野田幹事長一流の野党共闘分断路線が見えてきた、「民進抜き」ではなく「共産抜き」の野党共闘が狙いなのだ、これは安倍政権による「正面攻撃」よりも巧妙な野党分断の「側面攻撃」にほかならない、改憲派「3分の2」時代を迎えて(その23)

前回の拙ブログでは、「責任野党抜き=民進抜き」の野党共闘の必要性について述べた。だが、野田幹事長もさるもので、今度は逆に「共産抜き」の野党共闘を打ち出してきた。11月3日の朝日記事は、小沢自由党代表との会談の内容を次のように伝えている。
――民進党野田佳彦幹事長は2日夜、東京都内で自由党小沢一郎代表と再び会談し、次期衆院選に向けて選挙区のすみ分けなど、野党候補の調整を急ぐことで一致した。野田氏は自由、社民両党との調整を急ぎ、その後に共産党とも協議する考えを示した。会談後、野田氏は「自由党とはしっかりすみ分けを含めて協力の協議を加速する」と、実務者協議を急ぐ考えを示した。
――小沢氏はこれまで、共産党との共闘に否定的な連合や民進執行部の定まらない選挙対応を批判。連合との関係含めて民進が次期衆院選の共闘にどう臨むのか確認のための幹事長・書記局長会談を共産、社民両党と共に求めていた。(略)小沢氏は連合や共産党については「特別話すことでもない」と会談で触れなかったと明かした。これまで4野党全体で調整してきたやり方が変わる可能性がある。
――野田氏は、1日夜には支持母体の連合の神津里季生会長とも会談。出世者は「お互い色々なものをはき出した」と関係修復を強調。連合幹部は「関係は良好だ」と自信を見せた。

この2日間の野田氏の動きは極めて重要だ。まず第1日目には連合幹部と会食して、野党共闘に関する3原則を改めて確認したことだ。要するに、連合との間で決定した「相互推薦なし、政策協定なし、横並びの街頭演説なし」の3原則をこれからも貫くということだ。これは事実上の「野党共闘破棄宣言」にほかならない。

第2日目にはそれを踏まえて小沢氏と会談し、「共産後回し=共産抜き」の選挙協力体制の構築に合意したことだ。小沢氏も「特別話すことでもない」とこれまでの野党共闘に触れなかったことから、この方式に同意したことは間違いないだろう。これで事実上、これまでの野党共闘はご破算になったといってもいい。「狐と狸の化かし合い」という言葉があるが、これでは「狐と狸がグルになった」といってもおかしくない話ではないか。

この話が事実だとするなら(各紙もそう書いているからそうなのだろうが)、これほど政党間の信義を踏みにじる行為はないだろう。もともと野田氏と小沢氏は同じ民主党の釜の飯を食った仲間であり、小沢氏が野田政権時代に離党した経緯から「犬猿の仲」と言われてきたが、やはり「血は水よりも濃い」のか、この期に及んで先祖返りしたのである。

この事態に対して、社民党が今後どう反応するかはわからない。民進党との話し合いを拒否するのか、それとも話し合いに応じて候補者調整の実務者協議に参加するのか、目下のところは一切不明だ。しかし、野田氏が候補者調整は「自由、社民とは特に加速しなければならない」と言っているのだから、早晩に態度表明を迫られることになる。この場合、もし社民党民進党との協議に参加するようなことがあれば、それを契機にした「野党大再編」が始まることは間違いない。これは4野党共闘体制の崩壊というよりは、民進を軸にした「責任野党=第2自民党」の再編というべきであり、事実上の「翼賛体制」の成立につながるかもしれない。

参院選で一定の成果を見せた野党共闘が、次期衆院選を目前にして蓮舫・野田執行部のもとで思わぬ展開を見せ始めた。野田政権時代に民主党を潰して自民党に政権を献上した張本人の野田氏が、今度は野党共闘を潰して安倍政権にすり寄るというのだから、自民党にとってはこれほど貴重な人物はいないだろう。野田・小沢路線がこのまま実現に移されるのか、それとも一波乱あって修正されるのか、今後の政界動向は目を離せない。(つづく)