まり状況がいつ崩れるのかについても十分な分析が出来ていない。

 こんな疑問にひとつのヒントを与えてくれたのが、8月2日に発表された北海道新聞世論調査結果だ。集団的自衛権に関する与党協議の内幕(公明党の謀略的行動)を西日本新聞の大スクープ記事が解き明かしてくれたように、このところ地方紙の健闘が目立つが、安倍内閣支持率の内情についても今回の北海道新聞の調査結果が何らかの手掛かりを与えてくれると思ったからだ。残念ながら現時点では記事全文をまだ入手しておらず、インターネット検索程度の情報しか見ることができない。それでも全体の輪郭はある程度わかるので、私なりの感想を述べてみたい。

 まず「北海道民8割『戦争不安』、集団的自衛権に批判、郵送世論調査、内閣不支持54%」という見出しの電子記事の内容はこうだ。
 「北海道新聞社は1日、政治や社会、経済のあり方に対する道民意識を探るため実施した郵送世論調査の結果をまとめた。安倍晋三内閣の不支持率が54%と支持率43%を上回った。安倍内閣が7月に集団的自衛権の行使を認める閣議決定を行ったことを受け、「日本が戦争に巻き込まれる不安を感じるか」を尋ねたところ、不安を感じると答えた人の割合は計82%に達した。調査手法が異なるため単純比較はできないが、今年4月の電話による全道世論調査に比べて支持率は8ポイント減少し、不支持率は12ポイント増加。第2次安倍内閣発足後では、特定秘密保護法成立後の昨年12月に行った調査と同じ最低水準に落ち込んだ。野党や国民に慎重・反対論が根強く残る中、憲法9条の下で禁じてきた集団的自衛権行使を解釈変更で認めた安倍政権に対し、道民に批判が広がっていることが浮き彫りになった形だ」。<北海道新聞8月2日朝刊掲載>

 ここで重要なことは、(1)第2次安倍内閣の発足以来、昨年12月の世論調査に引き続いて内閣不支持率が支持率を上回り、しかも不支持率が過半数の54%に達したこと、(2)その理由として道民の大半(8割強)が「日本が戦争に巻き込まれる不安を感じている」こと、の2点である。つまり、これまで安倍内閣の支持率を支えてきた漠然とした国民の期待(たとえばアベノミクスに対する幻想など)が今回の集団的自衛権に関する閣議決定の強行によって一挙に吹き飛び、安倍政権の強権的体質と軍国主義志向の正体があらわになったことで、国民の安倍内閣に対する不安感・危機感が急激に浮上してきたのである。

 これまでは、「安倍首相は過激(極右主義)なことを言うがそこまではやらないだろう」とか、「公明党がいるから何とかブレーキをかけてくれるだろう」とかいった根拠のない憶測に惑わされて、多くの国民は自公連立政権・安倍内閣の真の危険性を十分に認識してこなかった。ところが国民の慎重審議を求める圧倒的世論を無視し、しかも1内閣の閣議決定憲法解釈を変えるという立憲主義否定の暴挙を目の当たりにした国民は、漸くにして「このままでは戦争に巻き込まれかねない」との不安感・危機感を安倍政権に対して覚えるようになったのである。

 このことは、内閣支持率を構成する諸要素の中から国民がやっと本質的要素を見出したことを意味する。言い換えれば、これまで国民の目を曇らせてきた様々な粉飾的要素が取り払われ、安倍政権が本気で海外派兵を考えている「先鋭的なタカ派」「極め付きの軍国主義者」であり、公明党は安倍政権とグルになって動く謀略集団だとの本質が国民の間に漸く「イメージ」として見えるようになったということである。

 このイメージ把握が極めて重要なのは、それは国民が安倍政権の打ち出す様々な政策宣伝やパフォーマンス(たとえば月1回の被災地訪問など)に惑わされず、そのファッショ的軍国主義者としての本質を見抜く上で必要不可欠の条件だからだ。今後、次々と世論調査が行われるであろうが、各紙は瑣末な事項に拘泥することなく、本質的な問いかけで世論の真の在り処を示して欲しい。(つづく)