公明党の統一地方選公約、大阪市「総合区」再編方策は本気(本当)なのか、本気(本当)ならば、公明党は住民投票で大阪都構想を粉砕する覚悟を行動で示さなければならない、橋下維新の策略と手法(その5)

 3月1日の産経新聞(電子版)によれば、橋下氏の掲げる大阪都構想に対し、公明党大阪府本部は2月28日、大阪市を解体せずに改正地方自治法に基づいて政令市の行政区を「総合区」に格上げし、区長の権限を拡大する総合区制度を導入するとの代替案を決めたという。府本部関係者によると、代替案は現在24ある市内の行政区をより権限の強い人口20万人程度の総合区に再編し、市議会の定数を現在の86から65に削減するというもの。同日、決定した4月の統一地方選の公約に盛り込まれた。

 統一地方選の公約だからまさか間違いないと思うが、もし公明党がこの方針を本気で実行する気があるのなら、5月の住民投票大阪都構想が否決される可能性が出てくる。橋下氏は、公明党の案には具体性がなく、公明単独では実現性に乏しいとして「案にもならない」などと批判しているが(産経、2015年3月3日)、内心では「話が違う!」と怒り狂っているのではないか。

 大阪都構想住民投票をめぐるこの間の公明党の態度は、支離滅裂そのもので説明がつかない。創価学会の政策介入による公明党府本部の混乱、大阪府議会、市議会での都構想再提案にともなう公明議員団の曖昧な態度、維新批判の急先鋒だった市議団幹事長の候補者降ろしなど、外部の者からすればまるで「伏魔殿」のような様相を呈している。内部関係者の中からも「これでは統一地方選は戦えない」との声が上がっているらしい。

 もし上記のような大阪市「総合区」再編方策が本当だとしたら、このような方針が出されてきた背景を十分に吟味しておかなければ、今後の公明党に対する対応を誤ることになる。私の背景分析(仮説)は以下のようなものだ。

(1)首相官邸創価学会本部がグルになって公明党大阪府本部の決定を覆した一連の経緯がマスメディアの手で暴露され、公明党の「政教一致」(憲法違反)の体質が明らかになるにつれて国民の間に警戒の空気が広がってきた。これに加えて、安保法制議論(与党協議)における安倍政権への公明首脳部の露骨な追随姿勢が目に余るものとなり、公明党に対する嫌気と批判の目が次第に強まってきている。

(2)このような公明党に対する国民の疑惑と警戒の高まりの中で、統一地方選の「全国注目の的」である大阪府議選、市議選で公明が大阪都構想に対して曖昧な態度を取れば、地元大阪はもとより全国的にも公明の「寝返り」「裏切り」「二枚舌」体質が暴露され、これまでの背信行為が糾弾されることになる。これでは(全国的にも)統一地方選は戦えない。

(3)統一地方選で公明が敗北すれば、安倍政権の脇役の座を維新に奪われ、与党から野党に追いやられる可能性も出てくる。与党の座を守るためには維新を牽制しなければならず、そのためにも大阪都構想住民投票で橋下氏に勝たせることは得策でない。首相官邸(菅官房長官)には一応義理を立てて与党の座を確保している以上、住民投票の実施には協力するが結果には責任を負わない(橋下氏に勝たせない)で行く方が賢明だ。

(4)大阪都構想に対して大阪市「総合区」再編を代替案として統一地方選の公約にすることは、これまでの府議団、市議団の取ってきた態度とも何とか辻褄が合うし、支持者への説明もつく。支持者の離反を食い止め、統一地方選で公明の議席を確保するには、この程度のことを言わなければ信用を回復できない。これが「最低の一線」というところだろう。

 公明党大阪市「総合区」再編方策を大阪都構想の代替案に掲げることは、それが本気であれば大いに結構なことだと思う。橋下氏の言うように「具体的でない」「実現性がない」とかいった批判は当たらない。なぜなら、現時点において重要なことは大阪都構想に「反対」を表明することであり、とりわけ曖昧な態度を取ってきた公明党が「反対」の立場を明確にすることに政治的な意味があるからだ。

 私は大阪市民・有権者の方々に訴えたい。まずは地元で公明党統一地方選の公約を確認し、議員候補者が公約実現のために住民投票で「反対票」を組織することを確約させてほしい。統一地方選から住民投票までの期間は僅か1ヵ月半しかない。これぐらいの時間であれば、公明党といえどもまさか「忘れた」とは言えないだろう。市民・有権者の厳しい監視の目が引き続き必要だ。(つづく)