統一地方選で大阪都構想の行方を決するのは、「橋下人気」の低落、特別区の「区割り」への疑問の広がり、都構想を封印した公明党の選挙戦術の行き詰まりだ、橋下維新の策略と手法を考える(その18)

 2日間ほど東京で会合があり、関西を留守にしていた。統一地方選とはいえ、東京は都知事選や都議選はすでに終わっており、今回行われるのは特別区長・区議選だけだかあまり盛り上がっていない。投開票日も大阪からは2週間遅れだから、都内の雰囲気は閑散としているのである。まして東京以外のことは関心が薄い東京のこと、大阪の選挙のことなど話題にも上らなかった。

 とはいえ、大阪ウォッチャー、橋下維新ウォッチャーの私には、大阪のことが気にかかって仕方がない。また関西のことをもっと東京の人たちに知ってもらいたいと思い、常日頃から東京のジャーナリスト集団の同人ブログ『リベラル21』に折にふれて投稿している。今回も統一地方選の最新情報と大阪都構想住民投票の行方について昨日4月10日付けのブログに拙稿を掲載してもらった。通常は投稿から掲載まで数日あるいは1週間程度の時間を必要とするが(同人が多数いるため)、今回は特別の計らいで「緊急掲載」にしてもらうことができた。4月12日の投開票日が終わってからでは意味がないからである。

ブログにしては長文なので、興味ある方は『リベラル21』の拙稿を読んでほしい。ここで再掲することは避けるが、趣旨は、大阪都構想住民投票の前哨戦である大阪府議選、市議選の行方を決するのは、(1)「橋下人気」の低落、(2)特別区の「区割り」への疑問の広がり、(3)都構想を封印した公明党の選挙戦術の行き詰まりの3点だということだ。

第1の「橋下人気」の低落は必然的とはいえ、予想以上に大きく崩れ始めていることは意外だった。新幹線の中でも「浪速のエリカ様」を題材にした週刊誌を読んでいる人が結構多数いて、この種の情報がどんなメディアを通して市民の元へ届けられるのか大いに勉強になった。新聞各紙が政治面であまり取り上げないことでも、それが読者の関心を引くものであれば大々的に取り上げるのが週刊誌である。読者の関心のありかは、経路は違うとはいえ問題の本質に迫る上で無視できない。週刊誌やテレビショーは、この点で硬派のジャーナリズムが及びもしない影響力を発揮することもある。橋下氏自身がもともとこの分野での人気を利用して伸し上がって「トリックスター」だから、「橋下チルドレン」の不祥事はとりわけ取り付きやすいのだろう。

第2の特別区の「区割り」問題は、大阪都構想の本質を理解するうえでもっともわかりやすいテーマだと言える。なにしろ今まで馴染んできた24区が5特別区に解体・再編されるのである。日常生活に直結する区役所と区民の関係ひとつにしても、具体的にどうなるのか市民の心配は尽きない。それをほったらかしにして都構想の宣伝ばかりをやってきた橋下維新の化けの皮が、ここに着てやっと市民に見える形で暴露され始めたのである。

この点の問題点を解説したパンフレット類はすでに沢山出されているが、なかでも『いま一度考えたい、大阪市の廃止・分割、住民投票を前にその是非を問う』(公人の友社、2015年3月27日発刊)がわかりやすい。編著は「大阪に自治を考える研究会」となっており、多くの市職員が執筆していると思われるが、代表者として名前を出している大矢野修氏(龍谷大学政策学部教授)は私の元同僚で自治体問題のベテラン研究者だ。大矢野教授が元川崎市の幹部職員から請われて龍谷大学の教員になり、以来、大阪市の市政問題をメインテーマに調査研究を重ねてきた。氏の研究方法論の特徴は、綿密なフィールドワークを通して問題分析をすることで定評があり、しかも関東の大都市との比較において考察するのでひじょうに説得力がある。是非とも住民投票前に読んでほしい。

第3の公明党の戦術転換は「恥知らず」「笑止の至り」というほかはないが、この点で最も興味深いニュースを提供したのが4月9日付の日経新聞だろう。それは、以下のような内容の記事だ(一部抜粋)。
「『大阪都構想』を巡る攻防などを中心に、各候補者が支持を訴えるなか、浸透状況を見極めて戦略を見直す政党や陣営なども出てきている。各党、各陣営は12日の投開票に向けた票の積み増しに力を注ぐ。都構想への対応を巡り各党が注視する公明党。これまで表立った批判を控えてきたが、支持の伸び悩みを受けて姿勢を変えはじめた。『中途半端な対応で票が逃げている』。公明府本部幹部は5日、大阪市議選の候補らに『今後の演説会などでは、まず冒頭で維新単独での都構想反対のスタンスは改めてきちっと訴えた方が良い』とするメールを送信した。昨年12月の衆院選で維新の党の得票などを踏まえて住民投票実施に賛成したものの、『都構想反対』を明確にしなかった選挙戦略を見直した。同党のある候補は『都構想批判抜きでの票の積み上げは大変だった。今後は演説で都構想批判を増やしていく』と話す」

 ご都合主義と言えばそれまでだが、やはり選挙に勝つためには民意に背くことはできないのだろう。終盤に来ての学会・公明の戦術転換は維新にとっては手痛い向かい風になる。これで4月12日の投開票日が待ち遠しくなった。(つづく)