「第3極=保守補完」政党は、結局のところ自民支配を助け、そして消えゆく存在だった、「自民党圧勝」を予測する各紙の衆院選序盤情勢分析を読んで、2014年総選挙を分析する(その6)

 12月4日、各紙の衆院選序盤情勢の調査結果は、見出しも記事も驚くほどよく似たものだった。「自民、300議席超す勢い、民主伸び悩み、維新不振」(朝日新聞)、「自民300議席超す勢い、民主70前後、維新減」(毎日新聞共同通信)、「自民、300議席うかがう、与党3分の2視野、民主伸び悩み、維新苦戦」(日経新聞)、「自公300超す勢い、民主伸び悩み、第3極は低迷」(読売新聞)などである。

各紙の情勢調査(総選挙に関する世論調査)は公示直後の序盤情勢を探るためのもので、調査日は12月2、3の両日、全国の有権者に対して電話調査で行われた。12月3日にはたまたま我が家にも読売新聞社から電話がかかり、家族の中の最年長有権者を調査対象に選ぶということで私が回答者になった。質問は「今回の選挙に関心があるか」、「投票に行くか」、「どの党に投票するか」、「どの党を支持しているか」など、最後に年齢や保有する電話の種類と台数などを聞かれた。その調査結果がもう翌日4日の朝刊に出ているのだから、日本の新聞の調査能力には驚きだ。

選挙序盤戦の情勢は「自民圧勝」の様相を示しており、今後の中盤・終盤戦においてもさしたる情勢変化は望めそうにない見通しだという。このままでいくと、各紙の見出し通り自民が圧勝し、民主は伸び悩み、そして維新はじめ「第3極」は急速に消えていくことになる。詳しい数字は省いて私の大まかな感想を述べると、今回の総選挙は「自民による、自民のための、自民の選挙」というもので、共産が一定議席を伸ばすことを除いては、全ては自民の思惑通りに進んでいるといっていいだろう。今後の政局はこれまで以上に「右傾化」のテンポを速めるに違いない。

それにしても、これほどの悪政を重ねる自民になぜ票が集まるのか。小選挙区制の弊害は言うまでもないにしても、アンチ自民票が民主そして「第3極」に流れないのはなぜか。一言で言えば、民主に対する失望感を消えないうちに「第3極」に対する新たな不信感が重なり、それが増幅されて自民に還流しているのではないかということだ。つまり前回の総選挙ではマスメディアに踊らされて自民でも民主でもない「第3極」に期待をかけたものの、それが自民と余り変わらない(あるいはそれ以上の)体質であることが露わになり、自民の方が「まだしも増し」との印象を与えたのではないかということだ。

前回のブログでは、民主を中心とする野党間の選挙区調整(共産を除く)が当選の可能性を高めるだろうと書いたが、4日の読売新聞の世論調査によれば必ずしもそうはなっていないらしい。民主や維新がそれぞれの自前候補を降ろして他党候補を応援する体制をとった選挙区でも、「選挙区調整 野党の誤算」「集約進まず自民へ流出も」との見出しにもあるように、その多くは他党へ流れているのである。

もちろんはっきりとしたアンチ自民票は自民に還流することはなく、共産・社民に入れるか、棄権するかのどちらかしかないだろう。今回投票率が大幅に低下すると予測されているのは、アンチ自民票の多くが棄権にまわると考えられているためだ。この「アンチ自民=革新無党派層」の票をいかに獲得するかが革新政党の戦略でなければならないが、この点に関しては各方面からいろんな提案があるのに具体化しようとする動きがいっこうにあらわれてこない。そこまで考える余裕がないのか、それとも革新政党間のこれまでのわだかまりが溶けないのか、理由がよくわからない。このままで行くと、革新政党は日本のバスケットボール協会のように分裂を克服できず、オリンピックへの出場資格を失うことにもなりかねない。革新政党はもっと胸襟を開いて「オリンピック出場=総選挙勝利」を目指すべきではないか。

今回の総選挙で共産が今回一定の議席増を果たすことは序盤調査のなかでも一様に指摘されている。しかし、それが小選挙区制の壁に阻まれている以上、比例代表での議席増にとどまらざるを得ないのが現実だ。目の前の小選挙区で共産の当選が現実味を帯びてくれば(かっての京都選挙区のように)躍進も可能であろうが、それが困難である以上、もっと工夫があって然るべきだ。たとえば、小選挙区には革新政党が独自候補にこだわることなく無党派の魅力ある候補者を共同擁立し、比例区はそれぞれの政党支持を目指して頑張るといったことだ。こんな簡単なことがなぜできないのか、不思議でならない。

これまで注目してきた大阪選挙区に話を戻そう。具体的な獲得議席数の予想をしている毎日新聞共同通信)によれば、維新は全国で小選挙区4(+5、−4)、比例代表24(+2、−3)、計28(+7、−7)となっている。前回総選挙では維新は大阪選挙区(小選挙区)だけでも12人を当選させた。それが今回の予想では全国で僅か4議席となっており、大阪選挙区ではその大半を失うものと予想されている。だが、大阪維新の転落はこれに留まらない。続く来年4月の統一地方選では、前回選挙に「維新ブーム」に乗って当選した地方議員の大半が落選の危機に晒されている。総選挙における維新議席の大幅な後退は統一地方選の逆風を一層加速させ、維新を「大阪湾の藻屑」に追いやるだろう。(つづく)