維新は2014年衆院選の大阪選挙区で壊滅的敗北を喫するだろう、「出るも地獄」「留まるも地獄」の維新内幕(4)、2014年総選挙を分析する(その5)

 衆院選における大阪選挙区(19選挙区)は、その時々の風を最も受けやすい「突風選挙区」だと言われている。固定票が少なく浮動票が多いので投票率がそのたびに大きく変動し、その時々の空気によって選挙結果が激変するのである。しかもその揺れ方が大きいことが特徴だ。「民主党ブーム」が起きた2009年衆院選では、19選挙区のうち実に18選挙区で民主党が圧勝した。民主党であれば「猫も杓子」も当選したのである。

 だが次の2012年衆院選では、今度は「維新ブーム」の風が吹き荒れた。19選挙区中12選挙区で維新候補が当選し、前回選挙で初当選した民主党の「猫も杓子」組は勿論のこと、藤村・平野・樽床氏など民主党政権官房長官総務相文科相などを歴任してきた大物議員までが現職を含めて軒並み落選したのである。「どこの馬の骨か」わからないような「橋下チルドレン」に、これまで数々の当選を重ねてきた重鎮議員があっけなく敗れることなど誰も予想できなかった。だから大阪選挙区は恐ろしい。

 このとき注目されるのが、維新が19選挙区中14選挙区に候補者を立てたものの、5選挙区では候補者擁立を見送ったことだ。維新が全選挙区に候補者を立てていれば、おそらく前回の民主党並みの成果を挙げられたと思うが、維新はなぜか公明党が立候補する4選挙区では候補者を擁立しなかった。これがその後、「密約」云々の話が持ち上がる背景になるのであるが、いずれにしても大阪選挙区は政界の「異常気象」が発生する場所であり、「台風の目」になる選挙区だと言える。

 ところで、今回の維新の立候補者は19選挙区中14人、5選挙区では候補者を擁立しない。5選挙区のうち4つが公明の前職がいる4選挙区だから、前回と同じ構図になっている。でも不思議なことに、維新はついこの間まで橋下・松井両氏を先頭にして「公明党の全議席を奪う」と息巻いていたのに、この二人の出馬断念と同時に公明党前職がいる4選挙区でも維新が候補者擁立を見送るという訳のわからない行動に出た。

いったんは「その気」になった維新支持の有権者は大いに戸惑い、一方、一連の騒動を冷ややかに見ていたその他の人びとは、「また何か裏にあるのでは」と疑いの目を向けている。巷間の噂では、4選挙区で維新が候補者を出さない代わりに、その他の選挙区で公明党の票を維新に回してほしいと取引を持ちかけたとの話もあるというが、いずれにしても真相はわからない。また「新たな密約」騒動にならなければよいと思うだけだ。

 維新候補者の内訳は、前職11人、新人3人、計14人である。だが、先日までの橋下・松井出馬断念の後遺症が長引いていっこうに気勢が上がらない。候補者も支持者も内心ではシラケ切っているというから、この状態で選挙戦を勝ち抜くのは容易でない。橋下・松井両親分が一緒に戦ってくれると思いきやあっさりと出陣を取りやめ、「自分の判断で決めました」といけしゃあしゃあと言うのだから、こえでは子分たちはたまらないだろう。討ち入りをするときは、親分が真っ先に先頭に立たなければ意気があがらないのである。
 
 目下、維新を取り巻く世論状況は極めて厳しいものがある。大阪では維新の支持率がまだ10%台をキープしていると言われるが、前回選挙での維新当選者の得票率は30%後半から40%台にも達するのだから、その反動はかなり大きいと見なければならない。ちょうど民主党が2009年総選挙で躍進したその後、期待を裏切って壊滅した状況にそっくりの様相を示している。維新ブームの風に乗って当選した「橋下チルドレン」は、今度は猛烈な逆風に晒されて転落すること確実だろう。

 ただ一つ前回の選挙と情勢に違いがあるとすれば、維新に対する逆風は吹くにしても、それを完全に吹き飛ばすだけの「新しい風」が起こっていないことだ。だから間違いなく投票率は下がり、下がった分がそっくりそのまま維新の得票減に直結することになる。維新は吹き飛ばされないかもしれないが、得票率が急減して他党が相対的に浮か上がり、維新は底辺に沈んで壊滅すると言うのが私の希望的観測である。

 選挙予想は難しい。だから、私のような者が素人意見を述べることは慎まなければならないと思う。しかし大阪選挙区でのこれまでの推移を見れば、維新が現状を維持することなどあり得ないと誰もが思っている。それほど維新に対する大阪府市民の批判には厳しいものがあり、それが維新の壊滅的敗北につながるものと私は確信している。(つづく)